心の悩み相談集
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2005年12月18日
なぜ人は人に過剰に反応するのか
ぶつかり合う信念。信念体系の相違
前回は事務リ−ダ−の優子さんが後輩の広子さんのことが気に入らないという相談でした。
広子さんは「認められなければ価値がない」(推測)という人生における信念を持っており、サブリ−ダ−よりリーダ−へ昇格を希望して、そのために見え透いた笑顔を回りに振りまき、上司の意見を真似たりと、優子さんはその見え透いた態度が気に入らないのでした。
しかし、広子さんについて気に入らないと反応するのは優子さんの問題です。 今回は優子さんはなぜこんなにも広子さんの言動・態度に過剰に反応するのか考えてみたいと思います。
私達は刺激に反応する生き物です。
優子さんにとって広子さんの刺激とは「嘘っぽい見え透いた言動態度行動」です。 優子さんの言葉を変えてもっと言うのなら、「あの笑顔には何か人を取り込みたい気持ちが伝わる」「人の言うことを自分のことのように言うので簡単に手の平を返しそう」「きつく言うのなら自分のために平気で人を裏切る」そんな感じがしているそうです。
では、優子さんの人生の信念体系は何でしょうか。聞いてみました。 「絶対嘘をつかないこと」「絶対約束は守ること」「常に正直、誠実」であることだそうです。ここまで人に対して絶対、常に嘘をつかない、誠実であることを自分の人生における信念とするのであれば、広子さんのその場その場の一貫性のないと思われる態度や、嘘っぽい笑顔にも過剰に反応するのは当然でしょう。
しかし、優子さんはどこでその信念を学んだのでしょう。または獲得したのでしょう。
「私は子供の時いつも親に裏切られてきました。父は忙しく、母は教育熱心でした。小さい時父は休みの日に遊園地とか遊びに行く約束をよくしてくれましたが、結局は仕事が入って遊びにつれて行ってもらえず悲しい思いをしてきました。母は教育熱心で私に常にテストでは80点以上取ることを求めてきました。そして、80点取ったら〜〜買ってあげると約束をしてくれました。でも、私が頑張って勉強して80点以上取っても何も買ってもらえないことはたびたびでした。私は勉強が得意ではなく80点以上取るのは至難なのに」
「私は常に親に裏切られ失望してきました。嘘つきの親にです。だから、親を反面教師として約束は守るべきものと自分のなかに固く持っているのだと思います」
「そして常に誠実であることが私にとっては大切なのです」
なるほど。そういうことがあったのですね。理解出来ます。
優子さんのこの強い常に誠実であるべきという信念が嘘っぽい笑顔や、上司の言うことをいかにも自分のことのように話す広子さんの態度を不誠実と判断して許せないのでしょう。
優子さんに質問してみました。
「あなたのその絶対嘘をつかない、約束を守ること、常に誠実であることという信念は、あなたの生活のなかで辛さの原因とか、人間関係がうまくいっていない原因になっていませんか」
「そうですね。彼との付き合いで問題があります。私はメ−ルは字だけで気持ちが伝わらないので嫌いです。だから、電話で話すのが好きです。彼は今日○○時に電話するよとか、よく約束してくれます。私はその約束の時間になると携帯電話を前に正座をして座っているのですが、彼はよく遅れるのです。待ってるのに。それで私が気分悪くて遅れて電話してきた彼に無愛想に対応するので、彼とうまく話しが出来ない時がよくあります。楽しみにしていたのに」
私は優子さんに言いました。
「もし、彼が遅れるのだったら優子さんから先手打って電話してもいいと思います。また、遅れるって何時間ぐらい遅れるの」
「遅れる時間は日によって違いますが、15分ぐらいかな。彼が約束したのですから電話はしてくるべきです。私から電話をするのはおかしいと思います」
私は優子さんの話しを聞いて思うのですが、そんなに彼の電話を楽しみに待ち遠しいのなら自分から電話をすればいいと思うのです。そうすればイライラもないしストレスもなく、スム−ズに動けると思うのですが。
論理療法の創始者アルバ−ト・エリスは「私達を苦しめる古い信念については、本当にその信念を守ることが現実的視点から見て妥当か検討をする必要がある。そして、その信念が自分を苦しめ豊かにしないものであれば楽なものに変更する必要がある」と言っています。 優子さんの場合まさに信念の変更が必要でしょう。
本当に人は常に誠実でいられるのでしょうか。優子さんが誠実であるのは分かりますが、その信念を他者に求めるのは妥当でしょうか。それに、広子さんのことを嘘っぽいと話していますが、それは、優子さんの過剰な常に誠実であるべきという信念がフィルタ−になって、広子さんのことを色めがねをかけて見ているのかもしれません。
それに、広子さんの笑顔が嘘っぽかったとしても、それはそれでほっとけばいいのではないでしょうか。
優子さんの「常に誠実でなければならい」この自分を苦しめる過剰に反応する信念を変更するならば。
「誠実であることは大切です。だからといって人が少し不誠実と思われる態度をしても、誰にも迷惑をかけていないのならばそれはそれでいい」
こんなふうに過剰な反応を起こさない楽な信念、思いに変更することも有効です。
また、彼との電話の件にしてもそうです。彼は仕事で忙しいのかもしれません。もしそうなら15分程度の遅れは仕方ないと思うのです。
「約束は守るべき」この信念を「約束は守って欲しい。でも、人は忙しい時もあるし時間通り正確に行動出来ないこともある」こんなふうに変更してもいいのではないでしょうか。
それに電話を楽しみにしているのですから、臨機応変に自分から電話をしてもいいのです。
自分が何かに縛られている時、それをかたくなに守り抜こうとするよりも、手放した方がはるかに人生楽しく過ごせるものです。
