【虚像】自分を大きく見せる嘘の自己と心理
「なんでも知っている」とばかりに延々と話したり、「私はこんなにすごい人間だ」と画像でアピールしたりする人たち。
彼らの姿は、まるで虚像のように見えます。
虚像とは、実力以上の自分を大きく見せようとする、偽りの自己です。
そこには、本当の自分ではなく、嘘の自分が存在しています。
では、なぜ人は虚像に溺れてしまうのでしょうか。
その根底には、本人が抱えている心の葛藤や問題が隠されているのかもしれません。
自分を大きく見せる「虚像」の心理とは

Index
1.言葉の嵐を吹き上げる「なんでも知っている」タイプ
2.質問に対して何でも知っていると自分を賢く大きく見せるタイプ
3.SNSで作り上げられる「嘘の自己像」
4.虚像を生み出す心理の本質的な問題
1.言葉の嵐を吹き上げる「なんでも知っている」タイプ
あなたの周りに、どんな質問にもすぐに答え、延々と話し続ける人はいませんか?
彼らの話を聞いていると、「本当に内容を理解しているのだろうか?」、「質問の真意をわかってくれているのだろうか?」と疑問を感じることがあります。
なぜなら、彼らの話には、「自分はなんでも知っている」という暑苦しいプレッシャーが感じられるからです。
しかし、知ったかぶりには必ず綻びが出ます。
話が長くなるにつれて論理性が欠け、証明できないような言葉が平然と並べられることが多いのです。
話すことに夢中になるあまり、自分自身が何を言っているのかわからなくなっているのかもしれません。

2.質問に対して何でも知っていると自分を賢く大きく見せるタイプ
そして、また、何でも答える人。
実のところは何も知らない人なのかもしれませんが。
自分は何でも知っている、あなたより上ということを見せたいのでしょうか?
そうなると、傲慢となってしまいます。
何かを聞かれて、誠意のある対応、答えを述べるには、質問している相手の真意を理解する必要があります。
何でも即答する人には、相手の質問の真意を理解していない人が多いものです。

カウンセラーがカウンセリングを展開する時、何らかの質問をご相談者様から受け賜わり、それに対して答える時、その質問の真意が分からない場合は
「そのご質問について、もう少し深くお伺いしてよろしいでしょうか」等、ご相談者の質問対する、真意を探ります。
もしくは、「今のご質問は~~、という内容、及び、理解してよろしいですか」等、ご相談者様の質問の真意を確かめます。
質問に対して答える場合は、相手の質問の真意を理解しなければならないのです。
また、質問に対する答えが分からない時は、正直に、「分かりません、申し訳ございません」と素直に謝る方が、いい加減な返事をするより、人間性においても良いかと思います。

いずれにせよ、延々と偉そうな態度で話す人や、どのような質問でもすぐに答える人には、人の話しを聞く力もなく、さほどの知識、知見がないにも関わらず、自分を大きく見せたいという、虚像の心の深層を感じてしまいます。
偽りの自己を演じている自分を演じている感覚は、優越感でしょうか。
それとも、脳のヒートアップにより、自己制御不能の状態なのでしょうか。

3.SNSで作り上げられる「嘘の自己像」
SNSが主流となった今、自分の理想像をネットにアップすることは、ひとつの文化として定着しています。
しかし、現実とはかけ離れた、完璧に作り上げた虚像を常にアップし続ける心理には何があるのでしょうか?
ナルシスト的な心理や劣等感の裏返し、あるいはもっと深刻な病的な心理が働いている可能性もあります。
こうした虚像を維持し続けることは、非常にリスクの高い行為です。
現実の自分と虚像とのギャップに悩み苦しむ可能性がありますし、そのギャップを埋めるためにお金を不当に得ようと、人を騙す行為に及んでしまうこともあります。
一度虚像を作り上げてしまえば、それをやめることは簡単ではありません。
「嘘でした」と正直に認めることは、想像以上に勇気のいることです。
虚像の自分を維持しようとすればするほど、人生に行き詰まり、現実の自己との乖離に苦しむことになるでしょう。

4.虚像を生み出す心理の本質的な問題
では、なぜ人は虚偽の自分を作り上げてまで、自分を大きく見せようとするのでしょうか。
その根底には、心のバランスを保とうとする無意識の働きがあると考えられます。
心が萎縮し、劣等感に満たされると、人は卑屈になりがちです。
その状態を避けるため、心のバランスを取るために、虚像を作り上げる必要があるのです。
優越感に浸りたいという心理も、日々のストレスや劣等感からくるものが多いでしょう。
さらに、孤独な時代であることも関係しています。
人は孤独から逃れるために、虚像を演じてでも注目されたいと願うものです。
現代はSNSやAIの進化により、真偽の区別がつかないほど精巧な虚像を作り上げることができます。
しかし、嘘はいずれ暴かれます。
虚像の自分と現実の自分との間に生まれる不一致は、最終的に自己への信頼を失わせ、ひいては人生の終焉を招きかねません。

自分を大きく見せたいという心理は、心の奥底にある寂しさや劣等感の表れかもしれません。
しかし、虚像は一時的な心の安らぎにしかなりません。
ありのままの自分と向き合い、少しずつでも現実の自分を肯定していくこと。
それが、本当の意味での心の安定と、充実した人生に繋がるのではないでしょうか。