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親のせいで負う心の傷:親のために人前で恥をかくという経験

私たちは親から様々な心の傷を受けることがあります。
暴力、無視、過度な期待の押し付け、あるいは親からの依存など、その形は多岐にわたります。
そして、そうした心の傷の中には、「親のせいで、あるいは親のために恥をかいた(恥をかかされた)」という経験も含まれています。

では、親のせいで恥をかく、あるいは親のために恥をかくとは、具体的にどのような状況を指すのでしょうか。

目次

「親のせいで恥をかく」とはどういうことか?

「親のせいで恥をかく」という事態は、主に次の2つのパターンに分けられます。

a)第三者が親子の間の振る舞い(親の子への接し方)や親自身の行動・態度を見て、子どもが恥ずかしく感じるケース。

b)親からの押し付け(例えば、いつも同じ服装で学校に行くことなど)を第三者が見て、子どもが笑われたり、馬鹿にされたり、嫌な気持ちになったと感じて恥をかくケース。

これらの状況に共通するのは、親と子以外の「第三者」の存在が必要不可欠であるということです。
第三者の視線を意識することで、子どもは恥を感じるのです。

では、具体的にどのような状況で、親のせいで子どもが恥をかく事態が生じるのでしょうか。
次の4つの側面から見ていきましょう。

1.親の振る舞いから生じる恥

例えば、学校の親子参観日で子どもが間違った答えを言った時、その場で親が大声で子どもを叱りつけるような場面です。

他の生徒や保護者、先生たちの前で親に叱られることは、子どもにとって計り知れないショックと恥を伴います。
この時、親は子どもが間違えたことへの怒りで、感情のコントロールを失っているのかもしれません。あるいは、親自身が「子どもに恥をかかされた」と未熟な怒りを抱いている可能性もあります。

いずれにせよ、大勢の人がいる前で子どもを叱りつける行為は、周囲の視線を集め、子どもは「親によって自分は恥をかかされた」と感じるでしょう。
人前で叱るという行為は、大人でさえも屈辱を感じるものです。

職場でも、上司が部下を叱る際は、他の職員の前ではなく別室で行うのが一般的です。
その方が、叱られる側も他者の目を気にすることなく、注意に集中できるからです。

もちろん、子どもの場合はすぐに叱るべき場面もあるかもしれませんが、その際も子どもの恥や傷つきに十分配慮する必要があります。

また、高校の進路相談に両親揃って来るケースも考えられます。
進路相談は片親が参加することが多いため、両親が揃って来る姿は、前後に相談しているクラスメイトや担任の先生の目に留まり、「どうして自分の親はいつも、いつも付きまとうのか」と子どもに恥や絶望感を与えることがあります(これは筆者自身の経験でもあります)。

こうした親は、子どものことを思っているように見えても、実際には「自分の気持ち」、「自分の感情」「自分の価値観」を優先させています。

親がどのように振る舞うと子どもが傷つき、恥をかくか、という思いやりが欠けているのです。
高校の進路相談に両親揃って来ることが「美談」と捉えられることもあるかもしれません。確かに、両親が揃って子どもの進路を心配しているのでしょう。

しかし、その気持ちを抑えることができず、子どもの気持ちを考える思いやりが欠如している場合、そこにあるのは「自分が、自分が」という自分本位な感情なのです。

2.親の存在そのものから生じる恥

一日中家でアルコールを飲んでいる親がいるとします。
子どもはアルコール依存症の親を恥ずかしく思い、友達を家に呼ぶと恥をかくのではないかと恐れます。一方で、友達を家に呼ばなければ友情を失うかもしれません。
これは、アルコール依存症の親を持った子どもの悲劇です。

また、家を片付けない親の場合も同様です。子どもは友達を家に呼ぶと、散らかった光景を見られてしまうのではないかと心配し、実際に呼べば恥をかいてしまいます。

このように、親の存在そのものが恥となり、その恥が慢性的に続くことがあります。
そして、そのような恥と一緒に暮らすことは大変な苦痛です。
しかし、子どもは親を選ぶことはできません。

