MENU

アダルトチルドレン・心の問題と行動特徴

私自身がアダルトチルドレンを体験しており、アダルトチルドレンに関することを、以下の3ページに分割して書かせて頂いております。

1.アダルトルヂレン・心の問題と行動特徴(本ページ)
2.アダルトチルドレンのカウンセリング回復へのステップ(次ページ)
3.アダルトチルドレン体験を振り返って学んだこと等(次々ページ)

本ページはアダルトチルドレンの心の問題を、3つの大項目より紹介しています。

アダルトチルドレン・心の問題の中核:機能不全家族と自己喪失

Index

01:アダルトチルドレンの生き辛さの根源にある機能不全家族とは

「アダルトチルドレン」という言葉を聞いたことがありますか?

「大人のような子供」ではありません。
ましてや、「無責任な大人」のことでもありません。

アダルトチルドレンとは、子供時代の家庭環境における親の養育の問題や、様々な家族の問題によってつらい経験をし、その心の傷が癒えないまま大人になった人たちのことです。

それは、子供の頃から現在に至るまで、親との関係に端を発する生きづらさを抱え続けている状態を指します。決して病気や精神疾患の用語ではありません。

では、なぜアダルトチルドレンが生まれてしまうのでしょうか? その背景には、機能不全家族と、負の連鎖とも言える世代間連鎖という問題が存在します。

機能不全家族とは、親子間の健全な境界線が曖昧、あるいは存在しない家庭のことです。

では、健全な親子関係における「境界線がある」とは、どのような状態でしょうか?
それは、親が子供を独立した一人の人間として、その個性や感情を尊重し、認める家庭を意味します。

しかし、アダルトチルドレンが育った家庭では、この大切な境界線が曖昧だったり、完全に失われていたりしたのです。

具体的には、

  • 親からの過剰な期待による支配
  • 親の期待を満たした時だけ子供を認める条件付きの承認
  • 過保護、過干渉
  • 無視(ネグレクト)
  • 褒めない、認めない
  • 精神的な虐待(暴言、人格否定など)
  • 兄弟姉妹や他人との比較
  • 暴力(言葉の暴力も含む)

などが日常的に行われ、子供は一人の人間として尊重されず、ありのままを受け入れてもらえず、その存在そのものを否定されるような経験をすることもありました。

また、子供に親の愚痴を聞かせたり、夫婦間の問題を子供に相談したりするような、子供を精神的に頼るような親の態度も、境界線の曖昧な機能不全家族と言えるでしょう。

このような家庭で育った子供は、子供らしくのびのびと自由に過ごすことができず、安心して過ごせる自分の居場所がないと感じていたことが共通して挙げられます。

さらに、安心して過ごせる居場所という観点から考えると、夫婦間の絶えない喧嘩や怒鳴り合いは、子供に常に恐怖心を与え、これもまた機能不全家族の大きな特徴と言えるでしょう。

このように、アダルトチルドレンは子供時代から親によって常に脅かされ、一人の人間として、子供として尊重されることなく、その存在を否定され続けた結果、心に深い傷を負っています。そして、その傷は癒えることなく、大人になった今も、生きづらさを感じ続けているのです。

02:機能不全家族を生き延びるために失った「自分」という感覚

私は、アダルトチルドレンとは自己喪失の病であると考えています。

自己喪失とは、自分の人生を主体的に生きていないということです。より正確に言えば、機能不全家族の中で生き延びるために、子供の頃から常に親の顔色を窺い、過剰に親に合わせたり、自分の気持ちを抑圧して嫌なことを我慢し続けたりするうちに、「自分の人生を生きる」という感覚が麻痺してしまったのです。

では、「常に親を意識して、親に合わせる」「嫌なことを我慢し続ける」とは、具体的にどのようなことでしょうか?

例えば、親が支配的で常に自分の価値観を子供に押し付けてきた場合、子供はその親子関係、つまり機能不全家族の中で生き延びるために、どのように振る舞うでしょうか。

親が支配的ということは、子供が親の言うことを聞かない、つまり親の支配を拒絶すると、当然親は怒ります。子供は怒られ、傷つくことを避けたいので、嫌々ながら親の支配を受け入れます。

例えば、本当は習いたくない習い事をさせられたり、習い事を嫌だと訴えても聞き入れてもらえないため、自分の気持ちを表現することを抑え込み、耐え続けることを学びます。
親に逆らうと、その後が恐ろしく、親の支配を受け入れるしか、その家庭で生きていく術がなかったのです。

