対人援助職が陥りやすい「見えない落とし穴」とは?
対人援助職や支援員として、日々多くの相談者と向き合う中で、「良かれと思ってやったことが、かえって裏目に出てしまった…」と感じることはありませんか?
真摯に取り組んでいるからこそ陥りやすい、いくつかの心理的な罠と問題点についてお話しします。
対人支援職の相談者に陥る様々な心理と問題
Index
1.決めつけは「傲慢」という名のコミュニケーション不足
2.「見下し」はプロとしての未熟さを露呈する
3.「抱え込み」は誰のためにもならない
4.「寄り添いすぎ」は、ただの「空回り」

1.決めつけは「傲慢」という名のコミュニケーション不足
相談者と向き合う際、支援員の経験や知識から、無意識のうちに「この人はこういう人だろう」と決めつけてしまうことがあります。
しかし、それは多くの場合、相談者への理解不足から生まれるものです。
もちろん、面談時間が限られていたり、相談者が口数が少なかったりする場合、推測せざるを得ないこともあるでしょう。で
すが、そこには常に「これはあくまで仮説である」という謙虚な姿勢が不可欠です。
この決めつけがエスカレートすると、支援員は「自分はすべてを知っている」という傲慢な感覚に陥り、相談者の心や人権を深く傷つけてしまう恐れがあります。
一度植え付けられた誤解は、信頼関係を根底から揺るがし、修復不可能な溝を生むことにもなりかねません。
私たちは、単に知識を増やすだけでなく、常に「自分の判断に根拠はあるか?」と自問し、相談者との対話を通じて、真の理解を深める努力を怠らないことが大切です。

2.「見下し」はプロとしての未熟さを露呈する
人間同士、相性の良し悪しがあるのは当然です。
それは支援員と相談者の関係においても例外ではありません。
しかし、相性が悪いと感じたからといって、無意識のうちに相談者を見下したり、侮蔑感を抱いたりする態度は、専門職として最も避けるべきことです。
相談者は、あなたの言葉尻、表情、目の動き、そして声のトーンから、あなたの心の奥底にある感情を敏感に察知します。
見下されていると感じた相談者は、支援員に対して敵意や不信感を抱き、心を閉ざしてしまうでしょう。
相談者の内面世界を真に理解しようとせず、表面的な話を聞くだけでは、このような感情が芽生えやすくなります。
見下しや侮蔑感は、支援員自身の未熟さの表れに他なりません。
私たちは、どのような相談者に対しても、プロとして冷静かつ公平な態度で向き合う責任があります。

3.「抱え込み」は誰のためにもならない
自分の能力を超えたケースを、一人で抱え込んでしまう。これもまた、支援職が陥りがちな問題です。
「自分が対応しなければ、この相談者は困ってしまう」、「他の人に頼んだら、自分の評価が下がるのではないか…」
こうした心理から、無理な抱え込みに走ってしまうことがあります。
しかし、支援員の能力が追いつかない状況での面談は、相談者にとって無駄な時間となりかねません。
本当に相談者のためを思うのであれば、より適切な支援ができる専門家や、組織内の同僚に相談者を引き継ぐ勇気も必要です。
私たちは、誰のために、何のために支援しているのかを常に自問し、プロとして最適な判断を下す義務があります。

4.「寄り添いすぎ」は、ただの「空回り」
「相談者のために」と、良かれと思って先走りすぎたり、相談者のペースを無視して無理な支援を続けたりしていませんか?
支援員が相談者のやる気を引き出そうと奮闘するあまり、一人で空回りしてしまうことは少なくありません。
こうした努力は、しばしば報われず、自分自身のエネルギーを枯渇させる原因となります。
そして、期待に応えてくれない相談者に対し、勝手に失望感を抱いてしまうこともあるでしょう。
支援員は、相談者にとっての「伴奏者」であるべきです。
相談者のペースに合わせ、一歩引いて見守ることも、時には必要です。先走りすぎず、遅れもせず、同じ歩幅で歩むこと。
それが、相談者との信頼関係を築き、着実に目標へ向かうための大切な姿勢です。