仕事の悩み・退職の不安:安定した収入を失うことへの葛藤
様々な仕事の悩みについて
私たちは人生の大半を仕事に費やします。だからこそ、仕事における悩みは、私たちの生活の質や心の健康に深く関わってきます。
今回は、会社や組織に雇用されて働いている方が抱えがちな、様々な仕事の悩み、そして退職という選択の不安について考えてみたいと思います。
※なお、全ての悩みが心理カウンセリングで解決できるわけではありません。
その点をご了承の上、お読みいただければ幸いです。

1.人間関係の悩み
「職場で人間関係がうまく築けない」、「どうしても話の合わない人がいる」、「自分の意見が言えない」「自己アピールが苦手」。
職場での人間関係がうまくいかないと、孤立感を感じ、同僚の視線が気になり、出社すること自体が辛くなってしまうこともあるでしょう。
人間関係が築けない原因は、「自分自身の問題なのか」、それとも「職場内の誰かと合わず、それがいじめや無視のような形に発展しているのか」。
もし後者であれば、「なぜ自分がターゲットになるのか」、「なぜ無視されるのか」、「過去にも同じような経験はなかったか」など、深く振り返り、問題の根本原因を見つめ直す必要があるかもしれません。
また、この問題は、幼少期の親子関係や生育歴が大きく影響しているケースも少なくありません。
そして、人によっては、他人に気を遣いすぎて疲弊し、それが大きなストレスとなって転職を繰り返してしまう方もいらっしゃいます。
もし職場を変えても同じ悩みを繰り返すのであれば、心理カウンセリングなどを通じて、問題の分析や対応策を考えたり、ご自身を変えるための新たなチャレンジが必要になるかもしれません。

2.職場の雰囲気・風土との不一致
職場には、その企業独特の雰囲気や風土があります。
これは「企業体質」と言い換えることもできるでしょう。
例えば、地方から大阪の企業に勤務されたとします。
地方は比較的ゆったりとした風土が多い印象ですが、大阪は「お笑い」や「ノリ」の文化が強く、せっかちな人が多い傾向があります。
そのため、地方出身の方の中には、大阪の風土に馴染めず、社内の体育会系のノリに戸惑ったり、話のオチを求められ、「ノリが悪い」、「面白くない」と評価されてしまうことに悩む方もいらっしゃいます。
実際にカウンセリングでも、素朴な地方出身の方が、大阪特有のノリに合わないというお悩みをお伺いすることが意外と多くあります。

残念ながら、このような企業風土との不一致は、私の心理カウンセリングでは直接的な解決策を見出すことが難しい問題です。
なぜなら、その企業の雰囲気や風土は長年の伝統であり、それが働く人々を形成しているからです。
また、その雰囲気を好んで働いている社員も多く存在します。
悩んでいるご自身が、その企業の雰囲気や風土に合わせていくしかない、というのが現実的な対応策かもしれません。
しかし、無理にキャラクターを変えようとすれば、ご自身の心が疲弊し、破綻を招く可能性もあります。
強引なキャラ変は避けた方が良いとさえ感じます。

もしその会社に地方に支店があるのであれば、早期に転勤願いを出すことも一案ですが、赴任後すぐに転勤を希望することは、上司や人事からの評価に影響する可能性も否めません。
「使えない奴」と評価されてしまうかもしれません。
思い切って退職するという手もありますが、それは次の転職活動において不利に働く可能性もあります。数年間は我慢し、時期を見て転勤の願いを出すことが、最も穏便な解決策かもしれません。
あるいは、気が進まないかもしれませんが、大阪ならではの「お笑い」文化を少し勉強してみる、という意外なアプローチも考えられます。
人にはそれぞれ個性や長所があります。その個性や長所を発揮し、評価・認めてくれる企業風土であれば、それが一番理想的です。非常に悩ましい問題だと言えるでしょう。

3.適職への悩み(やりがい・やる気の問題)
「自分に合った仕事」、「自分の能力を発揮できる仕事」、「自分の理想を叶える可能性のある仕事」に出会うことは、決して容易なことではありません。
(そもそも、人生経験が浅い若い方の中には、自分の適職が分からないと感じる方もいらっしゃるかもしれません)。
仕事は、1日の大半を占める活動です。
ご自身の長所を活かせる、あるいは何かを成し遂げられる仕事に就かないと、やりがいややる気を感じられないこともあるでしょう。
しかし、こうした適職に出会うためには、「冒険」が必要となるかもしれません。
それは、不安を感じながらも現在の職場を退職し、ご自身の可能性を活かせそうな企業への再就職を目指すことです。
ただし、この活動には、本当にご自身の望む企業や仕事に出会えるという保証はありません。
だからこそ「冒険」なのです。

さらには、安定した給与を一時的に手放し、自営の道に進むことも一考です。
ご自身で活路を切り開く、という選択です。
ただし、自営にはそれなりの覚悟が必要です。
組織に守られることはなく、全てご自身の采配と責任になりますので、組織運営におけるストレスや悩みを抱えることになるでしょう。
安易に結論を出さず、慎重に人生を考える必要があります。
特にご家族がいらっしゃる方は当然です。
ご自身にとって何を優先すべきか、じっくりと考えることが大切です。
(具体的には、生活の維持か、充実した仕事か、夢の実現か、など)。