3.親による振る舞いの強制から生じる恥

ここまでの例は、親子の関係に第三者が関わって生じる恥についてでしたが、ここからは親が直接的に関わらないように見えても、親の価値観の押し付けなどによって子どもが周囲から笑われたり、親のせいで恥をかくケースについて見ていきます。

a)親の価値観の押し付け

例えば、学校に行く時にいつも同じ服を着せられる子どもがいます(経済的理由もあるかもしれませんが、子どもにとっては同じ服で登校し、周囲から笑われる現実に変わりはありません)。

遠足のお弁当がいつも菓子パンだったり、昼休みのお弁当のおかずがいつも卵焼きだったりするケースも同様です。これは、親が子どものために何もしてやらないという「存在の恥」も含むかもしれませんが、同時に子どもに対する親の価値観の押し付けでもあると考えられます。

私事ですが、小学生の時にバザーがあり、生徒一人ひとりが展示品を持ってくるように言われました。私の母は手作りの品物を持っていくようにと私に渡しましたが、私はその手作りの品を持っていくのが嫌でした。

そのような手作りの品を持ってくる生徒はいないと思っていたからです。
案の定、私が持っていったものを見て周囲は笑いました。
皆、何か市販されている物を持ってきたのでした。

大人の私たちからすれば、バザーに出す品物は手作りでも良いのでは、と思うかもしれません。
しかし、子どもにとっては違うのです。
子どもには子どもの世界、価値観、ルールがあります。

親はその価値観やルールを知り、考慮すべきであり、子どもの言い分も聞くべきなのです。
大人の価値観が子どもの世界では通用しないことがあると知るべきです。

b)親の期待の押し付け

親が子どもを将来プロ野球選手にしたくて、無理やり野球のリトルリーグに入れたとします。
しかし、子どもは運動が得意ではありません。
打っては三振、守ってはエラー、下級生にレギュラーの座を奪われ、万年補欠。

そして、下級生からも馬鹿にされています。これは、親が子どもの人生に勝手な期待を抱き、したくもない野球を強制することで、親の強制のために子どもが恥をかいている状況です。

4.親からの罰によって生じる恥

親が子どもの意に沿わないと罰を与える行動から恥をかく場合もあります。
親が子どもに罰を与える行動としては、叱る、叩く、食事を与えないなど、親子間だけで完結するケースもありますが、中には子どもの髪の毛を短く刈り取る(子どもは学校で恥をかきます)、点数の悪いテストを電柱に貼り付ける(当然周囲の注目を浴びます)、近所に言いふらすなど、子どもにとっては屈辱感と恥以外何も残らないような行為もあります。

また、親からの罰によるマイナス効果以上に、子どもは周囲の目を気にしておどおどしたり、「自分がどう見られているのだろう」と他者の視線を意識するようになります。
これは子どもの心の成長にとって、マイナス面しかありません。

子供に恥をかかせる親はモンスターかもしれない

大人の私たちでも、何かをして失敗すれば多かれ少なかれ恥ずかしさを感じます。
そのため、恥をかかないように、屈辱を避けるために努力することができます。
しかし、親の行為や存在からくる恥は、子どもには防ぎようがないのです。

近年、「モンスターペアレント」という言葉が使われるようになりました。
この言葉は、近所や学校、病院などで、自分たち親の権利ばかりを主張し、周囲のことが考えられない迷惑な親を指すことが多いようです。

しかし、アダルトチルドレンにとって、意味合いは違えど、親は「モンスター」と化すことがあるのです。

この「モンスター」は防ぎようもなく子どもを蹂躙します。
蹂躙されるだけでなく、その結果、第三者や他者に笑われるという恥と屈辱を味わってしまうのです。

防ぎようもない恥と屈辱感に襲われる子どもたちは、それを受け入れて耐えるしかなく、感情を抑圧していきます。
また、わけも分からない恥によって、「自分は恥ずかしい人間だ」と思い込んでしまうかもしれません。

いずれにせよ、親が子どもに恥をかかせるような行為は、決してあってはならないことなのです。

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