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親を支配する子供:その激しい執着は「親子共倒れ」の危険性

アダルトチルドレンという言葉をご存じでしょうか。

機能不全家族で育ち、親に支配されることで、本来の自分らしい人生を生きられなかった人々を指します。

無条件の愛情を受けられなかった、言いたいことを言えなかった、過度な期待を押し付けられた、身体的・精神的な暴力を受けた、こうした過去の影響が、大人になった今も生きづらさとして続いているのです。

これらは、多くの場合、親が子供を支配し続けた結果として生じます。
さて、子供を支配する親がアダルトチルドレンを考える上で大きなテーマとなる一方で、今回の本題は「親を支配する子供」とは何を意味するのか、という点です。

一般的に、「子供が親を支配する」と聞くと、家庭内暴力などで子供が親に乱暴を働くイメージを持つ方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、今回のテーマはそうした暴力ではなく、親に対する強い「執着」から生じる支配について深く掘り下げていきたいと思います。

目次

子供の親の支配と心理の問題について

Index
1.親に執着し、結果として親を支配してしまう子供たち
2.強すぎる親への執着が招く「親子共倒れ」の危険性

1.親に執着し、結果として親を支配してしまう子供たち

私たちは誰もが、子供の頃に親から愛され、認められたいという強い欲求を持っています。
そして、この根源的な欲求が満たされないと、様々な心の傷を負ってしまうことがあります。
多くの子供たちは、これらの心の傷を抱えたまま成長していきます。

大人になるにつれて、親から認められることを諦め、自分の人生を歩み始める人も少なくありません。

しかし、大人になってもなお、親を強く意識し、「認められたい」、「愛されたい」という思いを持ち続ける人も多くいます。

そして、この「親に認められたい」、「愛されたい」という気持ちが強ければ強いほど、親に対する強い執着が生まれてしまうのです。

この執着が表れる典型的な流れは、次のようなケースでよく見られます。

A. 今までの辛さを親に訴える
B. 親に謝罪を求める
C. その後も、親に対する執着を手放せない(ここに問題の本質があります)

過去の辛さを親に訴え、たとえ親が謝罪したとしても、根深い「親に認められなかった」という心の傷は簡単には埋まりません。

その結果、執着を手放すことができず、かえってそれが親への支配へと繋がっていくのです。

この「支配」とは、多くの場合、「親が自分のすべてを受け入れるべきだ」という一方的な要求となって現れます。

具体的に言えば、「自分を絶対に否定しないでほしい」という強い願望です。

しかし、この「否定されたくない」という思いが強すぎるあまり、親が少しでも自分の意図と異なる意見を言ったり、わずかでも否定的なニュアンスを感じ取ったりすると、「以前謝ったのは何のためだ」、「もう一度謝れ」、「何も分かっていない」などと、怒りによって親を支配しようとするのです。

このような状態に陥ると、親も子供に対して、自分の考えや感情を自由に表現できなくなります。
そして、親を支配する側の子供は気づいていないかもしれませんが、この行動には過去への復讐の意図が隠されているように感じられることもあります。

2.強すぎる親への執着が招く「親子共倒れ」の危険性

さて、親を支配するまでに成長した子供。
彼らの行動に「正当性」はあるのでしょうか?

カウンセラーは人を裁く立場ではありませんので、安易に正当性を語ることはしません。
しかし、度を超えた親への執着は、確実に親を深く苦しめます。

親に認められたい、愛されたいという気持ちは理解できますが、一人の大人として、そこまで親に執着し続けることで、一体何が得られるのでしょうか?

実は、そこから得るものは何もありません。むしろ、最終的には親子共倒れという悲しい結果を招くことになりかねないのです。

親は子供に支配され、過剰に気を遣い、抑圧と不自由を感じてしまいます。
一方、親を支配する子供自身も、親の一言一句に過敏に反応し、少しでも否定的なニュアンスを感じ取れば過剰に責め立てます。

