必要以上に回りくどく釈明をする、ベテラン社員について

ある職場でのお話しです。私の友人管理職の茂夫さんは部下の事務職なつみさんに悩まされています。

なつみさんは勤続12年のベテラン。営業事務の仕事をしており、電話対応、パソコン入力、伝票起票等の事務全般の仕事をしているのです。
そして、茂夫さんにとっての悩みはなつみさんの仕事が遅く、話しが回りくどいということです。

茂夫さんから見ると、なつみさんは自分のした仕事とくに計算、数字の記入に際しては何回も電卓を押して確認しているのだそうです。
茂夫さんに言わせると「そんなに何回も確認をしなくても、1回見直しをすればそれでいいのに。それに、仮になつみさんが計算ミスをしたとしても、次の担当者が再度計算チェックを行うので、ミスは発見されるはず。何を何回も電卓を置いているか分からない」だそうです。

なつみさんは自分が間違った数字を記入することを恐れて、強迫的に何回も電卓で計算しなおしているようですね。
ここになつみさんの失敗を恐れる、自信のなさがうかがえます。

では、なぜ、なつみさんは茂夫さんが言うように回りくどく話しをするのでしょう。
茂夫さんに状況を詳しく聞いてみました。
「とくにくどいなと感じるのは、私が質問をした時の答え方です。ひとつの結論を言うのにぐるぐると回って結論まで持っていくので聞いていてイライラします。それに、口調が怒りっぽいというか、楽しいものではないのです」

なるほど。私の経験から判断しますと回りくどく話しをする時は、自分に自信のない時が多いと思います。なぜなら、自分は間違っていないと必要以上に正当化を図り自己弁護するからです。
したがって自己弁護にエネルギ−を使うため話しも長くなってしまうのです。
では、なぜ質問に答えることに対してそこまで正当化を図らなければならないのでしょう。

もし、なつみさんが質問=攻撃、と捉えていたらどうでしょう。
攻撃されたら誰だって防衛をしますよね。防衛するということは自分を必要以上に守るために、回りくどく話しをして、自分は悪くない、間違っていないと最大限のPRすることに通じます。
そもそも、なつみさんには必要以上に何回も計算をする自信のなさが垣間見られる方ですから、人からの質問に対しても自信のなさが働き、過剰反応することは理解出来るものです。

また、口調が怒りっぽいということですが、これも考えれば分かることです。すなわち、攻撃されている防衛には反撃の意図が隠されているものです。

表面上は自分は悪くないと自己弁護に必死ですが、その裏面には反撃したいという抑えられた怒りの欲求があるのではないでしょうか。または、なぜ自分が攻撃されなければならないのかという理不尽さに対する怒り。
これらは、もちろん無意識で意識はされていませんよ。

さて、この怒りについてですがもう少し詳しくみてみましょう。
なつみさんについて(推測です)は、幼少の頃より親もしくは、それに代わる誰かに抑えつけられていた経験があるかもしれません。
抑えつける人はどういう人かというと、相手を認めない、ワンマンなタイプが多いと推測します。そうすると、このワンマンタイプは常に自分が正しい、自分が一番と思っているので、相手を認めません。誉めません。

もし、なつみさんが、こういったワンマンタイブの人と関わっていたとしたら、何をしても認めてもらえず、誉めてもらえず、常にあら捜しばかりされ怒られていた。こういった生育過程を持ちますと、子供の頃より失敗を恐れて、その防止のために多大なエネルギ−を費やしていたことは想像出来ます。それが、今仕事をするうえで、計算ミスを過剰に恐れる傾向につながっているのではないでしょうか。

また、茂夫さんの質問に過剰に反応して周りくどいのも、過去より責められ続けた体験が影響していると思われます。したがってその責めより逃れるために、自己弁護に一生懸命になってしまうのです。
そして怒り。常に抑えつけられていたとしたら、本来外に出るべき怒りが内在化されてしまい、何らかの自己表現の時に内にこもった怒りが顔を出すのかもしれません。

いずれにせよ、なつみさんは自己正当化のため、相手から許してもらうため、責めから逃れるために一生懸命なのですが、相手から得るものは、なつみさんがもっとも恐れている怒りなのです。
くどくど話して相手をイライラさせるところから来る、相手の怒りの感情です。

今のなつみさんに必要なのは、回りくどい説明ではなく、簡潔な自己表現と相手の気持ちを配慮したコミュニケ−ション能力を身につけることなのです。