転職と自己成長:その仕事で「学び」を修了してからの次なる一歩
転職を考える前に、「今の仕事から何を学んだか」を問い直す大切さ
私たちは、会社に雇用されるか、あるいは自ら事業を起こすかに関わらず、何らかの仕事に就き、日々働いています。そして、時には今の仕事を離れ、新しい道へ進みたいと考えることもあるでしょう。
これを一般的に「転職」と呼びます。
私たちが転職を決意する際、最も大切にすべきことは何でしょうか。
Index
1.転職を考えるその時:不満の根源を見つめる
2.仕事を通しての「学び」と「成長」:自己の内面を豊かにする過程
3.退職決意の際の重要性:次の職場で同じ課題に直面しないために
1.転職を考えるその時:不満の根源を見つめる
職を変えることを「転職」と呼びますが、その理由は人それぞれです。
長時間労働、給与への不満、仕事内容のミスマッチ、あるいは飽き、キャリアアップへの閉塞感、人間関係の問題など、多岐にわたります。
転職そのものが良いか悪いか、という単純な問いではないと私は考えます。
しかし、本当に転職するほどの必然性があるのか、その動機を深く見つめ直す必要はあるでしょう。
転職を考える背景には、何らかの不満があるのが一般的です。もしそうであれば、まずその不満の根本原因が何であるかをじっくりと考えるべきです。
例えば、給与が安いという場合。もしその会社が構造的に給与水準が低く、どれだけ努力しても上がる見込みがないのであれば、自分では環境を変えることができないため、転職も納得のいく選択となるでしょう。

しかし、給与が業績給や歩合制など、自身の努力次第で向上が見込める場合は話が異なります。「給与を上げるための最大限の努力をしたか」という問いが突きつけられます。
仕事内容が自分に合わないと感じる場合も同様です。
「自分がその仕事に合わせる努力を十分に行ったか」どうか。
何も努力せず安易に辞めてしまうのであれば、そこから得られるはずの「学び」を全く得られないまま、次のステージに進むことになります。
もちろん、最大限の努力をしたにもかかわらず、個人の力では仕事内容そのものを変えることが不可能であると判断できたのであれば、転職を決意することは理解できますし、その努力の過程で、仕事を通じた確かな成長も得られたはずです。

2.仕事を通しての「学び」と「成長」:自己の内面を豊かにする過程
私は「仕事」とは、今行っている「事」に誠意を持って「仕える」ことであると考えています。
そして、以前にも述べた通り、仕事を通して得られる成長は計り知れないものがあります。
私たちの人間的な成長にとって、仕事は欠かせない要素なのです。
仕事を通じて、人は自己の内面を深く理解すること、他者の気持ちを汲み取ること、社会性を身につけることなど、多岐にわたる側面で成長することができます。
だからこそ、本来その仕事から学ぶべきことを十分に学ばないまま会社を辞めてしまう(転職する)ことは、成長のために得られる貴重な経験や気づきを逃してしまうことになりかねません。

「学ぶ」ためには、「努力」が不可欠です。
その「事」に誠意を持って尽くし、創意工夫を凝らす。仕事を円滑に進めるために知恵を絞り、困難に直面した際には解決策を模索する。
そうした「すべき努力をすべて行った後」に、それでもこの仕事を続けることは困難であるという結論に至ったのであれば、その仕事からの「学びは修了した」と捉えることができます。
その段階であれば、たとえ退職したとしても、次のステップへ問題なく進むことができるでしょう。

3.退職決意の際の重要性:次の職場で同じ課題に直面しないために
退職を決意する際、最も重要な問いは、「自分が今の『事』に仕えるために、最大限の努力をしたかどうか」です。
もし何の努力もせず、安易な気持ちで退職してしまった場合、次の職場でも同じ問題に直面する可能性が非常に高いのです。
例えば、人間関係が原因で退職を考えているケースを考えてみましょう。
もしその原因が、自分自身が他者と積極的にコミュニケーションを取ろうとせず、結果として職場に馴染めなかったことに起因するのであれば、それは本人の対人関係スキルに課題があると言えます。

スキルは、経験を積むことで初めて身につくものです。
したがって、この会社で対人スキルを磨かずに退職してしまえば、次の会社に行ってもそのスキルは低いままであり、同じような人間関係の課題を招いてしまうことは容易に予想できます。
(もちろん、対人関係があまり必要とされない、あるいは人との関わりが非常に薄い職種へ転職するのであれば、一時的には問題が回避されるかもしれません。しかし、人間関係は職場の中だけでなく、生きていく上で、あらゆる場面や場所で生じるものです。対人スキルは、社会で豊かに生きていく上で必要不可欠なものなのです。)

転職とは、今仕えている「事」を変えることです。
その決断を下す前に、「今の『事』から学びは終わったのか」、そして「その『事』に仕えるための努力を十分に果たしたのか」を、どうか深く考えてみてください。
転職は、自身の人生を大きく左右する決断です。
だからこそ、常に慎重に、そして自己成長の視点を持って臨むことが求められます。