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怒りの感情の複雑さ:悲しみから怒りへ

二次的感情から生じる怒りの理解の複雑さ

Index
1.怒りは「二次的な感情」であることが多い
2.怒りのエネルギーが覆い隠す「本当の感情」
3.怒りの前に潜む「衝撃」と「恐怖」
4.怒りをコントロールし、自己理解を深めるために

1.怒りは「二次的な感情」であることが多い

怒り」という感情は、一体どのような性質を持っているのでしょうか。

それは、喜怒哀楽のように直接的に湧き上がる「一次的な感情」なのでしょうか?
それとも、何か別の感情に続いて生じる「二次的な感情」なのでしょうか?

例えば、嬉しいニュースを聞いて、瞬時に「喜び」を感じる。これは、直接的な刺激に反応して生じる一次的な感情の典型です。

一方で、怒りの感情は、多くの場合において二次的な感情としての側面を強く持ちます。

もちろん、満員電車で足を踏まれて即座に怒りを感じるような、一時的な怒りもあります。

二次的な感情とは、多くの場合、何らかの先行する感情(一次的な感情)が存在し、その後に派生してくる感情を指します。怒りの感情は、この先行感情が引き金となって現れることが非常に多いのです。

2.怒りのエネルギーが覆い隠す「本当の感情」

私たちが怒りを感じる時、その怒りの前に体験していた先行感情、つまり一次的な感情を意識していない、あるいは忘れてしまっていることが少なくありません。

これは、怒りという感情が持つすさまじいエネルギーのためです。
その強大なエネルギーは、怒りの前に抱いていた他の感情を覆い隠し、私たちの意識から遠ざけてしまう力を持っています。

また、先行感情を抱いていた時間がごく短く、瞬時に怒りへと転化してしまった場合など、怒りを感じている本人でさえ、その前段階の感情を認識できないこともあります。

では、怒りの感情の先行感情(一次的な感情)とは、どのようなものが多いのでしょうか。

その多くは、悲しみ、不安、心配、恐怖、失望、屈辱といったネガティブな感情です。
私たちは、これらの感情を十分に感じ切る間もなく、怒りへと転化させてしまう傾向があります。

例えば、恋愛において、パートナーからの連絡が途絶えたとしましょう。

最初は、相手を心配したり、漠然とした不安を感じたり、連絡がないことに悲しみを感じたりするかもしれません。
しかし、その状態が続くと、やがて「なぜ、これほどまでに心配しなければならないのだ」、「どうして私をこんなに悲しませるのか」と、相手の無頓着な行動に対する怒りの感情へと転化していくことがあります。

この場合、心配や不安、悲しみの感情を味わっていた時間は長かったとしても、怒りの感情は、それらの一次的な感情を忘れさせ、相手への怒りとして爆発してしまうのです。

これは、自分が感じた心配や悲しみといった感情に対して、相手に「責任」を求め、心のバランスを取ろうとする働きが、怒りという形で強く表れていると考えることもできます。

怒りは、自身の内なる苦痛に対する、ある種の防衛反応とも言えるでしょう。

3.怒りの前に潜む「衝撃」と「恐怖」

また、怒りの感情が生じる前には、外部からの「衝撃」が引き金となることもあります。
この衝撃も、多くは瞬間的な一次感情を伴います。

例えば、背後から突然「ワァッ!」と大声を出されたら、私たちは一瞬「びくり」と驚き、瞬間的に恐怖を感じるかもしれません。
そして、その恐怖に対する対抗心から、二次的な感情として怒りが生じ、相手に対して怒鳴り返してしまう、というような反応が起こることがあります。

この場合、「びっくりした」という驚きや恐怖の感情(一次的な感情)と、それに対する怒り(二次的な感情)が、ほとんど同時に結びついて生じています。
「びっくりした」、「怖い」という感情とのバランスを取るために、怒りが生じているのです。

4.怒りをコントロールし、自己理解を深めるために

怒りの感情は非常に強く、その取り扱いを誤ると、自分自身や他者を傷つけたり、人間関係を破壊したりするほどのエネルギーを伴います。
その怒りが爆発する前に、あるいは爆発した後でさえも、怒りの前にどのような一次的な感情を抱いていたのかを認識することが極めて重要です。

怒りで我を忘れ、感情に突き動かされてしまう前に、あるいはその最中に、「本当に自分が感じていた感情は何だったのだろうか?」、「この怒りの前に、自分は何の感情を感じ続けていたのだろうか?」と、自問してみてください。

怒りの前に存在した一次的な感情、先行感情を意識的に思い出すことで、不思議と心が和らぎ、怒りから解放されて冷静になれることがあります。

怒りの根本的な原因を冷静に知ることは、自己理解を深め、人間としての成長に繋がります。

そして、もしかしたら、一次感情を引き起こした他者を許し、受け入れることにも繋がるかもしれません。

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