過保護に育った子どもが直面する「社会の壁」:挫折経験とその理由
「過保護に育てられた子どもは、社会に出てから挫折しやすい」という話を耳にしたことはありませんか?
では、そもそも「過保護」とは一体どのような状態を指すのでしょうか。
過保護の子の挫折とその理由
Index
1.「過保護」がもたらす子どもの内面
2.「過保護の子」が社会で直面する現実
3.「過干渉」と「過保護」の狭間で

1.「過保護」がもたらす子どもの内面
過保護とは、親が子どものすべきことまで先回りして行い、自立を妨げる子育てのあり方です。具体的には、以下のような特徴が挙げられます。
a)子どもを叱らない
子どもがどんな言動をしても怒らず、社会のルールや規範を教えようとしない。
b)何でも親が先回りして準備する
子どもが経験すべき失敗や試行錯誤の機会を奪い、全て親が整えてしまう。
c)子どもの要求を全て叶える
子どもの望みを無条件に受け入れ、我慢や努力の機会を与えない。

このような環境で育った子どもは、「自己努力」や「我慢」の必要性を知りません。
目標を掲げて挑戦したり、行動したりする機会も少ないため、「挫折」を経験すること自体がないのです。
また、親が全てを代行してしまうため、子どもは自分で何かを成し遂げる「成功体験」を積むことができません。
これにより、自分への自信が育ちにくくなります。
一方で、常に親に甘やかされ、注目されることで、まるで自分が「お山の大将」であるかのような錯覚に陥ることもあります。
根拠のない万能感を抱き、「自分は何もしなくても、親が何とかしてくれる」という誤った認識を持つようになるのです。
その結果、自分自身にどのような能力があるのか、何が得意で何が苦手なのかさえ分からないまま成長することになりかねません。

2.「過保護の子」が社会で直面する現実
過保護な環境で育った子どもが、初めて社会(幼稚園や小学校も含む)に出た時、厳しい現実に直面します。
a)「何もできない自分」への衝撃
これまで親が全てやってくれていたため、自分で物事を解決する能力が乏しいことに気づきます。
b)周囲からの「無関心」への戸惑い
家庭では常に注目されていましたが、社会では誰も自分を特別視しないことに愕然とします。
c)他者からの「批判」への耐性のなさ
親に叱られた経験がないため、他者からのちょっとした注意や批判にも過剰に苦しみ、深く傷つきます。
こうした経験から、「自分は何もできない」、「無視されている」、「疎外されている」といった感覚を必要以上に味わい、大きな挫折感を抱くことになります。

これが不登校や引きこもりへとつながるケースも少なくありません。
また、社会への不適応から、組織の中で長く勤務することが難しいといった問題に発展することもあります。
まさに、家庭という「小山」では「大将」として君臨できた子どもが、社会という広大な「大山」を登りきることができずに立ちすくんでしまうようなものです。
子どもの頃から、適切な「教育」と「しつけ」を受け、自分でできることは自分で行い、「自立心」と「忍耐力」を培うことの重要性を痛感させられます

3.「過干渉」と「過保護」の狭間で
過保護と対極にある子育てに「過干渉」があります。
過干渉とは、子どもの行動や考えに親が介入しすぎ、子どもの意思や自主性を尊重しない子育てです。
過干渉な親に育てられた子どもは、社会に出る前にすでに家族の中で「挫折」を経験していることが多く、過保護とはまた異なる種類の挫折感を味わい、やはり社会不適応を招くことがあります。
過保護と過干渉は対極に位置しますが、どちらも「やりすぎ」は健全な子どもの成長を阻害します。
私自身の話をすると、私の父は過保護、母は過干渉という、それぞれが真逆の子育て方針でした。
経済的には何の苦労もありませんでしたが、心理的には大きな葛藤を抱えました。
親が同じ事柄に対して全く異なる意見を言うため、何を基準に判断し、行動すれば良いのか分からず、自己を抑圧し、殻に閉じこもってしまったのです。
ある意味で「心理的な引きこもり」状態でした。

「親業」は本当に難しいものだと痛感します。
だからこそ、ご自身の幼少期や親との関係を振り返り、良かったことや嫌だったことを思い出し、「理想の親像」を具体的に描くことが大切なのではないでしょうか。
ちなみに、私の父が過保護だったのは、彼の父親が飲んだくれで家庭を破綻させた経験から来ています。
父は、「自分の子どもには苦労をかけたくない」、「子どもを甘やかすことが良いことだ」と考え、それが過度な過保護へとつながったのだと思います。
しかし、親も初めての経験であり、常に理想通りに子育てを進めるのは至難の業です。
本来であれば、両親が揃って子育てについて話し合い、常に子どもの様子や言動に目を配り、「大丈夫かな?」という客観的で温かい視点を持つことが理想です。