4.過重労働
業務量が多すぎる「過重労働」は、心身の健康に大きな影響を及ぼします。
頑張りすぎた結果、うつ病などを患うこともあり、細心の注意が必要です。
過重労働に陥ると、ご自身がストレスを感じていることさえ自覚できなくなることもあります。
また、営業職などで無理難題なノルマを課す会社の場合、ノルマを達成できない社員を上司が厳しく叱責し、その結果「達成できない自分が悪い」、「退職したい」、「自分の心が弱い」などと、ご自身の問題として深く悩んでしまう方もいらっしゃいます。
実際、達成困難なノルマを課す異常な会社の問題を、自分の問題として悩んでしまっているケースも散見されます。

本当にその過剰なノルマは達成可能なのか、全社員の中で達成している社員の割合や数値なども考慮し、会社が課すノルマについて客観的に考えることも必要でしょう。
一方で、多くの社員がノルマを達成しているのにご自身が達成できない場合は、ご自身の営業トークやアプローチに課題がある可能性も考えられます。
残念ながら、この問題や悩みについては、私のカウンセリングでは直接的な解決策を提供できません。私自身に営業職の経験がないため、営業に詳しいカウンセラーに相談することも、解決策の一つになるかもしれません。

5.その他の仕事・労働に関する問題
a)給与の悩み
私たちは経済社会に生きており、給与の増減は生活の質に直結します。
労働量に対して給与が見合わないと感じるならば、当然、会社や仕事に対する不満も感じるでしょう。
しかし、給与に関する悩みは、転職なども含め、総合的に考える必要があります。
心理カウンセラーよりも、人材紹介会社やキャリアカウンセラーに相談された方が、実際的かつ有効的なアドバイスが得られるでしょう。
b)パワハラ等の問題
上司が自身の立場を勘違いし、パワハラやセクハラなどの行為を行うこともあります。
インターネットで調べれば、誰に相談するのが適切かすぐに分かるでしょう。
労働問題に詳しい専門家に相談してください。
心理カウンセラーに相談しても、問題解決には至らない可能性があります。
上司という「力」を持つ者に対しては、それ以上の「力」と「知識」を持つ、外部の有識者に相談することがベストな選択です。
パワハラやセクハラを我慢して受け続けると、ストレスが増加し、悩みが強化されるだけでなく、自己価値の低下など、ご自身が病んでしまう危険性があります。
何よりも大切なことは、ご自身を守るということです。

私が退職時に悩んだこと:そしてその後
1.安定した給与を失う不安
私自身も14年間、会社員(サラリーマン)として働いていました。
そして、2002年6月末にその会社を自己都合で退職しました。
一番の理由は、私の能力と仕事内容が合わなかったことです。
心理職を目指して退職した、というのは、実は後付けの理由です。
退職を考え始めたのが2002年3月末、そして退職を決意表明したのは2002年5月中旬でした。
この間、退職後の給与や今後の生活について、毎日不安を感じ続け、深く悩んでいました。
その不安とストレスをごまかすため、毎晩大量にお酒を飲んでいたことを今でも覚えています。
給与とは、定期的に振り込まれる「お金」です。
それが途絶えるという事実に、相当な不安とストレスを感じていた日々だったと思います。

しかし、もしこの会社に勤務し続けていたら、私は年を重ねるごとに悩みとストレスが増え続けるだろうと予想していました。
それは、仕事内容と私の能力が合わないことで、「仕事ができない社員」になってしまうという感覚があったからです。
これでは、後から入社した社員にも昇格などで遅れをとり、周囲にどう思われているか、という他者意識過剰の状態に陥り、さらに悩みやストレスを感じ続けていたことでしょう。
私の経験から言えば、「合わない仕事は辞めた方がいい」という結論に至ります。
無責任な言い方と思われるかもしれませんが、当時の失業率は10%を超えていましたから、我ながら随分と無茶な決断をしたものです。

2.会社退職後・今の私の心境
人生とは山あり谷ありで、上昇することもあれば、下降することもあります。
今の私がどの状態なのかな、と少し悩む時もあります。
しかし、退職したことを後悔したことは一度もありません。
もし私がまだ前職に就いていれば、今の人生のような「冒険」はできなかったでしょう。
様々な経験をすることもできず、テクノロジーの進化とともに仕事の方法が変化していく体験をしても、良くも悪くも、私にとっては人生の醍醐味を味わえなかったと思います。
それに何よりも、仕事内容と能力が合わない私にとって、もしずっと勤務していたら、やはり昇格の遅れや職能評価の低さから、悩みや様々なストレスを感じ続ける日々だったでしょう。
遅かれ早かれ、退職の決断をしていたと思います。

それに、私は組織人としての気質が低く、自由を好む傾向があります。
自身の経験を活かし、心理職、心理カウンセラーに転向したことは、私にとって良い選択だったと実感しています。
会社退職については、後悔はありません。
ただし、当然ながら、将来受け取る年金の支給額は低くなります。
この一点のみが、正直なところ少し気になっている点です。
しかし、不確定な老後のことをあまり考えすぎず、もし今、就いている仕事に不安や悩み、強いストレスがあるのであれば、そして本当にご自身のしたいことをする人生を目指すのであれば、時期を見て、直感を信じ、退職することも一つの生き方、そして在り方ではないかと、自身の人生を振り返って思います。