SNSと人間関係の閉塞的なストレス
スマートフォンの普及と同時に、私たちの生活に深く浸透したのがSNSです。
パソコンが主流だった時代にもSNSは存在しましたが、いつでもどこでも手軽に使えるスマートフォンの登場により、その利用は爆発的に拡大しました。

なぜ今、SNSで心が疲弊するのか?孤独社会と「つながり」の落とし穴
Index
1.SNSが満たす、現代人の「つながり」への渇望
2.文字のやり取りがもたらす、見えないストレス
3.深まる人間関係の悩みとSNSの影響
4.SNSとの健全な付き合い方
1.SNSが満たす、現代人の「つながり」への渇望
現代社会は「人のつながりが希薄になり、孤独化が進んでいる」と言われています。私たちは「自分とは何者か?」という自己存在の希薄さや、承認欲求の不足を感じやすいのかもしれません。
だからこそ、「自分はここに存在している」ということを誰かに知ってもらいたい、あるいはインターネットやSNS上で人とつながっていたいという欲求が生まれます。
投稿に「いいね」が付くことで、満たされない心が少しでも満たされる。
SNSは、まさに孤独な現代社会のニーズに合致したテクノロジーと言えるでしょう。

リアルなつながりではなくても、SNSを通じて会話ができれば孤独を感じずに済みますし、友人やコメントの数を増やすことで自己承認欲求を満たすこともできます。
人は「みんながやっているから自分もやる」という社会的同調性も持ち合わせていますから、SNSを利用することで、時代や仲間から取り残されていないという安心感を得ている面もあるでしょう。

2.文字のやり取りがもたらす、見えないストレス
しかし、SNSは文字や写真、動画といった情報が主体となる世界です。
特に文字だけのやり取りでは、相手の真意を読み取るのが難しく、何度も読み返したり、返信に悩んだりする中で、多くの時間を費やし、ストレスを抱えることがあります。
「自分の返信が相手にどう受け取られるだろうか?」という不安も常に付きまといます。
相手に嫌われたくないという気持ちから、返信内容を長時間考え込んでしまう人も少なくありません。SNSは手軽につながる便利なツールである一方で、文字から相手の感情を推測し、それに基づいて返信するという、余計なストレスを生み出しているのです。
また、SNSでの発信内容(文字、画像、動画)によっては、誤解されたり、反感を買ったり、ひいては非難や中傷の対象となるリスクも伴います。そのため、投稿する際には、読み手に対して過剰に気を使い、慎重にならざるを得ません。

「自分を発信したい」という思いとは裏腹に、思い切って発信できず、「嫌われたらどうしよう」という不安を抱えながらも、それでも「つながっていたい」という葛藤の中にいます。
さらに、他者の投稿を見ることで、自分と比較して劣等感を抱いたり、妬みを感じたり、落ち込んだりと、様々な感情に振り回されることも珍しくありません。「何のためのSNSなのだろう」と感じながらも、その利用をやめられない人も多く見受けられます。

3.深まる人間関係の悩みとSNSの影響
近年、人間関係や人への悩み、特に「嫌われたくない」という思いが強まり、そのために人に合わせすぎて自分を出せず、自分が何を感じているのか分からなくなるといった悩みを抱え、カウンセリングを訪れる方が増えているように感じます。
昔から人間関係の悩み相談は多かったのですが、そこにSNSが加わることで、悩みがより一層深まっている印象を受けます。もちろん、SNSがきっかけで人々とつながり、勇気をもらえたり、ビジネスが広がったりといったポジティブな側面が多々あることも事実です。

しかしその一方で、SNSがいじめの温床になったり、詐欺師が悪用したりと、注意しなければならない点も少なくありません。
スマートフォンでいつでも見られるSNSは、社会や政治を変える力を持つ一方で、前述の通り、私たちのストレスを高め、人を傷つける道具にもなり得ます。あまり気にせず、気軽にSNSを楽しめるのが一番ですが、これも時代の流れと言えるでしょう。

4.SNSとの健全な付き合い方
私が願うのは、良心と他者への思いやりを忘れず、おおらかな気持ちでSNSを活用することです。
もしSNSが「面倒だな」「しんどいな」と感じるようなら、思い切ってやめてしまうのも一つの選択肢です。
SNSについて私に書けることはこのくらいですが、最後に、ある学者の言葉を紹介します。
「1週間に1日、スマホを使わない日をつくると、ストレスはかなり減る。」
あなたも、SNSとの付き合い方について、一度立ち止まって考えてみませんか?