「心に悩みを抱える彼女を助けたい」:その本質的問題は?
心に問題を抱えている人に惹かれ、「助けたい」という強い思いを抱いて恋愛関係を築くケースがあります。これは男性にも女性にも見られる現象ですが、今回は特に、心の悩みを抱える女性を「助けたい」と願う男性の心理に焦点を当ててみたいと思います。
なぜ心に問題を抱えている彼女を選び助けたいのか
Index
1.なぜ心に問題を抱えている彼女を「助けたい」という思いが生まれるのか?
2.強引な「助け」が彼女を傷つけることも
3.「助けたい」は、誰のための「助け」なのか?

1.なぜ心に問題を抱えている彼女を「助けたい」という思いが生まれるのか?
苦しんでいる彼女を救いたいという気持ちは、一見すると純粋な愛情のように思えます。
しかし、なぜ彼は、特に心に深い悩みを持つ女性を選び、彼女を何とかしてあげたい、助けたいという衝動に駆られるのでしょうか?
健全な精神状態のパートナーを選ぶという選択肢もあるはずです。
あえて、少々厳しい視点でお話しすると、心の悩みを抱える異性を選ぶ背景には、時に無意識のうちに以下のような心理が潜んでいる場合があります。
a)自己価値の向上
彼女を助けること、彼女の困難を解決しようと奮闘することを通して、「自分は誰かの役に立っている」「自分には価値がある」といった自己肯定感を得ようとする心理です。
b)支配欲・コントロール欲
彼女の悩みを解消するプロセスに関わることで、相手を「導く」「支える」という名のもとに、関係性の中で優位に立ちたい、あるいは相手をコントロールしたいという無意識の欲求が働くことがあります。
しかし、心の問題は、最終的にはその問題を抱える本人自身が向き合い、解決に向けて動かなければ、真の解決には至りません。
あなたがどれだけ努力しても、彼女自身が「何とかしたい」と立ち上がらない限り、その奮闘は空回りする可能性が高いのです。
彼女が自らの悩みを認識し、それを解決するために自発的に行動を起こす。
この一連のプロセスがあって初めて、心の問題は解決へと向かいます。
もちろん、彼女の自主性を尊重する上でのあなたのサポートは、非常に有効なものとなるでしょう。

2.強引な「助け」が彼女を傷つけることも
長年悩みを抱えている人の中には、解決への一歩を踏み出す勇気が出なかったり、心の準備ができていなかったりする方も多くいらっしゃいます。
もし、あなたがそのことを理解せず、彼女の意志を尊重せずに、良かれと思って彼女を強引にあちこちの病院やカウンセリングに連れ回すようなことがあれば、それは彼女の心を深く傷つける行為になりかねません。
なぜなら、彼女はまだ、心を開いて誰かに話す準備ができていない、あるいは「もう少し待ってほしい」と感じているかもしれないからです。
そのような状態で強制的に連れて行かれた場所で、たとえ専門家がいたとしても、彼女自身が心を開かなければ、建設的な対話は生まれません。
結果として、彼女は「拒絶された」、「理解されなかった」という経験を抱き、心身ともに疲弊してしまうだけです。

3.「助けたい」は、誰のための「助け」なのか?
それでも「彼女を助けたい」というあなたの思いは尽きないかもしれません。
しかし、その根底にあるのは、本当に「彼女によくなってほしい」という純粋な願いだけでしょうか?
もしかしたら、「自分が彼女を治してあげよう、良くしてあげよう」という、自己満足や自己の価値を高めたいという無意識の欲求、さらには厳しい言い方かもしれませんが、傲慢さに基づいた行動になっている可能性はないでしょうか。
そして、あなたの思いが届かないことに苛立ち、ついには「自分がここまで彼女のために尽くしているのに、なぜあなたは変わらないんだ」と、彼女を責めてしまうかもしれません。
しかし、考えてみてください。あなたは彼女の同意を得ずに、彼女を振り回しているだけなのではないでしょうか。
「彼女のため」という名目であっても、その動機が無意識の自己満足や、彼女を支配・コントロールしたいという欲求に基づくものであれば、結局のところ、あなたの一連の行動は何も生み出さず、単なる自己中心的な振る舞いに終わってしまいます。
そして、期待通りの結果が得られないことに、あなたは無力感や怒りを感じ、最終的に彼女を見放してしまうかもしれません。しかし、あれほど「彼女のことを思っている」と語っていたあなたが彼女を見放すとしたら、それは「自分勝手」以外の何物でもありません。
心の問題を抱える女性を「何とかしてあげたい」という強い思いがあるのなら、一度立ち止まって、「これは、果たして自分の問題ではないのか?」と自問自答してみることをお勧めします。
今回の例は恋愛関係をテーマにしましたが、心の準備ができていない方を半強制的にカウンセリングに連れてこられるケースは、恋愛に限らず、夫婦、親子、友人関係など、様々な場面で見られます。
もちろん、夫婦間や親子関係、友人関係においては、自己価値や支配欲といった動機だけでなく、純粋な心配や愛情からくる行動であることも多々あります。
しかし、どんな関係性であれ、話したくない人に無理やり話をさせるのは、非常に酷なことです。
「口を割らせる」という言葉がありますが、それは尋問であり、カウンセリングではありません。
心理オフィス ステラでは、ご本人の明確な「変わりたい」、「話したい」という意思に基づくカウンセリングを大切にしております。
強制された状況でのカウンセリングは、効果を期待しにくいばかりか、ご本人をさらに傷つけてしまう可能性もございます。
そのため、カウンセリングのご予約は、悩みを抱えておられるご本人様からのご依頼をお願いしており、第三者の方からのカウンセリングのご依頼はお受けしておりません。