モデリングの大切さと危うさ

以前、ビジネス系心理学の講座で、自分が成功したければ、ビジネスで成功した人をモデリングしなさいと習ったことがあります。

モデリングとは他者を観察して、その言動等を真似、または、取り入れ、自己成長等図ろうとする考え方です。

私はこのモデリングに対しては、3つの思いがあります。
有効性、危険性、無効(そしてビジネスでの有効性のためには)です。

モデリングの有効性

幼い子供が親の真似をすること、言葉遣い、態度等を真似ることはよく知られています。
これは、親子の接する時間の長さ、他の子供と接する時間の短さの影響から、一時的に親の言葉遣い、態度、クセ等、真似をするのでしょう。

しかし、この時のモデリングは意外と将来を決定付ける場合もあります。

例えば、常に親が他者に対する優しい振る舞い、夫婦間の優しい交流、社会規範を守ろうとする態度を子供に見せている場合。

子供は親を見て育つと言われています。
いずれは、他の子、他者との交流により、親の真似はしなくなる傾向が高いと思いますが、その理由は、親のヘンな真似をしていたら、他の子、他者に笑われ、自分が恥をかく。
したがって、親の真似はしなくなるのです。

しかし、幼い時から、人としての良心的、良識的、模範的行為を見て育った子供は、その親の姿勢、態度を自己の内に取り込み、人として、模範的で人間性の高い人になる可能性は高いと思います。

私は性善説、性悪説は、今ひとつ分からないのですが、以前あるテレビ番組で、1つの人形と、2つのぬいぐるみを使った、幼児の心理実験が行われていました。

人形と友好的なぬいぐるみと、人形をいじめるぬいぐるみ。
各々、2つの人形とぬいぐるみのシーンを幼児に見せ、その後、現物のぬいぐるみを見せます。その後、幼児が人形な対して、友好的なぬいぐるみと、いじめるぬいぐるみ、どちらを選ぶかという心理実験です。

驚いたことに、皆、友好的な態度であったぬいぐるみを選んだのです。

これは、心理学者によると、幼児も人としての良心を、すでに持っているのではないか、という結論に至りました。

したがって、親が幼児、子供に対して、人として模範的、良心的な姿勢を常に示すということは、それを観察学習、モデリングをした子は、自己の内部に、親の良心的な態度をその心に取り入れ、人として、模範的な良心的な大人に成長する確率が高くなると考えられます。

しかし、ここに大きな問題が立ちはだかります。
学校。
画一的、訳の分からない義務教育、無目的集団です。

人として良心的、模範的な態度を身に付けた子供(ある意味早熟)が、小学校に入学。
その時、彼らは、どのような目に遭うでしょうか。
通う学校の質にもよりけりでしょうが、やはり、他の子と比べ、その早熟度から目立つ存在になるのではないでしょうか。

そうなると、他の子より目をつけられ、いじめられる存在になるかもしれません。

親の模範的な態度を学習し、良心的な子供がいじめられる存在になるとしたならば、教育現場は腐っている。(非難することは簡単ですが)。

でも、仮にいじめを受けたとしても、その子の人としての本質の一部である、良心は破壊されることはなく、心は傷つき成長するでしょうが、やがて社会人になった時、子供時のモデリング、親の模範的態度、心を受け継いだ(無意識レベルまで学習した)子は、その良心を持つゆえに、同じく良心を持つ、優しい人と巡り合い、子供時に受けた、心の傷も癒され、良心的で他者を思いやる、優しい人として活躍されていくのではないかと、希望的観測で書かせて頂きます。

この根拠は、人とは同波する者が集まる傾向があるところに拠ります。
これは、似た雰囲気を持つ人が、ひかれあう、集まるという、または、必然的に出会う、これら無意識の導き、シンクロニシティ論より考えています。

また、社会人になっても、仕事、業務の遂行においては、良き先輩、上司の言葉遣い、態度を真似、1人前の会社員、組織人として成長していくことは、皆さんにも経験があることではないでしょうか。

良きモデリング、観察学習、それを意識的に取り入れ、無意識に落とし込むことは、人生に有効に機能します。

モデリングの危険性

さて、モデリング、観察学習から得た結果の悪用の問題について、少し書きましょう。

それは、詐欺師が善良な人間のモデリングより、善良な振りをして近づき、人を騙す場合です。

親切な人の観察学習、モデリングより、最初から騙すことを目的として、上辺の善良さを演じ、人に近づき、そのことを実行出来する人もいます。

これを見破る方法は、私には分かりません。

ただ、一言書くことを許して頂けるとするならば、あまりにも、いきなり親切を装い、近づき過ぎる人には、用心をした方がいいかもしれません。

無効なモデリング そしてビジネスでの有効性の為には

無効なモデリング、意味のないモデリングについて書きます。

冒頭のビジネス系の心理学講座において、「自分が成功したい人の真似をせよ」。
言葉遣い、態度、仕草、クセ等。

私はこのようなモデリングはまったく無意味と思っています。

なぜなら、そのビジネスにおいて成功した人は、その人の理想、努力、経験より、成功への道を辿られたのです。

したがって、その人の人生を理解することもなく、上辺の真似だけしたところで、何を得るのでしょうか。

真にモデリングをするのであれば、やはり、その人の理想、努力、経験を知り、その中で共感、納得出来るところは取り入れ、自己の実現したいことに全力で前進する。

所詮、ビジネスにおいて、成功者の上辺だけを完璧に真似をしたとしても、一瞬は、「この人、凄そう」と、人は思うかもしれません。

しかし、中身がなければ、化けの皮は、すぐにはがれるものです。
また、大したことない奴と、最初にグッときた気持ちの反動から、より、見下げられた評価を得てしまうでしょう。

モデリングの大切さは、その人の内面を知ったうえで、真似ること、それを無意識にまで、学習させることに、大きな意味と価値があるのではないでしょうか。