人の悩みの深まり:スマホの過活用がもたらすもの(スマホ依存)
カウンセリングに携わり始めて15年近くになります(2018年時)。
長いようで短かったこの期間に、私は人の悩みの変化を目の当たりにしてきました。
私は健康上の理由で現在は長期休業中ですが、ふと、10年前(2008年時)と、今の相談内容を比較すると、同じような悩みであってもその質と深さがまるで違うと感じるのです。
これは、人の質が変わったのでしょうか? それとも時代の流れでしょうか?
一つの答えとして、スマートフォンの登場と、その活用時間の長さが挙げられます。

私たちは、時代とともに進歩するテクノロジーの恩恵を受け、その影響下で生活しています。
人生の質、脳の活用度合い、感情力、社会性、共感力など、様々なものがテクノロジーによって変化しているのでしょう。
中でも、スマートフォンの発展は著しく、多くの人が長時間スマホを見ています。
心の悩みとスマホの関係を考えるとき、自分の悩みを膨大なスマホの情報量から検索し、原因を見つけ、それに対する関連記事を読み続けていくうちに、悩みと悩みに対する思い込みがさらに深まる傾向があるように見受けられます。

スマホの記事を読めば読むほど人は悩みを深める
Index
1.スマホの記事を読めば読むほど人は悩みを深める
2.悩みに対するスマホの関連記事を読めば読むほど思い込みは深まる
3.過剰にスマホの記事を読むことは客観的思考を阻害し、固定化を招く
4.心の健康を守るために:スマホとの賢い付き合い方

1.スマホの記事を読めば読むほど人は悩みを深める
人はあることに悩むと、そのことが常に頭から離れず、日常生活に支障をきたし、カウンセリングを訪れることが多々あります。
過去と比較して、現在の相談内容に見られる思い込みの深さは、以前とは比べ物にならないほどです。
それは、ある一つのことを考えすぎた結果であり、脳がそのことばかりを考えるようになってしまったのかもしれません。
人は悩み始めると、その原因や解決策をカウンセリングを受ける前に自分で調べる傾向があります。
そして、その情報収集にスマホを多大な時間を費やしてしまうのではないでしょうか。

私たちは、悩み事に対して、調べれば調べるほど、悩みや思い込みが深まることがあります。
それは、それだけの時間を悩み事に費やしているからです。(もちろん、すぐに解決策が見つかれば、悩みから解放されることもあるでしょう。)
不思議なことに、人は自分が悩み苦しんでいる原因が分からないと気持ち悪く、その原因を徹底的に調べて明確にしようとします。
そして、「自分が悩んでいる理由はこれだ」と思える記事(納得できる理由、腑に落ちる記事)を見つけると、そのことに関係する記事ばかりを探し出し、読み込んでしまうのです。
結果として、視野が狭くなり、自分の問題や悩みの原因を一つに絞り込んでしまいます。

私は、それだけの時間スマホを使うのであれば、自分の悩みの原因はこれだと「思った記事以外」も読み、多面的な見方をして、自問自答を深め、思い込みに引きずり込まれることなく、客観的な思考を維持してほしいと願いますが、どうもそうはいかないようです。
自分の悩みの原因はこれだとスマホから見つけると、人は同じ内容の記事ばかりを探し出し読み込み、思い込みを深め、悩みの原因を固定化して自分を苦しめてしまう傾向があるのです。
そして、悩みの思い込みを深め、「誰が自分を追い込んだのか、苦しめているのか」といった犯人捜しにまで発展することもあります。
考えれば考えるほど、自分を苦しめている対象人物や事柄に対し、怒りや憎悪を燃やし、破壊的な行動に出るか、あるいは、原因の元が倒せない相手だと、悔しさや無力感から病気になる可能性も否定できません。

2.悩みに対するスマホの関連記事を読めば読むほど思い込みは深まる
10年前、スマホは存在していなかったか、ほとんど普及していませんでした。
その時代と比較すると、なぜここまで人が思い込みを深め、苦しむのか、私にはスマホの影響としか思えません。
スマホが脳や思考に与える影響は、すさまじいものがあるのです。
スマホを見れば見るほど、読めば読むほど、悩みの質は強化され、思い込みは深まると私は考えています。
しかも、読まれている記事が誰によって書かれたのかも分からず、信頼性が薄いかもしれません。
そして、読んだ記事によって、まったく見当違いの思い込みをしてしまう可能性もあります。
スマホの絶対的な普及と、それに伴う様々な記事が氾濫している今、この現状を止めることは難しいでしょう。

3.過剰にスマホの記事を読むことは客観的思考を阻害し、固定化を招く
自分の生きづらさや悩みの原因をスマホで調べることは、自己努力であり、良いことだと思います。
しかし、そこでいったん納得したら、それ以上、同じ系統の内容の記事は読まれない方が良いと私は考えます。
思い込みが深まると、悩みからの解放に要する時間も長くなります。
また、悩みの内容によっては、悩みの原因と思い込みの固定化、視野狭窄から、怒りの感情が点火、爆発したりと、問題行動に移る場合もあります。さらに、人を逆恨みする可能性も出てきます。
そして、思い込みが深まると、客観的な思考が働かなくなることもあるのです。
私には時代の流れや人の行動パターンの流れを止めることはできません。
ただ、なぜここまで、10年前と同内容の悩みの相談であっても、深く思い込み、悩み込むのかと考えると、やはり、スマホが人に与える影響は大きすぎると考えざるを得ません。
4.心の健康を守るために:スマホとの賢い付き合い方
情報過多の現代において、スマートフォンは私たちの生活に欠かせないツールとなりました。
しかし、その利便性の裏で、私たちの心の健康に思わぬ影響を与えている可能性は多々あるでしょう。
もし、あなたがスマホで情報を調べるほどに悩みが深まる、一つの考えに囚われてしまうと感じたら、ぜひ以下のことを試してみてください。
情報源を限定する: 信頼できる機関や専門家の情報に絞り、個人のブログや匿名掲示板などの情報は鵜呑みにしないようにしましょう。
情報の量を意識する: ある程度の情報が得られたら、それ以上は深追いせず、一度スマホから離れて冷静に考える時間を作りましょう。
意識的にスマホをオフにする時間を作る: 寝る前や食事中、休日の一部など、意識的にスマホから離れる時間を作ることで、脳を休ませ、客観的な思考を取り戻すことができます。デジタルデトックスは、心の健康に大きな効果をもたらします。
異なる視点に触れる: 悩みの原因や解決策について、あえて自分とは異なる意見や考え方に触れる機会を設けてみましょう。読書や多様な人との会話は、視野を広げ、思い込みから解放される手助けとなります。
専門家の力を借りる: もし、一人で悩みを解決するのが難しいと感じたら、迷わずカウンセリングなどの専門家に相談してください。第三者の視点や専門的なアドバイスは、あなたの悩みを客観的に捉え、解決への糸口を見つける大きな助けとなるでしょう。
スマホは便利な道具ですが、その使い方次第で私たちの心に良くも悪くも作用します。
自身の心の健康を守るためにも、スマホとの付き合い方を見直し、賢く活用していくことが、これからの時代を生きる私たちにとって非常に重要だと考えます。
あなたの心が少しでも楽になるために、今、あなたにできることは何でしょうか?