家族内の境界と依存の継承について

前回までは親の子供に対するかかわりが、いかにアダルトチルドレンの問題に影響するかを中心に見てきました。

過保護、過干渉、過剰な愛、期待による支配。これらに共通するものを心理学、家族療法の理論からその問題を見ていきたいと思います。

私はよくアダルトチルドレンの親は子供の人生を飲み込むという表現を使います。それは、言い方を代えると、アダルトチルドレンは親の人生を生きていることにつながるのです。

1 ミニュ−チン 家族構造論

ミニュ−チンは言います「家族の人と人の交わりを決めているのは境界であり、勢力である」と。
私もアダルトチルドレンの問題を考えるにおいて、家族関係における境界は大変重要であると思います。
では境界とは何でしょう。これは個として1人の人間としてのテリトリ−。1人の人間として尊重されるべき空間であると思います。
ところが、アダルトチルドレンの親はこの境界を尊重せず、自らの勢力で子供を取り込んでしまう傾向があります。期待の押し付けや、しつけによる支配等すべてこの傾向があるのです。

子供にしてみては自分の人生を生きていけない辛さもありますが、他に考えられるもう1つの大きな問題は抑圧です。
アダルトチルドレンの多くは親の境界を無視した行為や干渉に苛立ち、怒りを感じています。もちろん小さい子供の頃はそのような感情を抱くことはなかったでしょうが、人は成長するにつれ自分の意志や感情を認識します。そこに親からの度を越した境界を無視した行為がなされると、当然自分が無視されている、好きなことが出来ない、邪魔をされている、縛られている、攻撃されている等と苛立ちや、怒りを感じるのです。この感情を親にぶつけることが出来れば、自己主張出来れば、今後新たな展開が見えてくるのですが、親からの境界を無視された行為を我慢し続け、受け続けると、どうしようも出来ないという無力感や、抑圧し続けた結果自らの感情が分からなくなったり、また限界まで我慢しているので切れやすくなったりと、人生の生き辛さや、他者とのかかわりの失敗へと発展していくのです。

家族としての境界の確立は、1人の人間として尊重されることであり、自らの生きる空間を持つことは自らの人生を生きるうえで大切なことなのです。

2 ボウエンの多世代理論

ボウエンによりますと、いつも多くの人と一緒にいないと落ち着かず、感情的に周囲に巻き込まれやすい人は、2人でいても(主に夫婦関係)安定出来ない時は3者間の関係に持ち込もうとする傾向があります。そして夫婦関係が緊張状態になると今度は子供を取り込み、自身の感情の安定化を図る傾向があることが分かってきました。そして、夫婦関係が破綻をきたした場合、一方の親が子供を取り込む傾向のパタ−ンはその子供に伝わるのです。

さて、この説で私が注目することは、夫婦関係が緊張状態になった時に、一方の親が子供を取り込み心の安定を図る傾向があることです。これは夫婦関係の悪化からくる、親の虚しさや怒りを子供を通してその埋め合わせを求めるということです。実際にアダルトチルドレンの方のカウンセンリグをしいていますと、親の期待に沿おうと一生懸命合わせ過ぎたり、親のグチ聞き役に徹して嫌なグチを我慢して聞き続けたり、親のパ−トナ−としその役割を果たそうと子供らしさを失ったりと、親の心の安定の犠牲になっている方々を多々見受けます。

これらの親は自分を他人に支えてもらおうとする傾向が強いのでしょう。しかし、現実に考えますと、自分のことを支えられるのはまずは自分自身です。もちろん、周囲のサポ−トはありがたいものですが、常に自分を支えてもらおうとすると、それは日常恒常となり依存症の問題へと発展します。そして、自分を支えてもらおうと、自分の何らかの必要を満たしてもらおうと、子供に自分を依存させてしまうのです。子供にしてみれば、親を支えるなどたまったことではないでしょうか。

そして、親に依存されて成長した子供は自分の人生を生きていないことにつながります。また、自分の人生を生きていないということは、自己信頼感の獲得に失敗して成長します。結果、自分に対する自信を養うことが出来ず、自己価値の認識や自己の発揮に失敗、更にはそこからくる虚しさを他人に委ねたり、何かに自分を依存させてしまうという、親と同じ行動パタ−ンを演じてしまうのです。

ボウエンは子供を取り込むパタ−ンは継承されると述べていますが、私は何かを取り込む、何かに依存する、その依存傾向は継承されますが、取り込む対象は子供だけではないと思います。人以外のアルコ−ルであったり、麻薬であったり、仕事であったりと、自身を何かに極度に委ねてしまうのです。

それからボウエンの多世代理論で注目すべきことがもう1つあります。それは夫婦関係が緊張状態になった時に、一方の親が子供を取り込むのであれば、夫婦関係が緊張状態にならなければ、子供を取り込む問題は起こらないとなります。
円満な夫婦関係からはアダルトチルドレンは生まれてこないということになるのです。