その結果、自己抑圧や感情表現の抑制が習慣となり、いつの間にか「自分らしさ」を見失ってしまうのです。

自由でのびのびと、好きなことに夢中になれるはずの子供時代を喪失してしまうのです。

そして大人になっても、子供の頃と同じように、自分の気持ちを抑え、感情や意見を表明することを避け、周囲に合わせることに必死になり、本当に自分が望む生き方をすることができません。

つまり、子供時代に機能不全家族を生き延びるために身につけざるを得なかった行動や態度を、大人になった今も無意識に取り続け、周囲との間に摩擦を生じさせたり、自分自身を苦しめたりして、生きづらさを感じ続けてしまうのです。

子供の頃から続く行動や態度のパターンと、その根底にある考え方の問題が、今の生きづらさに深く影響しているのです。

03:家庭内で身につけた機能不全家族を生き残るための行動・態度のパターン

次に、アダルトチルドレンが機能不全家族を生き延びるために無意識に身につけた、家庭内での行動や態度のパターン(役割)を具体的に見ていきましょう。

もし今、生きづらさを感じているなら、それは子供の頃から続けている行動や態度のパターン(役割)を、今の人間関係においても繰り返しているからかもしれません。

A.頑張り屋(ヒーロー)

親の期待を一身に背負い、それを満たすために懸命に努力します。自分の好きな遊びも我慢し、子供として楽しむ時間を犠牲にします。自分の感情を抑圧してでも、親の期待に応えようとします。

成長してからも、頑張ることや責任を果たすことに過剰なまでに自己価値を感じ、完璧主義になりやすく、リラックスすることが苦手です。

B.助っ人(イネイブラー、世話焼き)

幼いながらに家庭の問題を何とかしようとしたり、家族の世話を焼いたり、手伝いをしたりと奔走します。
多くの場合、それは親からの暗黙の要求です。自分のニーズを後回しにして、常に家族のために何かをしようとします。

大人になっても、自分のことは二の次で他人のために尽くし、気づけば燃え尽きてしまうことがあります。

C.ロンリー(スケープゴート、いけにえ)

親や家族から理解されない孤独感を抱え、殻に閉じこもります。
心は悲しみで満ちています。
成長後も誰からも愛されていないと思い込み、自分を表現することを諦めてしまいがちです。

D.ヒーロー(達成者)

エリートに多く見られるタイプです。
親の虚栄心を満たすために努力し続けます。
成績優秀であることが自分の価値だと信じ込み、温かい人間関係を築くことが苦手です。

E.マスコット(ピエロ)

常に明るく振る舞い、家庭の雰囲気を和やかにしようとします。
本当は悲しくても笑顔でいることを選びます。
その場の空気に合わせた自己表現ばかりするため、本当の自分の感情が分からなくなってしまいます。

大人になっても、周囲が暗いと感じると自分のせいだと思い込み、無理に明るく振る舞って心が疲弊してしまいます。

F.いけにえ(スケープゴート)

機能不全家族の代表として、問題行動を起こしたり、非行に走ったりすることで、家庭内の問題を表面化させようとします。

問題行動を起こすこと、非行に走ることが、機能不全家族より「助けてください」というメッセージでもあります。

G.プリンス・プリンセス(ナルシスト)

親から過剰に可愛がられ、何をしても許されて育ちます。
親は子供の意思を尊重せず、人形のように可愛がります。
そのため、自発性が育まれず受け身になりがちで、成長しても主体的に生きることに困難を感じます。

代表的にアダルトチルドレンの子供時の態度、役割について記述しました。
もちろん、これ以外にも様々な行動や態度のパターンが存在します。

アダルトチルドレンは、子供時代に機能不全家族を生き延びるために、これらの固定された行動や態度を身につけざるを得ませんでした。

それは、「こうしていれば親から傷つけられずに済む」「何とかこの状況を生き抜ける」という、子供なりの精一杯の防衛手段だったのです。

しかしその一方で、本当の自分を表現することを諦め、我慢と抑圧を続けた結果、自分らしさを失い、本当にやりたいことに挑戦する機会を奪われ、自信を育むこともできませんでした。
そして、これらの経験は、大人になってからの人間関係にもマイナスの影響を与えてしまうのです。

私の子供時のアダルトチルドレンの役割

さて、私自身の子供時代の家庭内における固定された行動・態度のパターン(役割)は「ロンリー」でした。

親は私のことを理解してくれず、親から理解してもらうことを諦めた私は、心理的に引きこもってしまったのです。理解してもらいたいという思いを手放した方が、傷つかずに楽だったのです。

そして、成長した今でも、親と同じように「周囲が自分のことを理解してくれるはずがない」と思い込み、周囲に対して壁を作り、心理的に引きこもり、子供の頃と同じように「ロンリー」でいることがあります。

しかし、客観的に考えてみてください。成長した今、親に対して取っていた子供の頃と同じ行動や態度のパターン(役割)を、周囲や自分自身に対して取り続けているとしたら、それは本当に今のあなたに必要なものなのでしょうか?

