心理カウンセリングの効果と即効性:安易な期待がもたらすものとは?
「一人では解決できない心の悩みがある」、「少しでも楽になりたい」そう願って心理カウンセリングを検討される方は少なくありません。
抱えている問題や心の悩みは人それぞれ異なり、これまでの人生経験、持って生まれた気質、現在の環境、社会を生きるスキルなど、多くの要因が複雑に絡み合っています。
特に、長年の経験から形成された性格の悩みとなると、その根深さは計り知れません。
では、たった1回のカウンセリングで、長年の悩みが劇的に改善したり、問題が完全に解決したりすることはあるのでしょうか?

心理カウンセリングは魔法のツールではありません
Index
1.心理カウンセリングの効果と費用対効果の疑問
2.心理カウンセリングは「サポート」であり、即効性は期待しすぎないこと
3.心理カウンセリングが「即効性」を発揮する場合とは?
4.心理カウンセリングとは心を相手にしているのではなく脳を相手にしている

1.心理カウンセリングの効果と費用対効果の疑問
心理カウンセリングの料金は決して安くありません。
そのため、「果たして費用に見合う効果があるのか?」、「本当に悩みが解決するのか?」といった疑問や不安から、カウンセリングを受けることをためらう方もいらっしゃるでしょう。
しかし、私は魔法使いではありませんし、心理カウンセリングも魔法のツールではありません。
これまでの臨床経験から、たった1回のカウンセリングで、長年の問題が根本的に解決することは極めて難しいと理解しています。
(これはあくまで私個人の経験に基づいた見解であり、他のカウンセラーの実情とは異なる場合があります。)

2.心理カウンセリングは「サポート」であり、即効性は期待しすぎないこと
そもそも、カウンセリングは「病気が治る・治らない」といった単純な視点で語られるべきものではありません。
最も大切なのは、カウンセリングで得たアドバイスや、カウンセラーと共に話し合い、納得した結論をいかに実生活で実践するか、この一点に尽きます。
カウンセリングで学んだことを実践し、その結果として周囲の反応やご自身の心の変化を体感する。
その積み重ねによって、抱えていた心の問題が解決へと向かっていることをご自身で理解できるようになります。
1回のカウンセリングで問題が即座に解決することは、ほとんどないと考えてよいでしょう。

私自身も過去に複数の心理カウンセラーからカウンセリングを受けましたが、セッション直後に自分が劇的に変わった経験はありません。カウンセラーから得たヒントやアドバイスを実生活で試し、改善を重ねながら、社会との関わりの中で自分自身を表現し、良好な反応を得ていく中で、少しずつ自分を変えていきました。
つまり、私が「心理カウンセリングは魔法ではない」と申し上げるのは、このような意味合いからです。
カウンセリングとは、人生の主人公である相談者様ご自身が、どのように自己変革を遂げていくか、そのプロセスをサポートする場なのです。

3.心理カウンセリングが「即効性」を発揮する場合とは?
しかし、例外的に1回のカウンセリングで心の状態が好転し、「即効性」を感じられるケースも存在します。
このような場合、相談者様とカウンセラーが、物事の捉え方や具体的な行動の改善について話し合い、その内容をカウンセリング後すぐに実践できたときに、効果が現れることが多いです。
ただし、この即効性は、もともと相談者様が社会適応力を持ち、物事を柔軟に考えられる資質があることが大きな要因です。
私のような心理カウンセラーは、あくまで「少しばかりのアドバイスや助言を行ったに過ぎません」。
状況や悩みを改善する力は、実は相談者様ご自身の中にすでに備わっていた、と考えることができます。

4.心理カウンセリングとは心を相手にしているのではなく脳を相手にしている
私たちは心理カウンセラーとして「心」を相手にしていると言われますが、実際には、相談者様の「脳」を相手にしている、という側面があります。
なぜなら、私たちの心の悩みや行動の多くは、脳の働きに起因しているからです。
心理カウンセリングは魔法ではありません。
心理カウンセラーがたった1回で人の脳機能を変えることができるでしょうか?
脳科学において、私たちの心の発生メカニズムは未だ完全に解明されていません。
しかし、外部からの情報(入力)に対する反応(出力)、あるいは脳内で生成される意思、イメージ、感覚といったものが、「心」と呼ばれるものに大きく影響していると私は考えます。(「心」の実態を科学的に証明した研究者はまだいません。)
脳は、約1000億個もの脳神経細胞(ニューロン)が複雑に繋がり合い、無数の回路を形成しています。これらが、心や意思などの生成に関わっていると言われています。

ある脳科学者は、「脳は、自分なりにカスタマイズされたコンピューターのようなもの」と表現しました。
本物のコンピューターであれば、そのカスタマイズはすぐに変更できますが「脳の回路のカスタマイズ」は、その方が何年もの人生経験を通して作り上げてきたものであり、一瞬で変えられるものではありません。
心の悩みを改善する、行動の悩みを解決する、やる気を出すといったことは、すべて脳の働きを改善することと同義です。(これには、ある種の脳内物質の生成量も大きく影響しています。)
したがって、心理カウンセリングは魔法ではなく、脳そのものを変えることにもつながる作業をサポートするものであり、多くの悩みの解決には時間が必要です。時には数年かかることもあるでしょう。
ご予約時に「1回のカウンセリングで治る保証はありますか?」と尋ねられることが稀にありますが、上記のように脳機能の改善を「治る」と捉えるならば、そのような保証は私のカウンセリングのレベルではできません。
心理カウンセリングに過度な期待を抱くと、それが深い失望につながる可能性もあります。

まとめ
心理カウンセリングは魔法ではありませんし、私も魔法使いではありません。
ご自身の抱えている悩みは、ご自身の継続的な努力によって改善していくのが基本です。
これは、人生という一本の道を歩む、私たち一人ひとりの宿命のようなものだとも言えるかもしれません。
しかし、あなたの自己変革をサポートしてくれる人は必ずいます。心
理カウンセラーもその一人です。
また、あなたの周囲の人々も、そのために力を貸してくれるかもしれません。
勇気を出して、焦らず、自己変革の一歩を踏み出してみてください。