批判心を露わにしない「大人の心遣い」:人との繋がりを豊かにするために
私たちは誰しも、心の中に批判心を抱くことがあります。
意見が合わない人、感性が違う人、性格がそぐわない人、あるいは漠然と「なぜか気に入らない」と感じる人など、様々な相手に対して、人は多かれ少なかれ批判的な感情を抱くものです。
もちろん、意見の違いから生まれる批判や、建設的な議論のための批判そのものは、決して悪いことではありません。
伝え方次第で、批判はより良い方向へ進むための貴重な意見にもなり得ます。
そのためには、相手の存在を認め、その意見も尊重しながら自分の考えを述べるという、コミュニケーションの技術が求められます。

しかし、厄介なのは、相手の人間性そのものに対する批判心です。
これは、単なる意見の相違を超え、なかなか消えるものではありません。
そして、この批判心の取り扱いには、細心の注意が必要です。
なぜなら、あなたが相手に抱く批判心は、少なからず相手にも伝わってしまうからです。
さらに、批判心を具体的な形で相手にぶつけたり、攻撃したりすると、相手の敵対心や嫌悪感は増幅し、それがまた、私たち自身の批判心や、その根底にある憎悪をますます高めるという悪循環に陥ります。
批判心は、行き過ぎると憎悪へと変貌してしまう恐ろしい感情なのです。
これでは、人間関係はこじれるばかり。
心の内側に潜む批判心とどう向き合うかは、私たちの社会生活にとって非常に重要なテーマです。
相手に抱く批判心や嫌悪感、憎悪といった感情は、そう簡単に隠し通せるものではありません。
よほどお互いが心から認め合い、和解できるような状況でもない限り、そうした感情は、顔の表情や態度といった非言語的な部分に、どうしても滲み出てしまうものです。
「目は口ほどに物を言う」という言葉があるように、冷めた視線は、その奥に潜む感情を相手に悟らせてしまうでしょう。
今回は、誰もが持つこの厄介な批判心に、大人の私たちがどう向き合っていくべきかについて考えていきます。

批判心との上手な向き合い方
Index
1.感情を表情に出さない努力をする
2.批判の対象から意識をそらす
3.「人は人」と割り切る
4.必要以上に関わらないが、無視はしない
5.美点凝視:良い点を探す視点を持つ
6.自身の「厳しさ」や「正論」を見つめ直す

1.感情を表情に出さない努力をする
人間関係においては、私たちが相手に抱く様々な感情は、良くも悪くも相手に伝わります。
好意的な感情も、憎悪の感情も、そして批判心を含む感情も例外ではありません。
したがって、批判心を抱く相手に対して、敵意や憎悪といった感情を表情や態度に出さないことが非常に大切です。
しかし、非言語的な雰囲気を含めて、批判心を完全に隠し通すのは至難の業でしょう。
それが人間というものです。
まずは、自分が相手に対して批判心を抱いていることを自覚し、意識することが第一歩となります。

2.批判の対象から意識をそらす
私たちは、批判心を抱いている相手、つまり「気になる相手」に対して、無意識のうちに意識を集中させ、それによって批判心をかえって強めてしまう傾向があります。
気になるからこそ、相手を意識し、さらに批判を深めてしまうという悪循環です。
意識的に、その対象から意識をそらす努力をしてみましょう。

3.「人は人」と割り切る
あなたが批判心を抱いている相手の態度や言動を、あなたの思い通りに変えようとすることは、ほぼ不可能です。私たちは、他者を意のままにコントロールすることはできません。
世の中には、あなたの気に入らない人や、様々な考えを持つ人が共に生きています。
公序良俗や法律に反する場合を除いて、「違いは違いであり、間違いではない」という認識を持つことが重要です。様々な人がいることを許容し、「人は人」と割り切る意識を持ちましょう。
相手に批判心を強めたり、嫌悪感を募らせたりしても、その感情はコントロールが難しく、時に怒りへと転じ、その怒りの処理に失敗すると、自分自身や大切な家族へと矛先が向かってしまう可能性すらあるので注意が必要です。

4.必要以上に関わらないが、無視はしない
批判心を抱く相手に対して、必要以上に関わる必要はありません。
しかし、相手の存在を完全に無視することは、相手に自身の存在を否定されたと感じさせ、ただでさえ悪い関係をさらに険悪なものにしてしまうでしょう。
必要以上に関わる必要はありませんが、最低限の挨拶は交わしましょう。
あなたが挨拶をすれば、相手も返してくれる可能性は十分にあります。
お互いの存在は、認め合うことから始まります。
相手からの挨拶を期待せず、自分から積極的に挨拶をする方が良いでしょう。
そうしなければ、本当に挨拶すらしない関係になり、批判心や嫌悪感がますます増幅してしまうかもしれません。

5.美点凝視:良い点を探す視点を持つ
どんな人にも、良い点があると言われます。
あなたが批判心を抱く相手は、あなたが「気に入らない」と感じる何かを持っているからこそ、批判の対象となるのでしょう。
しかし、その人の良い点、素晴らしい点を見つけることはできないでしょうか?
批判心は一旦脇に置き、その人の良い点だけを見続けるという「美点凝視」の視点を持ってみましょう。
私たちは批判は得意ですが、美点凝視となると途端に難しく感じるものです。
寛容性に乏しい私たちにとって、気に入らない人の良い点を探し続けることは、そう簡単にできることではないかもしれません。
(私自身も、常にできているわけではありません)。それでも、「美点凝視」は非常に大切な考え方ですので、ぜひ意識してみてください。

6.自身の「厳しさ」や「正論」を見つめ直す
批判心は、相手があなたの「気に入らない点」を持ち、そのように振る舞うことから生じます。
しかし、この批判心が生じる原因は、本当に全て相手の責任なのでしょうか?
もしかしたら、あなた自身が持つ「厳しすぎる言動の枠」から相手が外れているために、批判心が生じているのかもしれません。あるいは、あなた独自の「厳しすぎる価値観」や「常識」が相手に備わっていないため、相手を批判しているのかもしれません。
仮に、あなたの抱く「厳しすぎる言動」「価値観」「常識」を「正論」と呼んでみましょう。
そうなると、相手に対する批判心は、相手の問題ではなく、あなた自身の「正論」がもたらしているのかもしれません。
すなわち、あなたの抱く批判心は、あなた自身の「正論」から相手が外れているために生じている、とも考えられるのです。

しかし、あなたの抱く「正論」は、本当に普遍的な「正論」なのでしょうか?
それを証明できますか?
「厳しすぎる言動」は、あなたの生い立ちや性格に関係しているのかもしれません。
また、価値観や常識は、時代とともに変化するものです。
もしかしたら、あなたが批判心に対処する方法は、あなた自身が「柔軟性」を身につけることなのかもしれません。
それが「寛容性」へと繋がり、結果的に批判心を和らげてくれるのではないでしょうか。

批判心は、誰もが抱く自然な感情ですが、その扱い方を間違えると、人間関係をこじらせ、自らを生きづらくしてしまいます。
大人の心遣いとして、批判心と上手に付き合い、より豊かな人間関係を築いていきましょう。