04:アダルトチルドレンの生き辛さの根源にある問題

アダルトチルドレンが抱える生き辛さには、いくつかの深い根源的な問題があります。
今回はその深い問題を4点、見ていきたいと思います

A.自分に対する自信の欠如

自分が自分を信じること、信頼することは、人生を切り開く上で非常に重要です。そして、この自信、自己信頼感は、頭で理解する思考ではなく、心の奥底から湧き上がる感覚なのです。

この感覚の土台となるのは、子供時代に親から無条件の愛情を受けられた経験です。
しかし、アダルトチルドレンは、親からの条件付きの承認や愛情表現、存在の否定といった経験を通して、無条件の愛情を得ることができませんでした。

その結果、子供はこう感じます。

「自分は愛されていない」「愛されない自分には価値がない」。

親から無条件の愛を感じられなかった子供は、自分自身を愛することができず、自己否定に陥ってしまいます。そうすると、自分と深く繋がっているという感覚を持つことができず、自分を信じることができなくなってしまうのです。

自分を信頼できないと、過度に失敗を恐れたり、自分の存在価値を他者に求めたり、新しいことに挑戦することに強い恐怖を感じたりして、自分らしく生きることが難しくなってしまいます。

また、自分に対する自信の低さは、失敗を恐れる傾向を生じ、その結果、成功体験が無く、自信を培うことが出来ません。

B.心理的な問題からくる人間関係の困難さ

子供時代から親の否定や怒りを受け続けて育ったため、人から否定されること、怒られること、傷つけられることに対して過剰なまでに恐れを抱いています。

そして、この恐れは、「人が怖い」という感覚を伴う対人不安へと発展することがあります。

このような心理的な問題を抱えていると、人から否定されないように、怒られないように、傷つけられないようにと、人に過剰に合わせたり、気を遣いすぎたり、自分の気持ちを我慢しすぎたり、人を避け続けたりといった行動パターンを繰り返してしまい、健全な人間関係を築くことが難しくなります。

人と気楽に関わることができず、人間関係に過剰なストレスを感じてしまうのです。

C.社会で生きるために必要である適切な行動・振る舞いの未学習

子供時代から親の養育の問題によって、親に言われるがままの言動を取ったり、逆に親とのコミュニケーションが極端に少なかったりしたアダルトチルドレンは、社会生活を送る上で必要で適切な自己表現のスキルを家庭内で学ぶことができませんでした。

そのため、人間関係を築く際に不可欠な、自分を大切にしながら相手も尊重する行動や振る舞い、円滑なコミュニケーションについて、未学習の課題を抱えていることがあります。

D.植え付けられた自己否定や恐怖の感覚

親からの日常的な暴言、暴力、無視、否定といった虐待に近い行為によって、心が深く傷つけられた結果、根拠のない強固な自己否定感、対人不安、親に対する複雑な罪悪感などを感覚的に抱いていることがあります。

頭では「自分を否定する必要はない」「人をそれほど怖がらなくても大丈夫」「意味のない親への罪悪感を持つ必要はない」と理解していても、心の奥底では、親から植え付けられたこれらの感覚に強く支配され、苦しむことがあるのです。

05:世代間連鎖:負の連鎖を断ち切る重要性

アダルトチルドレンを生み出す根源にあるのは機能不全家族です。
そして、その家庭を築いたのは親です。
では、なぜ親は機能不全家族を形成してしまったのでしょうか?

実は、多くの場合、その親自身もまたアダルトチルドレンであり、機能不全家族の中で育ってきたのです。

端的に言えば、親自身が健全な家族、健全な親子関係を知らないのです。
そして、自分が経験してきたことと同じようなこと、あるいはそれに近いことを、無意識のうちに自分の子供にも繰り返してしまうのです。

アダルトチルドレンが生まれる背景には、親もまたアダルトチルドレンであり、その親もまたアダルトチルドレンであるという、終わりの見えない負の連鎖が存在する可能性があるのです。

これは、どの世代においても、健全な家族のあり方、健全な親子関係を学ぶ機会がなかった結果と言えるでしょう。この終わりのない流れを世代間連鎖と呼びます。

私は強く思います。

アダルトチルドレンである私たちが、この世代間連鎖の流れを食い止め、次世代に健全な家族のあり方を繋いでいくことこそ、私たちに与えられた偉大な使命の一つなのではないかと。

