AIに「寄り添い」を求める心、その裏にあるもの
なぜ私たちは、ChatGPTとの会話に安らぎを感じてしまうのか?
私たちは、誰かに自分のことをわかってほしい、共感してほしい、ただそばにいてほしい、そう願う生き物なのかもしれません。
今、多くの人が利用しているChatGPT。
そのAIに、まるで人間のように「寄り添ってほしい」と話しかける人が増えていると聞きます。
それを知ったとき、あなたはどのような気持ちになりますか?
「少し寂しいな」と感じる方もいれば、「それも一つのコミュニケーションだ」と考える方もいるでしょう。

私自身は、複雑な思いを抱きました。なぜなら、本来、誰かに共感し、寄り添うことは、人と人との間で育まれるものだと考えているからです。
しかし、もしAIに「寄り添い」を求めている人がいるとしたら、それは「現実に寄り添ってくれる相手がいない」という、深い寂しさや孤独を感じているからかもしれません。
Index
1.私たちの社会と、人間関係の「変化」
2.人間関係を通じて育まれる「共感力」
3.AIに頼ることで失うもの

1.私たちの社会と、人間関係の「変化」
今の社会では、誰もがスマホを手にし、SNSでつながることが当たり前になりました。
とても便利になった一方で、人と人との関係は、どこか希薄になったように感じませんか?
SNSでは、自分の好きなこと、主張したいことを、自分のタイミングで発信できます。
それはとても気楽で、心地よいものかもしれません。
しかし、自分の気持ちや考えを一方的に伝えることに慣れてしまうと、相手の気持ちを想像したり、配慮する能力が少しずつ弱まってしまうことがあります。
その結果、私たちは、誰かに自分の話を聞いてほしい、理解してほしい、自分を主張したいと願う反面、自分自身が相手に寄り添うことが難しくなっているのかもしれません。
そして、心にぽっかりと空いた寂しさや孤独を、AI、ChatGPTに埋めてもらおうとしているのかもしれません。

2.人間関係を通じて育まれる「共感力」
ここで、少し考えてみてほしいことがあります。
もしあなたがChatGPTに「寄り添ってもらうこと」に慣れてしまったら、現実の人間関係で、他者に寄り添うことができるでしょうか?
ChatGPTは、あなたに寄り添うような文章を生成するために、膨大なデータを学習しています。
それは、あくまで「寄り添うような言葉」をシミュレーションしているに過ぎません。
そこに感情や心が伴っているわけではありません。

私たち人間の「共感力」や「寄り添う力」は、体験を通して育まれるものです。
- 「今、この人は何を考えているんだろう?」
- 「どんな気持ちで、こんな言葉を言ったのかな?」
- 「自分は相手にどんな思いや感情を抱いているのだろう?」
こうした一つひとつの体験や経験から、私たちは思考力や想像力を高め、相手の心を理解しようと努力します。
そして、その積み重ねが、誰かに寄り添い、誰かに寄り添われる、温かい人間関係を築く力になるのです。

3.AIに頼ることで失うもの
ChatGPTは、私たちの孤独を一時的に癒してくれるかもしれません。
それは、ある意味で「優しさ」に見えるかもしれません。
しかし、それはもしかしたら、本当の「共感」や「つながり」を求める私たちにとって、幻想の世界へと引きずり込まれる危険性もはらんでいるのではないでしょうか。
AIに「寄り添い」を求めることが当たり前になったとき、私たちは、本当の他者への配慮や共感、寄り添う力を、少しずつ失ってしまうかもしれません。
そのような時代が到来した時、私たちの人間性の変化、人としての在り様は、どのようなものになっているのでしょうか?
一抹の不安を感じます。
