自分を「惨め」に追い込む心理:その目的と隠されたSOS
自らを、意識的、あるいは無意識的に、惨めな状況へと追い込んでしまう人がいます。
一見すると、理解しがたいその行動の裏には、一体どのような心理が隠されているのでしょうか。
人の行動には、たとえそれが自分にとってネガティブな結果を招くものであっても、何かしらの目的や、無意識のうちに刷り込まれた「自分らしさの証明」が潜んでいることがあります。
今回は、自分を惨めに追い込んでしまう、その複雑な心理のいくつかのパターンについて考えてみましょう。
自分を惨めに追い込む心理の様々な理由
Index
1.「罪悪感」を抱かせることで、つながりを求める心理
2.親の言葉が、人生の「呪い」となってしまった心理
3.「社会への怒り」が、自己破壊へと向かう心理
4.惨めさの中に、助けを求める心理
5.自分の行動を振り返ってみる(まとめ)

1.「罪悪感」を抱かせることで、つながりを求める心理
恋愛関係において、このパターンは顕著に現れることがあります。
恋人やパートナーを自分に引き留めるため、自傷行為や過剰な飲酒に走り、自らを痛めつけることで、「あなたが私を見てくれないから、こうなったのだ」と訴えかけるのです。
これは、見捨てられることへの強い不安や恐怖、そしてパートナーへの復讐心など、複雑な感情が入り混じった行動です。
相手に罪悪感を抱かせることで、自分から離れていかないようにしがみつこうとする、孤独や寂しさを避けるための必死な行為だと言えるでしょう。

2.親の言葉が、人生の「呪い」となってしまった心理
子どもの頃、親から何をしても否定され、馬鹿にされ、「お前は何をやってもダメだ」という言葉を浴びせられ続けたとします。
この言葉は、成長して大人になっても、心の奥底に「自分はダメな人間だ」という強い思い込みとして残り続けることがあります。
その結果、以下のような行動につながることがあります。
成功目前で、無意識に失敗してしまう
仕事やプロジェクトが順調に進み、あと一歩で成功というところで、なぜか失敗を繰り返してしまう。
これは、心のどこかで「自分は成功してはいけない」というブレーキが働き、親から植え付けられた「ダメ人間」というレッテルを無意識に証明しようとしているのかもしれません。

b)何もしないことで、惨めな自分を証明する
「どうせ頑張っても無駄だ」、「自分は何をやってもダメな人間だ」という思い込みから、最初から挑戦することをやめてしまう。
そして、何もしないことで、親の言葉通りに「惨めな人生」を自ら作り上げてしまうのです。
これは、無意識のうちに親の言葉に縛られ、その「呪い」を忠実に人生で再現してしまう、非常に痛ましい心理状態です。

3.「社会への怒り」が、自己破壊へと向かう心理
社会に居場所がない、何度挑戦しても認めてもらえないと感じ続けると、やがてその不満や怒りは「自分を受け入れてくれない社会への復讐」へと変わることがあります。
「どうせ自分を認めてくれないなら、徹底的に自堕落な生活をしてやる」、「この惨めな姿を社会に見せつけてやる」という激しい怒りから、自己破壊的な行動に走ってしまうのです。
しかし、その根底にあるのは、「本当は社会に認められたい」、「自分の居場所が欲しい」という切なる願いです。
その願いが叶わない絶望感から、自分を痛めつけることで社会に訴えかけようとしてしまうのです。

4.惨めさの中に、助けを求める心理
ナルシシズム(自己愛)というと、自惚れが強いイメージがありますが、中には「惨めな自分」に自己陶酔することで、自分の存在を保とうとする人もいます。
人前でわざとだらしない格好をしたり、昼間から酔い潰れたりして、「ボロボロな私を見て!」とアピールする行動の裏には、「助けてほしい」というSOSが隠されているのかもしれません。
「助けて」と口に出せない代わりに、惨めな自分を演じることで、誰かが気づいて声をかけてくれるのを待っている。
これもまた、人間関係における「つながり」を求める、歪んだ心理の現れです。

5.自分の行動を振り返ってみる(まとめ)
自分を惨めに追い込む行動の背景には、必ず何らかの理由があります。
もし、あなた自身や身近な人が、「あなたがこうするから、私はこうなる」と他者に責任転嫁し、相手に罪悪感を抱かせようとしていると感じたら、それは注意が必要です。
自分を惨めに追い込む行為は、一見すると利得のない行動に見えますが、その裏には「見捨てられたくない」、「自分を認めてほしい」という切実な願いや、親から受けた言葉の呪縛など、様々な心理が隠されています。
これらの行動を完全にやめることは難しいかもしれませんが、その心理の背景に気づくことが、自分自身を深く理解するための第一歩となります。
もし、これらの心理に心当たりがあり、生きづらさを感じているなら、一度専門家にご相談いただくことをお勧めします。