コロコロと変わる親の育児態度が、子どもの「心の不安定さ」を招く
親の「安定性」と「一貫性」が、子どもの心の成長に不可欠な理由
私たちの心の健やかな発達に欠かせない要素として、何が一番大切でしょうか。
それは、やはり親子関係です。
そして、その親子関係が、安定と一貫性に基づいたものであれば、それは子どもの健やかな心の成長を支える強固な基盤となるでしょう。
しかし、もし親子関係が安定性に欠け、一貫性のないものであったとしたら、子どもの心は不安定になり、健全な心の発達が妨げられてしまうと考えられます。

本稿では、親の安定性に欠けた、一貫性のない関わり方について、特に子どもの心に影響を与える2つの例を見ていきましょう。
1.その時々で、子どもへの要求が変わる親
2.子どもに対して約束したことを、簡単に変更する親
3.まとめ:安定性と一貫性がもたらす「安心感」と「チャレンジ精神」

1.その時々で、子どもへの要求が変わる親
親の子どもに対する要求は多種多様で、数え上げればきりがありません。
例えば、母親が兄に妹の面倒をみるように要求したとしましょう。
兄は言いつけに従って妹と仲良く遊んでいたのに、それを見た母親が突然「いつまで遊んでいるの!勉強しなさい!」と怒鳴りつけたとします。
兄(子ども)は、母親の要求通りにしていたにもかかわらず、褒められるどころか怒鳴られてしまいます。
これでは、子どもは母親に対する信頼を失ってしまうでしょう。
親子の関わりにおいて「安定性」と「一貫性」が重要だと述べたのは、これらが親子間の信頼の土台となるからです。そして、この信頼があるからこそ、子どもは自己信頼感や自己肯定感を育むことができるのです。

親自身が要求したことを子どもが満たしているにもかかわらず、一方的に怒鳴るという行為は、親子の信頼関係を築く機会を奪い、子どもに不信感を抱かせます。
このような状況が日々繰り返されると、子どもの心には悪影響が現れ、「誰も信用できない」という不信感を抱えたまま成長していくかもしれません。
さらに、親の要求がその都度変わる場合、子どもは何を優先して行うべきか判断できなくなり、意思決定能力にも悪影響を及ぼす可能性があります。

大切なのは「親の一貫した姿勢」と「コミュニケーション」
この問題の根底には、親側の一貫した姿勢の欠如と、コミュニケーションの問題があります。
先の例で、母親の心理状態を段階的なコミュニケーションで捉え直すと、問題の回避が可能です。
- 依頼(要求): 「私(母)は忙しいから、妹の面倒をしばらくみていてほしい」と伝える。
- 感謝(承認): 自分の用事が済んで手が空いた時、兄に対して「妹の面倒を見てくれてありがとう」と褒める。
- 再度の要求: 感謝を伝えた後で、「ありがとう。では、そろそろ勉強に取り掛かってね」と次の行動を促す。
このように段階的なコミュニケーションを行えば、子どもは褒められ、良好な関係性が維持され、安定性と一貫性があると感じられます。

その時々で要求が変わる親の問題は、子どもとのコミュニケーションを軽視し、要求だけが一方的に突出している状態とも言えるでしょう。
子どもが親の要求を満たしたならば、その努力や結果をしっかりと褒める(安定性と一貫性)。
この「区切り」と「承認」を大切にすることが、次に繋がる行動を促すことになります。

2.子どもに対して約束したことを、簡単に変更する親
親子間で約束したことを、親が簡単に変更してしまうケースも、子どもの心の発達に問題が生じる原因となります。
例えば、「今度の日曜日は水族館に行こう」と父親が子どもに約束したとします。
しかし、直前になって「急に仕事が入った」、「付き合いでゴルフに行くことになった」などの理由で予定を変更してしまう。
水族館に行くことを楽しみにしていた子どもの心は、深く傷ついてしまいます。
仕事上のやむを得ない事情で、子どもとの約束を変更せざるを得ないことはあるでしょう。
しかし、この事態が繰り返されると、親は子どもの信頼を失います。
その結果、子どもの心にはどのような影響を与えるでしょうか。

まず、「親は信用できない」という思いが形成されるでしょう。
そして、親を信用できないと感じる子どもは、他者も信用できない大人へと成長するかもしれません。
また、「約束」という行為について、親を模倣して「約束は破ってもいいものだ」と捉え、いい加減な大人へと成長する可能性もあります。
逆に、親への反発心から「約束は何があっても必ず守る」、「自分はいい加減な親とは違う」という思いに強くこだわり続け、柔軟な生き方が失われてしまうかもしれません。
さらに、信用できない親には、悩みや相談をする気になれず、何事も一人で抱え込む大人へと成長する可能性もあります。
このように、子どもとの約束を簡単に変更する親の態度も、子どもの心には多様な影響を与えてしまうのです。

3.まとめ:安定性と一貫性がもたらす「安心感」と「チャレンジ精神」
子どもの健やかな成長には、親子関係における安定性と一貫性が極めて重要です。
これこそが、子ども自身の心の安定につながります。
心の土台が安定しているからこそ、定めた目標に向かって、簡単にあきらめることなくチャレンジをする原動力となるのです。そして、目標を達成した時には、大きな自己肯定感を手に入れることができるでしょう。
親子関係における安定性と一貫性は、子どもとの信頼関係の証です。
この信頼関係の基、子どもは「いつでも親に見守られている」という安心感を抱き、安心して外の世界と関わることができるのです。