部屋に勝手に入ってくる母に悩んでいます

安司さんは40歳の独身サラリ−マンです。生活は親と同居しています。その安司さんの悩みは彼が会社に行っている間に、母親が勝手に部屋に入って来て、部屋を片付けることです。

私…..
「いいお母さんじゃないですか。あなたは何もしないで楽でしょう」
⇒実際私はいいお母さんとは思っていませんが、彼があまり話すタイプでもなく黙っている時間が多いので、敢えて彼に話しをさせようと思って、彼の心の裏を話してみました

彼…..
「いいえ。自分の部屋に勝手に入ってあちらこちらいじられるのは、自分の心をいじられているようで嫌なのです」

私…..
「えっ、それはどういうことですか」

彼…..
「うまく言えないのですが、母は私の子供の時から、あれこれと私から聞きだしたり、命令したりと何か部屋に勝手に入って来ていじられるということは、その延長のように感じるのです」

私…..
「干渉されているような。部屋はあなたにとって何を意味していますか」

彼…..
「私の心の安らぎの空間です」

どうも、安司さんは自分の部屋にいる時が一番くつろげるようです。
そして、彼と話していて分かったことは、休日は部屋にこもってダラダラしていることが好きだということです。
ですから彼にとって部屋とはこの世で一番安心していられる空間のようです。大切なものなのでしょう。

私は彼の子供の時の母親との関係等いろいろ聞きたかったのですが、やはり彼は口が重く話してはくれませんでした。
しかし、冒頭彼が語ってくれたように、子供の頃、彼の母親は相当彼に干渉をしてきたのでしょう。
そして、心を乱すような言動が過去いろいろとあったのでしょう。
その子供の頃自分をいじりまわした母親が未だに部屋に入って来て、部屋を方付ける、これは彼にとって、昔から根ほり葉ほり干渉され続けた行為と変わらないのでしょう。
しかも、部屋とは彼にとって心の空間でもあるのです。
したがって母親が部屋に入って来るという、心の中に土足で入って来るように思えるのでしょう。
しかし、彼も40歳です。サラリ−マンをしていて収入は相当あると思います。
自活しないのでしょうか。

彼に聞いてみました。
「安司さんは、そういうお母さんのいる家庭を離れて一人暮らしとかしようとは思わないのですか」

「一人暮らしはいろいろと料理、洗濯とか大変ですからね。家にいる方が楽なんですよ」

⇒彼にとって家にいることは居心地が良く楽なのです。自分で何もしなくていいから。
そして、彼は親離れしていないのです。
また、私が直感で感じたことですが、彼の母も40歳の息子の部屋を片付けたりして、そこに母親としての価値や役割、愛を感じていて、子離れしていないのでしょう。
安司さんもその母親も未だに癒着しているわけです。

私としては彼に自活するように勧める気もありませんが・・・。
では、ここで彼の問題を整理しましょう。
母親が勝手に部屋に入ってきて部屋を片付ける。
そして、それを見た彼が怒る。

この循環システムをどうしたら断ち切れるか。
彼と一緒に考えてみました。
問題の本質は、彼の母親が部屋に入って来て、彼が部屋をいじり回されたと状況を把握して、母親の行為に怒るところにあります。

これがキ−です。

まず、彼と一緒にこの問題にどう対応しようかと考えました。
最初は誰でも考えること。
母親に勝手に部屋に入らないように頼む。
しかし、これは安司さんが「母は僕の言うことを聞いてくれない」と言うので無理と判断しました。

次に安司さんは母親が部屋に入って来たと怒りますが。では、なぜお母さんが部屋に入って来たことが分かるのでしょうか。
もし、お母さんが部屋に入って来たことが分からなければ、安司さんも怒ることが出来ないはずです。
そこを彼に聞いてみました。

「僕はけっこう履いていた下着とかを部屋に脱ぎ捨てるクセがあるんだ。で、母はその下着などを部屋に入って来て持って行くんだ」
私….
「お母さんはどうしてそんなことをするのですか」
彼….
「たぶん洗濯するためだと思う」
私…..
「それでは、お母さんが安司さんの部屋に入って来て、部屋を勝手に片付けるということは、下着なんかを勝手に部屋から持っていくということですか」
彼…..
「そうです」
私…..
「それだけ」
彼…..
「ええ、洗濯物を部屋から持って行ってしまうのです」
私…..
「洗濯をするためにね」
私…..
「それでは、安司さんが履いていた下着なんかは、これから脱いだらすぐに洗濯物として、洗濯機の横とかに置いておいたらどうですか。そうしたら、お母さんは部屋に入って来ても片付けるものがないし、かりにお母さんが部屋に勝手に入って来たとしても、お母さんが入って来たかどうかは分かりませんよね。
何せ、今までお母さんが入って来たかどうかを確認するための唯一の目印、洗濯物が部屋にはもうないのですから。」

彼…..
「そうですね。それはいいアイディアですね。それなら、僕が部屋に帰って来ても、出ていった時のままの状態ですから、何も分からないですよね。だから、怒るに怒れない」

「これからは脱いだ下着なんかは、すぐに洗濯機の横に置いておきます」
と、彼は大満足でした。

人間は刺激に反応する動物です。

彼の場合、脱ぎっぱなしの下着が会社から帰って来たら(母親が洗濯のために部屋から持って行った)部屋にない、という刺激に反応していたのでした。
ですから、その反応する刺激を最初からないものにしてしまえば、彼は反応対応である怒りを生じることもないわけです。
と、言うことは彼が最初から脱いだ下着等を、脱いだらすぐに洗濯物として別の場所に持って行き、部屋をきれいにしておけばいいわけでした。