親への強い反発心に基づく意思決定と行動は人生の実りを削ぎます

由季子さんは大変パワフルな印象がある、40歳の女性です。
その彼女が自分の人生はカラッポと言われカウンセリングを受けに来られたのでした。

由季子さんの現在の状況です。
独身 1人暮らし 転職歴3回 現在はパ-トとしてス-パ-のレジに従事。
兄弟姉妹は妹が1人。
父は子供時よりいるかいないかの存在。
母は口うるさい、子供に期待をかける、過干渉型だったそうです。

私から見た由季子さんの人物像は大変力強く、声も大きくハキハキ、エネルギ-も感じますが、なぜ、その彼女が「人生カラッポ」と言われるのか大変興味深く感じました。

彼女の生い立ちです。
彼女は小さい頃より母の過剰な期待を背負います。彼女の母は由季子さんに医者になることを希望していました。
実は由季子さんの母の父親(由季子さんの祖父)が大学病院の医者だったのです。
母自身も父から医者になることを期待されましたが、勉強についていけず医者への道を断念。その後は当時外科医の現在の夫と結婚しました。
しかし、夫は由季子さんが小さい頃、担当した外科手術に失敗。そのトラウマより医者として仕事をすることを辞め、現在は医薬品の営業の仕事をしています。

ですから、由季子さんの母は、自分も夫も断念せざるを得なかった、医者という職業に大変な執着を持ち、何が何でも由季子さんを医者にすべく、日々「勉強」「テストの点数」とそればかり言い、少しでも成績が下がると毒を吐いていたのでした。

自分を意のままに操ろうとする母、成績以外に自分を認めない母に由季子さんは嫌気と反発を高校時より感じ、大学は母の期待通り医科大学に入学しましたが、これでは母の人生を歩むと、母への反発心から半年で退学。
その後英語を極めたいと外国語学部に入学したのです。
当時の母の失望は大変なものでしたが、幸い妹も医科大学へ入学、由季子さんに「医者」への期待は言わなくなりましたが、その後もやはり自分の価値観、意見を押し付ける姿勢は変わることがありませんでした。

そして、由季子さんの母親への反発心も変わることはなかったのです。
その後大学を出た由季子さんは大手出版社に就職、入社5年目に企画をしたアメリカと日本を比較した恋愛マニュアル本が世間の評判を集め、ベストセラ-になりました。
この話しは成功談ではありますが、それを母親が親戚に自慢しているのを聞いた由季子さんは、出版社をさっさと辞めてしまったのでした。

「いつもいつも自分を否定し続けた母が自分を自慢しているのが許せない」というのが理由でした。
これも、母親への強い怒りと反発心でしょう。

その後母が嫌がるであろう婦人服販売員へ転職。
由季子さんの母はエリ-ト志向が強く、販売職の方を見下す傾向があったのでした。
由季子さんはその仕事に就くことで母への反発を示したのです。

しかし、勤務10年後会社が倒産、今のス-パ-レジの仕事に転職されたのでした。
また、結婚は由季子さんが若い時母が見合い写真を持ってきました。母が自分に早く結婚して欲しいと悟った由季子さんは、母の期待にだけは応えるまいと決意して今まで独身を貫かれたのです。

由季子さんは言われました。
「一体今までの40年間は何だったのでしょう。大学に入るまでは母の言いなり、何も自分で決定することもなく重荷を背負ってレ-ルを歩いていました。そして、これではいけないと母に反対することを自分の意志決定の拠り所としたのでしたが、それは、母に反対・反発しているだけで、本当の自分自身の意思決定ではなかったのです」。

通常 親が子供に過剰に期待 過干渉の場合は次の3つが考えられます。

1 親の期待に合わす
2 心理的にひきこもる
3 親に反発する

1 親の期待に合わす
親の期待に合わせるということは、親の言う通りに行動して、親の要求を満たすことであり、そこには自分の意志は働いていません。
親の高い期待に合わせて高いハードルを越えることにより、他者から感嘆、賛辞は送られるかもしれませんが、本当の自分の人生は生きていません。

2 心理的にひきこもる
自分の意志で決定して行動しようと親に伝えますが、親は理解を示しません。結局何を言っても無駄と悟り、自分の殻に閉じこもってしまいます。
自分の意志で動くことも出来ず、かつ、親の言いなりも嫌なので、何もしないことを選択します(親の期待に応えられず、期待に応えようとすることを諦める場合もあります)。自分の意志や感情を封じ、居るのか、居ないのか、分からないような空虚な存在になってしまいます。

3 親に反発する
自分の主張を通そうと親に反発します。そして、反発した後は親を手放して自分の理想とする人生を歩もうとします。

しかし残念ながら由季子さんは親に反発はしましたが、親への怒りを手放すことが出来ず、親にこだわり続けたのです。
そして、親の言うことを否定して、親に反発心を示して、親が自分に期待する理想とは正反対の行動を選択することを意志決定したのでした。
親にすべて反発することは、親にこだわっていることであり、真に自分の人生を生きていません。

ですから、由季子さんは自分の人生を不振り返るにあたり「カラッポ」という言葉を使われたのでしょう。
結局は自分の望む意志ではなく、親に反発するということを意思決定の根拠として選択したことにより、本当に自分の求めている何かを掴むことは出来かったのです。
そして、由季子さんに感じたパワフルなエネルギ-は親へ反発するため、対抗するためのエネルギ-だったのではないでしょうか。

アダルトチルドレンからの回復には、親への執念、怒りを手放すことは大変重要です。
親を手放して、自分に専念するのです。