ひきこもりは「甘え」ではない。ひきこもり、その心理と回復への道
近年、「ひきこもり」は単なる個人の問題としてではなく、社会全体で向き合うべき課題として認識されるようになりました。
ひきこもりとは、社会とのつながりを一時的に断ち、自分にとって安全な場所(自宅や自室)に身を置くことを意味します。
これは、決して「甘え」ではなく、心が限界を迎えた時に自分自身を守るための選択であり、時には必要不可欠な「自己防衛」の手段なのです。
ひきこもるとは甘えではなく自身を守る手段である
Index
1.社会から身を引く「ひきこもり」の心理と理由
2.ひきこもりの背景にあるもの:社会問題と親子関係
3.ひきこもるとは甘えなのか
4.ひきこもりからの回復と社会復帰に向けて

1.社会から身を引く「ひきこもり」の心理と理由
なぜ人は社会から身を引くことを選ぶのでしょうか?(本稿では、18歳未満の不登校ではなく、それ以上の年齢の方のひきこもりを対象として書かせて頂きます)。
その根底には、「所属する社会空間に、心が安定する安全な居場所がない」という切実な思いがあります。
具体的に言うと、今の自分の居場所が、心身ともに安心して過ごせる場所ではないと感じている状態です。
むしろ、心が傷つき、精神的に消耗してしまう場所だと認識していると言い換えることもできます。
人は心が深く傷つき、これ以上は耐えられないと感じた時、自ら社会から距離を置き、ひきこもることを選択せざるを得なくなるのです。
「それは単なる甘えではないのか?」という意見を耳にすることもあるかもしれません。しかし、ひきこもりは、自分自身の心と身体がこれ以上傷つくのを防ぐための行動です。ひきこもらなければ、心が壊れてしまう。そうなる前に、自らを護るために選んだ、苦渋の決断なのです。

2.ひきこもりの背景にあるもの:社会問題と親子関係
ひきこもりの背景には、社会そのものの問題が大きく影響しているケースが多々あります。
しかし、それだけでなく、幼少期の親子関係や過去の経験から、何らかの心のダメージを抱えている可能性も考慮する必要があります。そして、その幼少期の心の傷が、社会に出てから表面化し、ひきこもりへと繋がることも少なくありません。
子供の頃からの心のダメージや傷は、社会におけるストレス耐性の低さを引き起こし、社会への適応を困難にすることがあります。
社会に適応できず、傷つき、最終的にひきこもりという形を選ぶことになりますが、それは単なるきっかけに過ぎず、ひきこもりの本質的な問題は、生育歴の中で負った心の傷にある場合もあるのです。
日々の社会生活における仕事の重圧、人間関係の悩みなどから、さらに心が傷つき、やがて「もう限界だ」と感じた時、人はひきこもることを決断します。

したがって、ひきこもりとは、「これ以上は無理」という心の限界に対して、自分が生き抜くために必要な手段と言えるでしょう。
では、社会から退却して、どこにひきこもるのでしょうか。多くの場合、冒頭で述べたように、自宅や自室がその場所となります。
家にこもる: 自室だけでなく、リビングなど家全体で過ごし、家族との会話や交流がある状態です。
家族とのつながりがあることで、孤独感が多少和らぐことがあります。
部屋にひきこもる: 自室からほとんど出ず、家族との接触もほとんどない、完全に孤立した状態です。
誰とも会話をせず、孤独に苛まれるこの状態は、精神的により大きな負担となる傾向があります。

さて、自分が傷つくことから、社会からひきこもることを選択するのですが。
再度問いです。
ひきこもりは甘いのでしょうか?
ここで考えなければならないことは、ひきこもりを選択する際、ひきこもることが許される環境で生活をしているということです。
それは親が経済的基盤をしっかり持っているということです。

3.ひきこもるとは甘えなのか
ひきこもりが「甘え」であるかどうかを私が断定することはできません。
しかし、どうしようもない辛い状況に陥った際に、ひきこもりが許される家庭と、そうでない家庭があるのは事実です。
ひきこもりという選択は、一般的に収入が途絶えることを意味します(社会人の場合)。
そのため、経済的な基盤がある家庭でなければ、ひきこもることは難しいのが現実です。
ある学説によると、ひきこもり状態にある人の家庭は、世帯年収が平均以上であることが多いとされています。このような家庭では、子供への期待が強く、その期待に応えようと努力するあまり、子供自身の個性が育まれず、傷つきやすく、燃え尽きてしまう結果、ひきこもりへと繋がるという見方もあります。
この説の真偽は定かではありませんが、背景には様々な要因が絡み合っていることを示唆しています。

4.ひきこもりからの回復と社会復帰に向けて
もし、ひきこもることでしか自分を守れない状況に陥っても、それが許容されない環境であれば、その後どうなるのでしょうか?
おそらく、何らかの精神疾患を発症する可能性も否定できません。
ひきこもりという選択は、個々人の苦渋の決断であり、その選択そのものは尊重されるべきだと考えます。
しかし、社会との関係性が途絶えた状態からの回復、そして社会復帰には、他者の支援が不可欠です。NPOや行政のサポートはもとより、心理カウンセリングなど専門的な支援も有効な手段となります。
私たちは、ひきこもりを「甘え」と一括りにせず、その背景にある心理や要因を深く理解し、適切な支援へと繋げていくことが重要であると考えています。
尚、心理オフィスステラでは、ひきこもりの方のカウンセリングは受け賜わっておりません。
ご了承ください。