そして、そうする自分に嫌気がさし、自己嫌悪に陥ってしまうこともあります。

親を支配している子供は、常に親を意識しているという点で、やはり自分の人生を生きているとは言えない状態にあると感じざるを得ません。

そして、親を支配する子供自身も、実はこの親への強い執着そのものに苦しんでいる傾向があります。

本当は自分が親に執着し、苦しめていることを思考では理解しつつ、親に対する申し訳なさも感じているのです。

しかし、やはり「親に受け入れてもらえなかった」、「否定された」という過去の悲しみや怒りといった負の記憶と感情に圧倒され、執着を手放すことができないのです。

親を支配する子供は、本当は親を支配したくはないけれど、感情の暴発を止められず、結果として親を支配する言動に出てしまう。

この矛盾する思いと行動の中で苦しみ続けているという事実も忘れてはならないでしょう。

本当は、親を意識し、その否定的な側面に敏感になっているのは、親の問題というよりも、実は自分自身の問題であるということも、心の奥底では理解されているのかもしれません。

親への執着を手放し、自分の人生を歩むために

親を支配する子供の根底には、長年にわたる悲しみ、怒り、憎しみが複雑に絡み合った自己が存在しています。親への執着から解放される道は、決して平坦ではありません。
時間もかかるでしょう。

しかし、それでも自分の人生を豊かにするために、親への執着を手放す訓練をしていくしかないのです。

ここでは、そのための具体的なステップと心構えをいくつかご紹介します。

Index
1.執着している感情を認識し、受け入れる
2.親との境界線を引く
3.満たされなかった感情を自分で満たす努力をする
4.過去と向き合い、手放すワークに取り組む
5.自分の人生の主導権を取り戻す

1.執着している感情を認識し、受け入れる

まず、「親に認められたい」、「愛されたい」という満たされなかった感情、そしてそこから生まれた怒りや悲しみ、復讐心といった執着している感情そのものを、否定せずに認識し、受け入れることが第一歩です。

「こんな感情を持つ自分はダメだ」と責めるのではなく、「ああ、自分は今、こんな感情を抱いているんだな」と客観的に見つめることから始めましょう。

2.親との境界線を引く

物理的、心理的な境界線を引くことを意識してください。

a)連絡頻度を調整する:必要以上の頻繁な連絡は控え、心理的な距離を置く訓練をします。

b)会話の内容を制限する:感情的なやり取りになりがちな話題は避け、必要最低限の事務的な会話に留めることも検討します。

c)距離を置く時間を作る:物理的に会う頻度を減らすことも、心の平穏を保つために有効な場合があります。

これは親を捨てることではありません。
自分を守り、関係性を健全にするための大切なステップです。

3.満たされなかった感情を自分で満たす努力をする

親から得られなかった愛情や承認は、もう親からは得られないと受け入れましょう。
そして、その感情を自分で満たす努力を始めます。

a)自分を褒める習慣をつける:小さなことでも良いので、自分で自分を認め、褒めてあげましょう。

b)趣味や打ち込めることを見つける:自分の好きなことに没頭する時間を作り、自己肯定感を高めます。

c)信頼できる友人やコミュニティを見つける:親以外の人との健全な関係性を築くことで、承認欲求を満たす場所を増やします。

4.過去と向き合い、手放すワークに取り組む

過去の辛い経験をカウンセリングなどで安全な場所で語り、感情を吐き出すことは非常に重要です。

インナーチャイルドワークや、過去の自分を癒すイメージワークなども有効です。

過去の出来事や感情を整理し、「もうこの感情は必要ない」と意識的に手放していくプロセスを経験することで、心の鎖を解き放つことができます。

但し、このワークは親への怒りを強めることもあり、また、論理的に物事を考える人には、ワークの受講に対する慎重な検討が必要と認識しております。

5.自分の人生の主導権を取り戻す

親への執着を手放す最終的な目標は、自分の人生の主導権を自分自身が握ることです。

親の言動に一喜一憂するのではなく、自分がどうしたいのか、どう生きたいのかを基準に物事を決める練習をしましょう。
自分の選択に自信を持ち、自分の人生に責任を持つことこそが、真の自立への道です。

これは決して簡単な道のりではありません。
しかし、自分と真剣に向き合い、一歩ずつ進んでいくことで、必ず親への執着から解放され、より自由で豊かな人生を歩むことができるようになります。

もし一人で抱えきれないと感じたら、いつでも専門家を頼ってください。

あなたの人生を、あなたらしく生きるための一歩を、私たちカウンセラーは微力ではありますがサポートさせて頂きます。

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