人と親密になれない悩み | 親しい関係性を築くためには
私たちは、親密な友人がいないことに悩むことがあるかもしれません。しかし、生涯を通じて心から親密と呼べる友人は、ごくわずかであるのが現実なのかもしれません。

生涯を通して親密な友人はごく僅かかもしれない
Index
1.親密な友達がいない悩みの具体例
2.求める親密さの基準と違和感
3.自己開示ができないと知り合いができず、親密へと発展しない
4.親密さを獲得するための基準
5.親密な友達とは生涯において数名かもしれない
1.親密な友達がいない悩みの具体例
現在25歳の会社員である智彦さん(仮名)は、「友達ができない」という悩みを抱えてカウンセリングに来られました。
彼の1週間のスケジュールは、月曜日から金曜日まで会社で事務内勤として働いています。職場の同僚は年配の方が多く、なかなか話が合わないそうです。また、彼は北海道出身で関西圏に知り合いはおらず、休日の土日は特に趣味もなく、家で静かに過ごしています。
そんな自分に対し、最近、智彦さんは疑問を持ち始めました。
友達がいないために休日を持て余し、時間が経つのが遅く感じられ、昼間からお酒を飲んで虚しさを紛らわせていることに気づいたのです。

2.求める親密さの基準と違和感
孤独感を解消するため、智彦さんは人との出会いを求め、あるサークルに入会しました。
人と接することで友達を作り、現状を解決しようと考えたのです。
彼が入ったのは、メンバー30名の社会人サークルで、月2回、アウトドアやスポーツ、飲み会など、皆でワイワイ楽しむことを目的としていました。
幹事が様々な企画を立て、メンバーは気が向いた時に参加する自由参加型です。
しかし、サークルに入って3ヶ月が経ち、智彦さんはどうにも馴染めず、一体どうすればいいのかと悩み、再びカウンセリングに来られました。
彼によると、サークルは「どうも深い付き合いが欠けている」、「面白ければいい」、「笑っていればいい」という雰囲気で、馴染めないとのこと。
そして何よりも、当初の目的であった「友達ができない」ことが一番の悩みでした。

そこでまず、彼に「友達の定義」について確認しました。
彼にとって友達とは、「じっくりと膝を突き合わせて話し、お互い心の話を本音で話せる間柄」だそうです。
彼の話を聞いて私が感じたのは、サークルの目的と智彦さんが求めているものが、直接的には一致していないということです。
サークルは、皆で賑やかに過ごすことを目的とした集まりです。
皆で賑やかに過ごすということは、参加者全員のエネルギーが一定の方向に向かい、それぞれのエネルギーが交差、一致、炸裂してその場を楽しむものです。そのため、参加人数は多い方が盛り上がります。
しかし、智彦さんが求める友達関係、「じっくりと膝を突き合わせて話し、お互い心の話を本音で話せる間柄」は、参加者が内面で感じていることを互いにオープンにして話すものです。
したがって、何を言っても批判されない安全で受容的な空間が必要であり、参加者は数人が理想的です。
サークルが「皆で雑談などを楽しみ、知り合いを作り、賑やかに楽しむこと」を目的としているのに対し、智彦さんは「静かに少人数の友達と心を開いて話したい」と考えており、双方の目的が異なるのです。

当然、知り合いと友達は違います。
知り合いから友達関係へと発展するものです。
したがって、智彦さんがサークル内で友達を作るためには、次の方法しかありません。まず、サークル内で盛り上がり、メンバーの一員として知り合いを作ること、そしてそこから数人の気の合う人を見つけることです。
しかし、智彦さんのお話では、まだ知り合いすらできていないようです。
そこで、彼にどのようにサークルで振る舞っているか聞いてみました。
「どうしても自分から話すことは苦手で、受け身になってしまいます。また、面白い話をするのも得意ではありません。それに、人から話題を振られても一言の返事で終わっているようで……」 、「周りへの気配りは大切だと思い、活動後の掃除や後片付けは積極的に行っています」。

3.自己開示ができないと知り合いができず、親密へと発展しない
私が彼の話を聞いて感じたのは、まず自己開示ができていないということです。
人は自分の情報を発信しないと、なかなか人間関係は深まりません。
また、話題を振られても一言で終わらせてしまうのも問題でしょう。
せっかく気を遣って話題を振ってくれても、一言で終わると、話題を振った人もがっかりしてしまいます。これは相手を受け入れることができていない、という側面もあります。
また、気配りを後片付けのような裏方の仕事で発揮していると思っていることも問題です。
裏方の仕事も大切ですが、サークルのような場では、そこに一緒に過ごす人に気を遣うことが、第一の気配りなのです。

したがって、智彦さんはサークルに入って顔見知りにはなれたと思いますが、まだメンバーとして輪の中に入れておらず、雑談ができる「知り合い」もいない状態です。
知り合いにもなれない間柄では、そこから彼が求める友達関係へと発展するのは難しいでしょう。
智彦さんはまず、サークル内で自己開示と雑談を行いながら、まずは知り合いを作ることから始める必要があるのです。人間関係は挨拶に始まり、雑談、その後気が合えばさらに関係を深めていきます。
では、知り合いから、彼の求める親密な友達関係に発展するにはどのような要素が必要なのでしょうか。
健全な人間関係を築き、親密さを獲得するために大切な基準を、ジャネット・G・ウォイテッツ著、『アダルト・チルドレン アルコール問題家族で育った子供たち』、(金剛出版刊)よりご紹介します。

4.親密さを獲得するための基準
・許容
自分は防御の壁をどこまで下げられるか。相手がこちらの感情に影響を与えてくるのをどこまで許せるか。
・理解
自分は相手を理解しているか。相手の言動の意味を把握しているか。
・共感
自分はどこまで相手と同じ気持ちになれるか。
・同情
自分は相手が心配している問題について純粋に心配することができるか。
・尊敬
自分は相手を価値ある存在として扱っているか。
・信頼
自分は誰にでも打ち明けるわけにはいかない事柄に、相手がどこまで接近してくるのを許せるか。
・受容
自分は自分のままでよいか。相手は相手のままでよいか。
・誠実
この関係は真実の上に成り立っているか。なんらかの欺瞞や下心はないか。
・意志の疎通
自分たちはお互いにとって重要な事柄を率直に話し合うことができるか。お互いを理解し、関係を前進させるためのコミュニケ-ションの仕方を知っているか。
・一致
自分と相手はどの程度まで好き嫌いが一致しているか。二人の感じ方や信条に違いがあった場合、それはどの程度問題になるか。
・個の確立
自分は相手に尽くしながらもどこまで自分自身を維持出来るか。
・配慮
自分は自分の欲求だけでなく相手の欲求も心に留めているか。

5.親密な友達とは生涯において数名かもしれない
ここまで書いて、私自身を振り返って思ったことがあります。
私には知り合い(浅い付き合いの人)がほとんどいません。
それは、私自身が深い付き合いを求めている一方で、その場を過ごす浅い付き合いは苦手だからです。
では、知り合いがいなければ親密な友達がいないかというと、そうでもないようです。
実際に知り合いが多い人も私の周りにいるのですが、その人でも本当にお互いが理解し合っている親密な友達は、数人だそうです。
知り合いは多い方が良いのかどうかを議論するつもりはありませんが、親密な友達とは、生涯をかけてもそんなに多く得られるものではないのかもしれませんね。
あなたは親密な関係性に何を求めますか?