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契約に基づく親子関係|親の支配により子供を守る契約

親は、子供に対して「こう育ってほしい」「こんな大人になってほしい」と、つい理想や期待を抱いてしまうものです。
親の立場からすれば、それはごく自然な感情かもしれません。
子供に理想や期待を持つこと自体は、決して悪いことではないと私は考えます。

子供は生き延びるため、親との支配関係を無意識に受け入れる

しかし、問題はその理想や期待を子供に押し付けることです。

私が「契約に基づく親子関係」と名付けたのは、まさにこの点にあります。
親が子供に何らかの期待を抱き、その期待に沿わない行動を許さない場合、親は子供を従わせるために、時に信じられないような手段を取ることがあります。

罵声、怒鳴る、叩く、食事を与えない、世話をしない。
これらは子供の人間としての尊厳を奪い、親の期待に無理やり合わせようとする強制です。

このような親を目の前にした子供は、ただ生き延びるため、身の安全のため、親の期待に沿った行動を取るしかありません。子供は「自分が生きるためには、親の言うことを聞くしかない」と無意識のうちに理解します。

一方で親は、「自分の期待を満たし、言う通りにするなら子供の面倒を見る」と考えます。

これこそが、両者の間に暗黙のうちに結ばれる「契約」であり、私が考える「契約に基づく親子関係」なのです。

Index
1.恐怖による支配が奪う子供の人生
2.契約の破棄と、その先にある現実
3.「自己を再構築する」という代償
4.契約破棄が親にもたらすもの

1.恐怖による支配が奪う子供の人生

この「契約に基づく親子関係」は、突き詰めれば親が子供を恐怖で支配する関係に他なりません。
親は子供に、自分の理想や期待に沿うことを要求し、その期待に沿っている限りは育てる(面倒を見る)とします。

しかし、一度でも理想や期待に沿わない行動を取れば、罰を与え、再び従わせようとします。

この関係の中で、子供の主体性や自発性は奪われ、子供の人生は親によってコントロールされたものになってしまいます。
もちろん、子供自身が親の期待に背いてでも自分を主張できる強さを持っていれば良いのですが、現実には力関係の問題から、多くの子供は親の期待に沿った人生を歩む可能性が高いでしょう。

親の理想を叶えるための子育ては、一見すると子供が親に従順であれば、親は子供に満足し、子供も契約上、親に守られ、安定した安全な道を歩むことにつながるように見えます。
しかし、これは大きな誤解です。

子供にとっての「安心」「安全」とは、親の期待に応え続けることによって得られる一時的なものであり、本当の意味での大切な経験を失ってしまうのです。

それは、自分で自分のやりたいことを見つけること、自分で自分の人生を決定すること、自主性、主体性、積極性、そして決定と責任といった、人間が成長するために不可欠な経験です。

これらの経験ができないまま大人になってしまう可能性が高いのです。

2.契約の破棄と、その先にある現実

もちろん、人生は社会人になってからも続きます。
この親子の「契約」を破棄することは可能です。
契約に基づかない親子関係を築くこともできます。

具体的には、一人暮らしを始め、親の期待に応えるために入った企業や組織を辞め、自分が本当に求める人生を具体化できる道を選ぶこと。
それは、親の理想や期待との決別を意味します。

しかし、私はこう考えます。

親元を離れて一人暮らしを始めることはできるでしょう。
ですが、これまで親との契約に基づき、それに従うことで安心と安定を維持してきた人が、いきなり一人暮らしを始め、「さあ、自分の人生を生きよう!」、「転職や起業も視野に入れ、自分の望む人生を送ろう!」、「自由に生きよう!」と、果たしてスムーズに進むでしょうか?

自由に生きるためには、自主性、主体性、積極性、コミュニケーション力、意思決定力、そして責任を取る力が必要です。

これらの能力がなければ、自己決定に基づき自由に暮らすことは困難です。
なぜなら、「自由に暮らす」とは、決定と責任の連続であり、これまでのように親子の契約は存在せず、親はもう守ってはくれません。
全てが自己責任の生活だからです。

これまで親の「契約」の範囲内で生きてきた子供が、いきなり自分のことは自分で責任を取る人生を送れるでしょうか。

それは、これまで経験してこなかった人生であり、生活なのです。
契約に基づく親子関係から得られる最大のメリットは、親の理想を満たす「契約」を守り、親の支配下にいる限り、親によって安全と安心が守られていたことでした。

3.「自己を再構築する」という代償

しかし、親子間の「契約」を破棄し、一人暮らし、そして自分の人生を歩む一歩を踏み出した瞬間、自分自身の身と人生の安心・安全を守ってくれるものはなくなります。
初めて経験することも多く、漠然とした不安が先行し、生きることに対して困難を感じることもあるのではないでしょうか。

心理学では、これを「自分を構築しなおす」、「自分で自分を育てる」と表現します。

悔しいことに、親の期待に応え続けることを自分に課されてきた子供、つまり「契約に基づく親子関係」において生きてきた子供は、成長してから、これまで経験してこなかった生き方の代償を払わざるを得ないのです。

これは、あまりにも理不尽な現実かもしれません。

(ここまで、一人暮らしと自分の人生を歩むことをセットで書いてきましたが、それは、親元にいては自分の人生を歩むことができないと考えたからです。子供が自分で自分の人生を歩もうと動き始めた時、親と一緒に暮らしていては、必ず親の干渉という邪魔が入り、自分の人生を歩む上での阻害要因となるでしょう。)

4.契約破棄が親にもたらすもの

さて、「契約に基づく親子関係」について書いてきましたが、子供がこの「契約」を破棄した時、親の心中はどのようなものでしょうか?

親は、子供が自分の理想を満たさないことに逆上するかもしれません。
あるいは、絶縁宣言をするかもしれません。
そして、さらには、親自身が心を病んでしまう可能性もあります。

なぜ「契約」を破棄された親が心を病むのか。
その理由は、親が自分の理想を叶えるために子供に執着していたからです。
その執着する対象に背を向けられ、生きる希望を失ってしまう。

また、親は「自分の理想を満たすことこそ、子供にとって最善の人生である」と信じていたため、今後の子供の人生に不安を感じ、その連鎖が自分自身を不安でいっぱいにして、心を病んでしまうのです。

「契約に基づく親子関係」と題しましたが、実のところは、親が子供に親自身を依存させていたのかもしれません。

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