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せっかちな上司:その心理と問題、そして向き合い方

会社勤めをされている方々から、心理カウンセリングや相談の中でしばしば耳にするのが、「せっかちな上司」に関する悩みです。
その内容は、「上司が怖い」、「すぐに感情的になる(キレる)」、「暴言を吐く」といった深刻なものです。

彼ら、せっかちな上司の典型的な特徴は、部下に仕事を任せたにもかかわらず、その仕事がわずかでも彼らが定めた期限通りに終わらないと、途端にイライラし始める点にあります。

そして、最終的には待ちきれなくなり、感情的に「キレて」一方的にせかし、その瞬間に暴言が放たれる、というパターンが多いようです。

せっかちな上司のタイプとその背景にある心理

長年の会社勤めの中で、私自身も様々な上司と接する機会がありました。
せっかちな上司と一口に言っても、その背景にある心理は多岐にわたります。
ここでは、二つの代表的なタイプとその心理、そして彼らへの対処法について考察します。

Index
1.部下を「従わせたい」タイプの上司
2.部下を「信頼しない」タイプの上司
3.イライラを仕事へのパワーとして活かす

1.部下を「従わせたい」タイプの上司

このタイプの上司は、普段から「俺が、俺が」という自己主張が強く、部署や課の「大将」のような雰囲気をまとっています。
良く言えば親分肌、悪く言えば独裁者といった印象を受けるかもしれません。
性格も大雑把で、細かいことにはあまりこだわらない傾向があります。

彼らは、自身の自己顕示欲が強く、「自分の言うことは絶対である」という認識を強く持っています。
そのため、一度指示したことや、自身が定めたルールは、何があっても絶対であると信じて疑いません。
つまり、周囲の人間を自分に従わせたい、という欲求が根底にあるのです。

A.部下に仕事を任せる心理と部下に対する対応

では、なぜ人を従わせたいタイプの上司は、部下に任せた仕事が少しでも遅れると、過剰にイライラするのでしょうか。

先に述べたように、「自分の指示命令は絶対である」という認知を持っていると、自分の指示通りに動かない、あるいは自分の定めた通りに仕事ができない部下を、「自分に対して反抗的である」と捉えてしまう可能性があります。

自分が絶対的な存在であるため、自分に反抗する者は許せない、という思考回路が働くのです。
もちろん、部下は反抗しているのではなく、単に上司が定めた期限通りに仕事を仕上げられなかっただけかもしれないのですが、彼らの視点からはそうは見えないのです。

自分自身のこだわりや価値観に固執し続けることは、視野を狭め、他者の視点で物事を捉えることを難しくします。共感能力も培われにくくなるでしょう。

したがって、自分の定めた期限をわずかでも守らない部下に対し過剰に反応し、イライラを募らせ、待つことに限界が来ると怒鳴り散らしてしまう、といった結果を招くのです。

B.このタイプの上司とうまく付き合うには

このタイプの上司と良好な会社生活を送るためには、指示されたことが少しでも遅れそうな場合は、すぐに報告・連絡・相談(報連相)を行うことが極めて重要です(これは会社生活の基本でもありますが、特に徹底しましょう)。

そして、期限が間に合わないことに対して、先に謝罪の意を示すことも効果的かもしれません。
親分肌の上司は、自分に対して素直に謝罪したり、頼ってくるような部下に対しては、案外面倒見が良い側面を持っていることもあります。

彼らの絶対的な立場を認める姿勢が、円滑なコミュニケーションにつながる可能性があります。

2.部下を「信頼しない」タイプの上司

ここまでの記述で、もう一つ別のタイプのイライラする上司について思い当たった方もいるかもしれません。
それは、まったく部下を信頼していないタイプの上司です。

このタイプは、性格的に神経質で内向的な傾向があります。
先述した大雑把で無神経なタイプとは対照的と言えるでしょう。

部下を信頼しないタイプの上司には、どのような人物的特徴があるのでしょうか。
これはあらゆる人間関係にも通じることですが、他者を信頼できない人は、往々にして自分自身も信頼できていない、という深層心理を抱えていることがあります。

A.部下に仕事を任せる心理と部下に対する対応

自分を信頼できない人は、常に何らかの不安感を抱えています。
そのため、部下に任せた仕事の期限が少しでも遅れると、「本当に終わるのか」、「大丈夫なのか」と、その不安が募ってきます。

また、部下の作業後に、自分がその仕事に対する確認作業や修正作業を行う必要がある場合、その不安はさらに増大するでしょう。
なぜなら、確認作業にはそのための時間が必要であり、部下に任せた仕事が手間取るということは、自分の作業時間が減ることにつながります。
結果として、自分自身が責任を果たせないのではないか、という不安からイライラを募らせるのかもしれません。

そしてこのタイプも、部下の作業が遅れることで、自分への不安(「時間が足りない」という焦りや不安)から視野が狭くなり、他者の視点で物事を見ることができなくなってしまいます。
結果として、人を従わせたい上司と同じように、感情的な反応を示すようになるのです。

つまり、根底にある心理は異なっても、極限状態に追い込まれると、どちらのタイプも同じような「イライラ」や「怒り」という形として現れる、という共通点があると言えるでしょう。

3.イライラを仕事へのパワーとして活かす

さて、せっかちな上司。
これら、せっかちから生じる「イライラ」は、実は仕事に対するパワーとして活かされています。

まず、イライラの「本質」を考えてみましょう。

a)「部下を従わせたい」タイプの上司のイライラの本質は、「自分に従わない部下への怒り」です。

b)「部下を信頼しない」タイプのイライラの本質は、「不安が怒りへと変換されたもの」です。

どちらのケースも、根底には「怒り」の感情が存在します。この「怒り」という言葉を「パワー」と言い換えてみるとどうでしょうか。

「パワー」。
ここでは、仕事へのパワーとして考えてみましょう。

「人を従わせたい」タイプの上司は自己顕示欲が強いがゆえに、力強く素早く仕事を完了させ、優越感に浸りたいという欲求があるかもしれません。

また、「自分を信頼できない」タイプの上司も、期限ぎりぎりまで担当の仕事を持っておくことは不安であり、早く「楽になりたい」という思いから、結果として素早く仕事を完了させようとするかもしれません。

つまり、どちらのタイプのせっかちな上司も、実は「仕事のスピードが速い」という共通の特性を持っている可能性があるのです。

以前にも書いたことがあるかもしれませんが、性格の長所と短所は、実は同じ根から生じている、という考え方があります。

これを「長短同根」と言います。
一見短所に見える特性も、長所へと転じることができます。

2つのせっかちな上司のパターンは、短所を仕事のスピードーの速さと転じてはいるのですが、過剰にやり過ぎている感は否めません。

もし、せっかちな上司が、自身の性格の中で、過剰に反応してしまう「イライラ」の箇所を把握できるならば、そこを意識的にフォーカスして修正することで、これまで以上の、より良い仕事を送ることができるはずです。

そして、部下とのコミュニケーション、関係性もよくなるでしょう。

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