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親は本当に子供を傷つけるつもりだったのか?ACの問題の深層

アダルトチルドレン(AC)の親子関係の問題について、これまでも様々な角度から考察してきました。私自身の見解として、アダルトチルドレンの問題の根底には、親が抱える心理的な未解決の課題があると捉えています。

しかし、ここで深く考えるべきは、親が本当に「子供を苦しめよう」「生きづらくしてやろう」と考えて子育てをしたのか、という点です。
虐待のような作為的なケースを除けば、そのような意図を持つ親は稀なのではないでしょうか。

良かれと思って傷つけてしまう:親の無自覚な行動が子供の心を蝕む原因

親は「良かれ」と思って子供に接する中で、知らず知らずのうちに子供の心を傷つけてしまうことがあります。
これが、多くのアダルトチルドレン問題における真実かもしれません。

しかし、「良かれ」という考えの背後には、親自身の未解決な心理的問題が潜んでいたり、その「良かれ」を伝えたり、子供の行動を促したりするための言動や態度が未熟であったりするケースが少なくありません。

Index
1.親の無自覚な「良かれ」が子供を傷つけるメカニズム
2.親自身が「生きづらさ」を当然と受け入れている問題
3.私たちアダルトチルドレンの責任:次の世代に「生きづらさ」を継承させないために

1.親の無自覚な「良かれ」が子供を傷つけるメカニズム

例えば、「高学歴や一流企業への就職こそが人生で最も大切なこと」と信じる親がいるとします。

この考え方の背景には、親自身が自身の親から「一流でなければ人間の価値がない」といった価値観を植え付けられてきた可能性が考えられます。
あるいは、親自身がテストの成績が良い時だけ褒められて育ったため、「テストの悪い子には価値がない」という無意識の意識を持っているのかもしれません。

また、親自身の学歴や職歴に対する劣等感が強く、子供に高学歴をつけさせて他者に自慢したいがために、そのような振る舞いをしているケースもあります。

そして、子供に勉強させるために「テストが悪いとお小遣いをあげない」、「もっと勉強しろ、このバカ!」「テストの点が悪いと叩く」といった問題のある言動や行動に出てしまう場合もあるのです。

しかし、いずれのケースにおいても、親自身がこれらの内的な動機や問題行動に気づくことはほとんどありません。彼らは、心から子供のためを思って、そのように振る舞い、教育していると信じて疑わないのです。

2.親自身が「生きづらさ」を当然と受け入れている問題

アダルトチルドレンの当事者の中には、親の態度や言動によって自分が問題を抱えてしまったという認識のもと、直接親を責める行動に出る方もいらっしゃいます。
しかし、多くの場合、この行動は問題解決にはつながりません。

なぜなら、親は親なりに「精一杯のこと、精一杯の教育をした」と信じているからです。

子供に暴言を吐いたり、人格を無視したような叱り方をしたり、あるいは過干渉に振る舞い続けたとしても、彼らはそれが子供の幸せのために行ったことだと心から信じています。そして、このような言い方や振る舞いが子供を傷つけるとは理解できなかったし、おそらく今でも理解できないでしょう。

アダルトチルドレンの親には問題のある考え方や行動パターンが見受けられますが、これは親自身が、彼らの親から問題のある育てられ方をしている可能性が極めて高いためです。

アダルトチルドレンの親は、その親から歪んだ育てられ方や価値観を植え付けられ、それを当然のものとして受け入れ、引き継いでいるのです。そのため、それに異論を唱える子供(アダルトチルドレン)の気持ちを理解することができないのです。

言葉を変えるなら、アダルトチルドレンの親自身が、世代間の連鎖によって「アダルトチルドレン」であるということです。

しかし、親自身はその「アダルトチルドレン」という言葉すら知らないでしょう。

そして、ある程度の年齢を重ねた今、自身がアダルトチルドレン、すなわち傷ついた子供時代を過ごし、その傷を持ったまま大人になったこと、あるいは親に認められるために自分を犠牲にしてきた事実については、おそらく認めることはなく、強く否定するでしょう。

もし認めてしまえば、自分自身の半生が一体何だったのか、という強烈な喪失感に囚われてしまうかもしれないからです。

今でこそ、心理学は広く一般に浸透し、自己分析、過去を振り返るワークやセミナー、そして様々な心理学関連の本が出版され、カウンセリングも日常的に利用されるようになり、自分自身を深く振り返る場が多々存在します。

しかし、私たちアダルトチルドレンの親の世代には、そのような自分自身を振り返る機会や場がほとんどありませんでした。
彼らは生きづらさを感じても、それを「当たり前のこと」として受け入れてきたのです。

「当たり前」として受け入れたからこそ、それが当然の生き方であり、その「当然」を子供に伝えているに過ぎません。

だからこそ、私たちアダルトチルドレンが親を責めても、そこから何かを得ることはほとんどないのです。彼らにとっては、当然の考え方や価値観に基づいて行動しているだけであり、それ以外の道を知らなかった。それ以外の方法を学んでいないからです。

3.私たちアダルトチルドレンの責任:次の世代に「生きづらさ」を継承させないために

さて、このページをご覧になっている多くの方は、ご自身がアダルトチルドレンであることに気づかれている方々ではないでしょうか。
今、私たちがアダルトチルドレンであると気づいた私たちが、次になすべきことは何でしょう。

それは、私たちが親から受け継いだ「生きづらさ」の根源である価値観、考え方、行動パターンを、自分たちの子供に継承させないことです。

私たちは、自分自身を深く振り返る権利を行使し、その責任に基づき、より生きやすい新しい価値観、考え方、そして行動パターンを自ら創造するのです。

そして、それに基づいて子供を育てること。
そして当然のことながら、私たち自身が何よりも生きやすくなることは言うまでもありません。

これこそが、アダルトチルドレンの世代間連鎖の流れに楔(くさび)を打ち込み、その流れを食い止めること。

それが、私たちアダルトチルドレンに課せられた、そして私たちが果たすべき責任なのかもしれません。

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