親が子どもにパートナーの悪口を言うことの深刻な影響
夫婦関係がうまくいかないとき、パートナー(夫または妻)への不満から、その悪口を子どもに聞かせたり、話し続けたりしてしまうケースが見られます。
親御さんご自身も、それだけ多くの不満を抱えているのかもしれません。
しかし、子どもにパートナーの悪口を言い聞かせ続けることは、子どもたちの心にどのような影響を与え、その後の人生にどのような問題を引き起こすのでしょうか。

子どもの幸せを奪うパートナーの悪口を言い続ける「毒親」の行為
Index
1.母親が子どもに父親の愚痴を言い続ける「母子一体化」の問題
2.成長した子どもが「真の父親」を知り、母親への憎しみを抱く時
3.親が子どもにパートナーの悪口を言い続けることによる、子どもの心への様々な影響

1.母親が子どもに父親の愚痴を言い続ける「母子一体化」の問題
最もよく見られるのは、母親が子どもに父親の悪口を言い聞かせ続けるパターンです。
日中、父親が仕事で不在である分、母親には子どもに父親への不満や批判、愚痴を話す時間があるのかもしれません。
この行為により、母親のストレス発散、また、気持ちが一時的にすっきりするのでしょうが。
子どもは親を慕い、親の気持ちを察しようとします。
母親が父親の悪口を言っていると、子どもは母親を「かわいそう」だと思い、一生懸命話を聞こうとする傾向があります。
しかし、子どもは母親の愚痴の聞き役ではありません。
母親が子どもを自分の感情の捌け口として利用し、自分の味方だと勘違いしているとすれば、それは大きな問題です。

親の愚痴を聞かされ続けた子どもは、成長してからも、人の話や悩みを聞くことに自分の価値を見出すようになりがちです。
その結果、自分の意見や感情を抑え込み、他者を優先することで生きづらさを抱える傾向が高まります。
さらに深刻なのは、子どもにとって大切なものが奪われてしまうことです。
母親から父親の悪口を聞かされ続けた子どもは、父親を「母親をいじめる悪い人」と思い込み、父親に対して憎しみの感情を抱き続けることになります。
しかし、本来、母親がパートナーである父親に対して抱く悪口や愚痴は、あくまで夫婦間の問題であり、子どもと父親の関係性とは無関係であるはずです。

2.成長した子どもが「真の父親」を知り、母親への憎しみを抱く時
子どもは成長するにつれて、自分で物事を判断する能力を身につけていきます。
そして、ある時、真の父親の姿を知り、これまでの認識とのギャップに驚愕することが多々あります。
「母親が言い続けてきた父親の姿と、実際の父親はまったく違う……」。
子どもは、それまで母親から聞かされてきた情報とは異なる父親の一面を目の当たりにするのです。
この時、子どもは、自分が父親との健全な関係性を築く機会を奪われていたことを知ります。
そして、父親を悪者として印象操作した母親に対して、強い憎しみを抱くようになることもあるのです。
父親に対する怒り、憎しみ、嘆きを抱える母親は、子どもに父親の悪口を話し続けることで、子どもの父親に対する印象を操作し、一時的に自分の味方につけることに成功するかもしれません。
しかし、子どもが成長し、父親の真実を知った時、母親自身が子どもから憎しみや怒りの対象へと変わってしまうのです。

3.親が子どもにパートナーの悪口を言い続けることによる、子どもの心への様々な影響
上記では、母親の悪口を聞き続け、父親を悪者と信じ込み、やがて成長して真の父親を知り、母親に強い怒りを抱く例を挙げました。
しかし、親が子どもにパートナーの悪口を言い聞かせ続けることによって生じる子どもの心の傷や問題は、他にも複数存在します。
a) 「愚痴聞き役」の固定化
幼少期から、親からパートナーの悪口を聞かされ続けた子どもは、親の愚痴を聞くことが自分の役割であり、自分の価値であると思い込んでしまう傾向があります。
その結果、成長してからも、周囲の人や友人の愚痴の聞き役を自ら買って出てしまい、自分自身の愚痴や思い、主張をすることができなくなります。
このような「聞き続けるストレス」によって人間関係を築くことに問題が生じたり、心の健康を損なってしまったりする可能性もあります。
b) 「慰め役」としての自己犠牲
常に親から愚痴や悪口を聞かされ続けた子どもは、親を慰めることが日常の役割となります。
成長してからも、周囲の困っている人を慰めることに自己の価値を見出す傾向があります。
しかし、本当は自分が困っていて、心が傷ついていても、誰にも助けを求められず、逆にその状態でも他者を慰め、ケアしようと自己犠牲的な振る舞いをしてしまうのです。
このような行動は、自分自身を大切にできていない証拠です。

c)「母より幸せになってはいけない」という信念
父親の悪口を言い聞かされ続けた子どもは、不遇な家庭環境の中で自分を育ててくれた母親を大切にしなければならないと感じたり、母親より幸せになっては申し訳ない、という罪悪感を抱くことがあります。
この感情が固定化すると、「母より幸せになってはいけない」という強い信念が生まれ、生涯、恋愛や結婚とは縁がない人生を送ってしまう可能性もあります。
また、母親から繰り返し聞かされた父親像を、男性全体に一般化してしまい、男性に対して生涯不信感を抱いてしまうことも考えられます。
子どもにパートナーの悪口を言い続けた親は、知らず知らずのうちに、子どもの健全な心の成長と、その後の幸せな人生を奪ってしまうのです。

もし、あなたが過去に親御さんからパートナーの悪口を聞かされ続けてきた経験があるのなら、もしかしたら上記のいずれかに心当たりがあるかもしれません。ご自身の心の状態について、一度専門家、心理カウンセラーにご相談してみてはいかがでしょうか。