夢・(夢中)と儚さ
漢字とは不思議なものです。
「夢」という字。
人が何かを強く願い、その実現のために時間を忘れて集中し、常にそのことばかり考えている状態を、「夢中」と書きます。
一方で「儚い」。
なぜ「人」と「夢」を合わせて「儚い」と書くのでしょうか。
まるで人の夢とは、最終的に儚い結末を迎えることを示唆しているかのようです。
「儚い」という漢字を私なりの感覚で捉えると、「虚しい」という言葉に変換されます。
夢の後には儚さかが待っていることもある

Index
1.夢中になりすぎて大切なものを見失わないこと
2.夢と儚さは紙一重(しかし、すべては経験であり今後の人生に活かせる)
1.夢中になりすぎて大切なものを見失わないこと
私たちは夢を追いかけている時、その実現のことで頭が一杯になり、他のことが目に入らなくなるほど「夢中」になることがあります。
夢の実現に没頭している状態です。
私個人の意見としては、夢に没頭し、夢中になること自体が良いとか悪いとかは一概に言えません。
しかし、もし夢中のあまり、夢以外の大切な何かをないがしろにしているとすれば、
その夢が実現した後に、大切なものを失ってしまった感覚、つまり「儚さ」が待っているかもしれません。

例えば、交際中の男女のケースを考えてみましょう。
彼は夢の実現に夢中。頭の中は夢のことでいっぱいで、夢を実現したら彼女と結婚したい、と考えているかもしれません。
しかし、彼女は彼が夢に夢中なため、なかなか会ってもらえず、ずっと寂しい思いを抱えているかもしれません。
彼女は次第に、「彼は私よりも夢を一番にしている」、「本当は私に夢中になってほしいのに、彼は夢のことばかり」、「この夢はいつ現実になるのだろう?将来が不安だし、婚期も逃してしまう」と悩み続けた結果、彼との別れを決断します。
その後、彼がどれだけ夢中になっていた夢を実現し、達成し、成功したとしても、愛する彼女はもう彼のそばにはいません。
彼の思い描いたシナリオは外れ、夢の実現を一番に祝ってほしかった人が、そこにいない現実を突きつけられます。
彼は夢中になった結果、夢は実現しました。
しかし同時に、失ったものの大きさを実感し、深い儚さを味わうことになるのです。

別の例も見てみましょう。
プロのスポーツ選手になる、
あるいは会社を起業するといった夢の実現に向かって、ひたすら練習に打ち込んだり、ビジネスを学んだりしている人がいます。
彼らはまさに夢中になって努力し、その結果、夢を実現します。
しかし、夢の実現(夢中)と儚さは、しばしば並行して存在することが多いのです。
例えば、スポーツ選手が見事にプロとして活躍し始めても、どこかでスランプに陥ったり、大きな怪我に見舞われたりして引退を余儀なくされることがあるでしょう。
その時、彼らは一時的にせよ、深い虚しさや儚さを味わうことになります。
もちろん、その心の状態から立ち上がり、次の目標を見出して努力を始める人も多いでしょうが、その過程で「儚さ」を経験しているのです。

会社の起業や事業の立ち上げに夢中になるケースも同様です。
懸命な努力の末、見事会社を設立し、顧客もつき、会社運営も軌道に乗り、利益も出始める。夢中になって努力した甲斐があり、夢は見事に実現します。
しかし、夢が実現した時を頂点とすると、会社を維持し、さらに成長させるためには、そこからさらに上を目指さなければなりません。
そうでなければ、後発の競合他社に追い抜かれてしまうからです。
夢を夢中で実現し、成功者となったとしても、さらに次の目標や夢を設定し、継続的な努力を怠らなければ、会社は成長できず、やがて倒産してしまう場合もあります。
会社が倒産してしまうと、お金だけの関係で繋がっていた人々は、社長を見限り、蜘蛛の子を散らすように皆、離れていきます。
友人だと思っていた人々からも見放され、時には家族とも離れ離れになってしまうかもしれません。
自己破産や離婚、家族崩壊といった事態に見舞われることもあります。

「あの夢中になっていた時間は何だったのだろう…」
彼が夢中になって達成した喜びの感覚は、深い虚しさや儚さの感覚へと変わってしまうのです。
一度倒産を経験すると気力も萎え、夢の崩壊と儚さを味わい続け、心が折れて心理的に不安定な状態に陥る人も少なくありません。
「夢中」とは、夢に向かって熱中すること。
しかし、その先には、夢を達成できなかった「儚さ」、あるいは夢を達成しても、それを継続できなかった「儚さ」が潜んでいることを認識する必要があります。

2.夢と儚さは紙一重(しかし、すべては経験であり今後の人生に活かせる)
夢は人に生きる希望を与えてくれます。
しかし、同時に儚さを味わうリスクも内包しています。
夢と儚さはまさに紙一重なのです。
たとえ夢が叶わなかったとしても、一時的には虚しさや儚さ、あるいは深い絶望を感じ続けるかもしれません。
しかし、そこから立ち上がる力は、いずれ必ず湧いてくるでしょう。
そのためには、誰かに心を支えてもらう、心理的な支援が必要となるかもしれません。
そして、たとえ夢が潰え、儚さを感じ続けたとしても、チャレンジした自分を決して責めないでください。
後悔することは多々あるかもしれませんが、過去の選択を責めることは建設的ではありません。
その時々、あなたは精一杯頑張ったのですから。

これは、夢の実現の有無に関わらず言えることです。
チャレンジし、夢中になっていた時。
そして、儚さを味わい続けた時。この時々に学んだことを、これからの人生に活かせば良いのです。
人生とは「経験の旅」です。
その時々から得た経験、知識、知恵、反省、そして、そこから生まれる新たな想いを、これからの生きるエネルギーとして、次の目標や活動に活かしていきましょう。
人生はまだまだ続いていくのですから。

追伸:夢中について
「夢中になること」、「熱中すること」は、何かを成し遂げる上で非常に重要なことです。
しかし、夢中になりすぎると、その過程において、自分にとって本当に大切な何かを失ってしまうこともある、ということを心に留めておいてください。
何かに夢中になり、熱中する。その一方で、「自分にとって一番大切なものは何か?」という問いと、あなたなりの答えをしっかり持ちながら、それぞれの行動に臨むことが、後悔のない人生を送るための鍵となるでしょう。