2005年12月10日
見え透いた言動・行動の後輩について
今回は事務職として会社に勤める優子(25歳、仮名)さんからのご相談です。優子さんは短大卒業後貿易会社で事務をしています。そして、彼女の悩みの種は1つ下の後輩、広子さん(仮名)についてです。
悩みの内容は
「広子さんは何か薄っぺらいのです。笑顔もそうだし。わざとらしいと言った方がいいかもしれません。誰にでも薄っぺらな笑顔を振り回していてうんざりです。それに、上司が何か言ったら、すぐに私達もこうしないといけないとか上司の真似をして、そう言ったことを上司の目の前で発言するんです。 上司に気に入られたいっていうのが見え透いていてうんざりです」
さらに話しを聞くと、優子さんは貿易推進事務1課の事務リーダー、そして広子さんはサブリーダーだそうです。
優子さんによると普段より広子さんは、
「リーダーに昇格したい」
と周りに吹聴しており、昇格のためには上司の評価が絶対だそうです。 さて、ここで問題の整理です。
- 優子さんは広子さんのわざとらしさが気に入らない。
特に笑顔。 - 広子さんは上司の言ったことをすぐに自分の主張として話しをする。それが優子さんは気に入らない。
- 広子さんは昇格を強く希望しており、そのために上司の評価を上げたいと思っているようであり、それが見え透いた行動として表現されており気に入らない。
以上の3点です。
カウンセリングにおいてカウンセラーの目の前にいない、第3者が絡むカウンセリングをするのは難しいことです。
なぜならば、すべてご相談者様の主観で話しが進むからです。
本当にそうなのかという客観的検証が難しいのです。
そうは言っても話を進めないとカウンセリングが深まりませんので、優子さんが気に入らないと思っている広子さんの行動について一緒に考えました。
カウンセラーとして、広子さんのわざとらしい笑顔と上司の言動を真似て自分のものとすること、そして強い昇格への期待は、あるひとつの信念体系によって説明がつきます。
それは、認められなければ価値がないです。
まず、笑顔ですが、皆さんは笑顔から何を連想しますか。
笑顔もコミュニケ-ションの1つです。笑顔は親しみを表現したり「よろしく」「私はあなたの敵ではありません」等非言語に表現します。
したがって笑顔で人に近づくことは仲間になることや、快適な時間を一緒に過ごしたいという期待があるのです。
しかし、何でもそうですがやりすぎは禁物です。
やりすぎは人の反感をかう時が多々あるのです。
過剰な笑顔は周りの反感をかうかもしれません。
優子さんも言っていました。
「あの子の笑顔が嘘っぽいのは皆感じています」
自然な笑顔に対して過剰な笑顔は作りもので不自然ですから、周りから反感をかうのは必然でしょう。
では、広子さんの笑顔の意味するものは何でしょうか。 周りに対する自己存在認知のPRかもしれません。
または、上司より高評価を得るため、認められたいがために明るい自分を演技しているのかもしれません。
いずれにしても外から自分をよく見せるための戦略・スキルでしょう。 次に広子さんがすぐに上司の意見を自分の意見として話しをすることについて考えます。
簡単に考えたら昇格をしたい広子さんが上司の言うことを自分のなかに取り入れることは容易に想像出来ます。しかし、もっと深く考えると「認められなければ価値がない」と思っている人は、常に自分より上の人間(権力者)から評価を得ようと一生懸命なのだと思います。 そのため常に自分を認めてくれ価値を与えてくれる権力者の反応に敏感となり、無意識のうちに権力者の意見を取り込むことを習慣付けしていたとしたらどうでしょう。
そして問題は誰にこのような方法を習ったかです。 人間の行動パタ-ンは幼い時に形成されます。
もしかしたら、広子さんの親は、広子さんが親の期待することをした時にしか広子さんを認めなかった、褒めなかったのかもしれません。親から認められることは子供にとって一番大切なことです。 そして、大きくなった広子さんは幼い時と同じ行動パタ-ンで、今度は親の代わりに上司に認めてもらおうと無意識に振舞うことは十分考えられるのです。
このように考えますと昇格という目に見える評価によって、幼い時からの自己価値付けを達成したいと思うのは当然だと思います。 広子さん自身も幼児、子供の頃よりの自己存在認知の方法で未だに頑張っているかもしれないのです。
また、これは考え過ぎかもしれませんが親からあまり認められなかった広子さんは、強い者、権力者すなわち上司の態度、言動を自分のものと同一化することによって自分を強い者と認識して無意識に自己価値を上げていることも考えられます。
いずれにしても、広子さん自身豊かな子供時代を過ごしてこなかったのかもしれません。 こう考えると優子さんの広子さんに対する見方も少し変わってきたようです。 さて、広子さんについての話しはここまでにしましょう。何せ本人がいないのですから、心理学的には納得出来る分析とはいえすべては想像に過ぎません。 そもそも、今回の問題の本質は広子さんではなく優子さんにあります。
なぜ優子さんはそこまで広子さんのことを気に入らないと過剰に反応するのでしょうか。 反応しているのは優子さんですから、これは優子さんの問題となるのです。 この問題について彼女に質問しました。
「確かにそうですね。私がいま広子さんについて思い出したのは、彼女はサブリーダー、昇格したら私と同じリーダー職になります。でも、同じ課でリーダーは2人も必要ありません。もし、彼女が昇格したら私はどうなるのでしょうか」
「彼女は私にとって脅威であり、彼女が昇格したことを考えると私は不安です」
優子さんにとって広子さんの昇格は不安要因であったのです。
しかし、これは表面上の問題でした。
次回、優子さんの何が問題で広子さんのことを気に入らないと、過剰に反応するのか、そのことについて書きたいと思います。