超真面目な彼女と超不良の彼

恭子さんは20歳、学生です。彼女は田舎から都会へ出て一人暮らしをしています。
彼女は子供の時より、超おとなしく超真面目で誰にも迷惑をかけず何事にも一生懸命取り組むタイプです。
そして、半年ほど前ふとしたことがきっかけで、誠君・26歳と知り合いました。
間もなく二人は肉体関係を持ち、誠君は彼女のマンションに上がり込み同棲が始まりました。

しかし、誠君は札つきの不良です。高校中退後万引き、薬物乱用で何回か警察につかまっています。
また、同棲中も定職のない誠君は当然働くことはせず、パチンコをしているか風俗に入り浸っています。
恭子さんは親の仕送りだけでは誠君と生活をすることは難しく、授業のない時はアルバイトを3つかけもちして誠君を養い生活を維持しています。
しかし、誠君はそんな恭子さんに感謝するどころか、恭子さんが少しでも意見しようものなら暴力を振るいます。

なぜ、恭子さんはこんなにも辛い恋愛というか同棲生活を続けているのでしょう。
そして、なぜ彼女は自分とは似ても似つかない誠君をパ−トナ−として選んだのでしょうか。
その心理はなに?

恭子さんによると誠君は「自分の好きなように生きていることが一番の魅力」だそうです。
恭子さんの好きに生きるとは一体何を意味しているのでしょう。
実は恭子さんの両親は大変しつけに厳しい厳格な人であり、恭子さんは常に親の意思に従って生きてきました。
したがって子供の頃より自分のしたいことを我慢して、親の価値観に合わせて生きてきたのです。
ですから、誠君のように自分の好き勝手に、社会を無視してでも生きている人に憧れるのでした。

では誠君の家庭はどうかというと、やはり恭子さんの家庭と同じく両親は子供のしつけにうるさく、何でもかんでも自分達の言うことを聞かそうとする高圧的な両親であったようです。
誠君はそんな親の意に染まるまいと、親に反抗しながら警察にお世話になってまで、強い自己主張をしてきたのでした。

恭子さんから見ると誠君は、本当は自分がそうしたかった、理想のモデルなのかもしれません。
親の価値観に嫌々従わされた人生を送ってきた恭子さんにとって、誠君こそ本当に自分がそうしたかった姿を体現しているのでしょう。
誠君も恭子さん同様最初は親に従って生きてきましたが、どこかで切れて反抗したのでした。
その反抗の怒りの力こそ恭子さんの憧れのエネルギ−なのでした。

そして、ふたりとも親の価値観にしばられ、自分を抑圧した、ありのままの自分を理解してもらえなかった悲しみも背負っています。
この共通点も、ふたりが無意識に魅かれあった理由かもしれません。

まあ、ここまでは理解出来ましたが、ここから先が分かりません。

  1. なぜ、恭子さんはここまで辛い誠君との同棲生活を送り続けるのか。
  2. 本当に誠君は恭子さんのことを愛しているのか。

恭子さんとここについて徹底的に話し合いました。すると、次のことが分かりました。
恭子さんの両親は恭子さんをしつけるにあたって、厳しい体罰をよく用いていたこと。
それは、恭子さんが大学に入る18歳まで続いていたこと。
したがって、恭子さんにとって誠君から暴力を振るわれることは子供の頃からの日常であり、それに対して違和感を持っていなかったのです。
そして自分に対する扱いはこんなものという、低い自己価値も根付いていたのでした。
また、暴力を振るわれるのは自分が余計なことを言った当然の報いと感じていたかもしれません。

それから、もう一つ、なぜ誠君のためにアルバイトを3つも掛け持ちをして、彼を養わなくてはならないのか。
彼女にとって今回の恋愛は初めてのことであり。ひとつはのぼせてしまっていることが考えられます。
それから、彼女自身が言っていたことですが「彼を失うことが恐い」今まで彼女は親にエネルギ−を奪われた生活をしており、おとなしく、真面目。
そのため友人も少なくあまり人としての存在を、周囲の人達に認められずに生きてきました。

そんな中、田舎から出て淋しい一人暮らしをしている彼女に誠君は優しい言葉を掛けてきたのでした。
一人暮らしの淋しさと、慢性的な認めてもらえない一人ぼっちの淋しさを抱えている彼女にとって、彼は唯一絶対、自分という人間を認めて愛してくれる人なのでした。

したがってそんな彼を失うことは、また、孤独の淋しさに堕ちることにつながり、彼女は彼を自分の手元に引きとめようと必死だったのでした。

しかし、誠君は本当に恭子さんのことを思っていたのでしょうか。これについては、私は誠君に会ったことがないので分かりません。

ただ、この数ヵ月後二人は別れてしまいました。
別れたというより正確に言うと、恭子さんが彼の元から逃げ出して田舎に帰ってしまったのでした。
恭子さんから聞いた話では、彼は闇金融に多額の借金をしてしまい、借金返済のために、恭子さんに風俗店で働くことを強制してきたのでした。
これには、さすがの恭子さんも疑問を感じ、また、同時に身の危険も感じて田舎に逃げ帰ったのでした。

似たような家庭環境で育った人たちは、性格はまったく違っても無意識に魅かれ合うことが多々あります。
何か似たようなオ−ラを出しているのでしょう。
そして、子供時代に起こったことが、カップル間で再現(暴力 無視等)されても、その感覚に慣れてしまっていて疑問を感じず当然と受け入れてしまうこともあります。
また、低い自己価値は自分が不当に扱われることを自分が悪いからと認識してしまうこともあるのです。
子供の頃の思い、習慣はこんなにも私達を縛ってしまうのです。