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強い「理想」と「使命感」が、時に「他者排除」と「孤独」を招く心理

私たちは皆、「何のために生まれてきたのか」という根源的な問いから、自分なりの答えを見つけ出し、ある種の理想や使命感を抱くことがあります。

そして、その理想や使命を叶えるために、熱い情熱を注ぎ込む方も少なくないでしょう。
特に若い世代には、このような傾向が顕著に見られるかもしれません。

しかし、この崇高な想いには、時に注意すべき側面があります。

今回は、理想の実現や強い使命感を抱き、情熱に溢れる方々へ向けたメッセージとして、その心理的な落とし穴について考察したいと思います。

抱く理想と使命感の情熱が、なぜ他者排除へと繋がるのか

自分の理想を社会に具現化したい、あるいは、その理想に基づいた働き方をしたいといった夢や情熱は、素晴らしいものです。

しかし、自己の理想の現実化にあまりにもこだわりすぎると、その理想から外れた人々、具体的には、異なる考え方を持つ人や、異なる行動を取る人に対して、心理的に「許容できない」という感覚が生まれることがあります。

そして、この「許容できない」という心理が、その理想に反する、あるいは理解できないと思われる他者を「敵視」し、「無視」し、さらには「排除」しようとする傾向へと繋がりかねないのです。

もちろん、人が理想や使命感を持ち、その実現に向かって努力することは、称賛に値します。

しかし同時に、他者もまた、それぞれに自己の理想を持ち、行動する権利があります。

自己の理想の現実化に燃えるあまり、その熱い情熱が、「違いを違いとして認められない」という視野の狭さに繋がることがあります。

そして、自己の理想と異なる意見や行動を取る人々を「敵視」したり、「意味のない人生を送っている者たち」と軽蔑したり、侮蔑したり、あるいは無視するといった「排除志向」へと駆り立ててしまう傾向には注意が必要です。

若くして自己の理想にこだわり、それが強いエネルギーの発揮や行動へと結びつくことは、非常に素晴らしいことです。

しかし、すべての人は自由に生きる権利を持っているという普遍的な事実を忘れてはなりません。

理想・使命感が現実化しない時の失望と孤独、そしてその先

高く掲げた理想や強い使命感を抱く人々も、やがて年を重ねるごとに、その理想や使命が実現できない現実と向き合うことになります。
そして、その想いが強ければ強いほど、深い失望感を味わうかもしれません。

このような時、熱い理想や使命感を持ち、ひたむきに行動し続けてきた人ほど、失望と同時に強烈な孤独を感じる可能性があります。
あるいは、これまでの「自己の理想を理解されない」ことからの他者排除傾向によって、すでに「一人ぼっち」であるかのような感覚を抱いているかもしれません。

社会生活を送る中で、他者の会話や行動を見るにつけ、自分の抱く理想とは全く異なる行動を取る人が多数存在することを認識し、また、自身の理想が軽視されるような場面に遭遇することもあるでしょう。

そうした経験を通じて、自分の理想の現実化の難しさや、理解されない儚さを体感し、失望し、結局自分は何だったのかと、さらに孤独感を深めてしまうのです。

高く掲げた理想や使命は、残念ながら失望や孤独へと姿を変えることも少なくありません。

それは、今の社会や人々のあり方、現実というものを強く認識した時に起こりやすく、そして、自身の非力さを痛感した瞬間でもあるでしょう。

1.現実との「乖離」を知った後の選択

理想と現実の間に大きな隔たりがあることを知った後、どのような行動を取るかが非常に重要になります。

それは、現実を知り、自己の無力さを認め、その上で理想や使命感を放棄するのか、という選択です。

もし理想を放棄した後に、人生を諦め酒浸りになるような自暴自棄に陥ってしまうことは、私にとって大きな懸念です。

また、理想や使命を現実化できなかった社会に対する敵意から、「こんな社会は破壊してしまえ」とばかりに攻撃的になり、実際に人々を排除するような行為に及ぶことは、取り返しのつかない結果を招きます。

そうではなく、現実を知り、現実を受け入れ、自分の理想とはかけ離れた社会に生き、そして、自分の抱く理想とはかけ離れた人々が多数存在することも受け入れ、許容心や寛容性を増した上で、自己の抱く理想や使命の現実化に再度臨むのか。

理想や使命に対する道は、ここで大きく分かれます。

どちらが「正しい選択」であるか否かは、誰にも決めることはできません。

酒浸りになるのも、再度理想の実現にチャレンジするのも、その人の選択権の範疇だからです。
(ただし、理想を放棄した結果として、社会破壊や他者攻撃を行うことは決して許されません)。

2.諦めずに、時間をかけて仲間と共に歩む未来へ

もし私からメッセージを贈らせていただけるとすれば、次のようになります。

若い時に抱いた理想や使命を、焦ることなく、現実社会や現実感覚とじっくりと融合させ、時間をかけて仲間を増やし、一つの旗を掲げて、分かち合える仲間と協力しながら、夢を諦めずに前進してほしい、と心から願います。特に若い方々には、まだたっぷりと時間があります。

そして、たとえ年を重ねても、高い理想を持ち続けている方は、その心の若さを失っていないはずです。それこそが、前進するための揺るぎないエネルギーとなるでしょう。

あなたの理想や使命は、きっと誰かの希望にもなり得るはずです。

どうか、一人で抱え込まず、共感し合える仲間と共に、歩み続けてください。

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