過去の心の傷が今のあなたを苦しめていませんか?
アダルトチルドレンが抱える4つの問題

子供時代の家庭環境が、大人になった私たちの心に深く影響を与えていることがあります。
それが「アダルトチルドレン」と呼ばれる状態です。
アダルトチルドレンが抱えやすい特徴と問題点を4つのカテゴリーに分け、詳しく見ていきましょう。

Index
1.自分自身との向き合い方:自信のなさ、自己否定感等
2.人間関係の悩み:対人不安、過剰な気遣い等
3.人生そのものへの困難:希望の欠如、自発性のなさ
4.親との関係性:終わらない執着、拭えない罪悪感

1.自分自身との向き合い方:自信のなさ、自己否定感等

アダルトチルドレンは、幼い頃に安心できる親子関係を築けなかった経験から、「親に責められる」「無視される」といった辛い体験を繰り返すことがあります。そうした経験が、何事も自分に関わることに対して、自分が悪いと捉えてしまう、客観性の欠落に基づく自己関連付けのクセにつながることがあります。
(自己関連付けの真の問題は、親の歪んだ養育の問題です)。

また、親の価値観を無意識のうちに受け継いでいたり、親に認められたいという強い気持ちから完璧主義に陥ってしまうことも少なくありません。しかし、その高い完璧主義に基づく理想を満たすことは難しく、親から十分に認められたという経験も乏しいことから、自己価値感が低く、自分自身に自信を持つことが難しいと感じておられる方が多いと思います。

・自信の欠如と厳しい自己批判
・何でも自分が悪いと責めてしまう
・高すぎる理想と完璧主義
・白黒思考と低い受容性
・過剰な責任感
・優柔不断で決断ができない(自信の欠落)
・マイナス思考と過剰な反省
・コントロールできない状況への過剰な反応

a)何が正しいか分からない

子供の頃、親の気分や都合によって態度が一貫せず、矛盾した言動に翻弄された経験から、自分で判断、決断することに自信が持てません。
「一体何が正しいのだろう?」と常に迷いを抱えています。

b)自己感覚の希薄さ

自分が何を考えているのか、何を感じているのかが分からなくなることがあります。まるで自分が自分の外にいるような、現実感が薄れるような感覚を覚えることもあります。
これは、常に他者を優先し、自分の感情を置き去りにしてきた結果かもしれません。

c)慢性的な孤独感

誰にも理解してもらえない、愛してもらえないという孤独感を常に抱えています。それは、子供の頃に親から十分に理解されず、傷つけられてきた経験が根深く影響しています。
また、「親から愛されなかった自分は他人とは何かが違うからだ」という思い込みから、積極的に人と関わろうとしないこともあります。

人と関わって、親同様、理解してもらえない、愛してもらえないから傷つくことを恐れているのです。

2.人間関係の悩み:対人不安、過剰な気遣い等

アダルトチルドレンの方は、幼い頃から親より否定的な言葉を受け続けてきた経験から、否定されることに対して人一倍敏感です。そのため、大人になっても他者からの批判や反対を過度に恐れ、自分の意見や気持ちを表現することをためらってしまう方も少なくありません。

また、養育環境における様々な問題から、親に対して根強い不信感を抱えている場合、その感覚が他者への不信感へと繋がり、人をなかなか信頼できずに苦しむ傾向があります。

また、これらの感覚、気持ちは人に対する不安感へと発展することもあります。

・対人不安(人が怖い)
・他者の思いや評価を気にしすぎる(過剰な迎合)
・自己主張・感情表現ができない
・怒りを感じても表現できない
・社会性やコミュニケーション能力の未熟さ
・頼めない、断れないことより抱え込みすぎてしまう

3.人生そのものへの困難:希望の欠如、自発性のなさ

アダルトチルドレンは、「自己喪失の病」と表現されることがあります。これは、幼い頃より自分の気持ちや考えを尊重されず、常に親の意向に沿うことを強いられてきた結果として、主体的に自分の人生を歩む感覚が育まれなかったことに起因します。

そのため、自身の存在意義が希薄に感じられたり、生きることに漠然とした悩みを抱えたり、自らの力で人生に希望を見出すことが難しいと感じてしまうことがあるのではないでしょうか。

・人生の希望を見出しにくい
・自発的に行動できない
・過去への強い執着
・楽しむことへの罪悪感(または、楽しむ能力の欠落)
・生きる意味を見出せない

4.親との関係性:終わらない執着、拭えない罪悪感

アダルトチルドレンにとって、親との関係は今もなお、大きな影響を与え続けていることがあります。
これも、機能不全家族の形態の大きな特徴です。

a) 親からの過剰な執着

子供の頃から続く親からの過剰な期待、愚痴、恩着せ、怒りの矛先といった、親の子供に対する強い執着が、大人になった今も続いており、強いストレスを感じています。
心の中では「もういい加減にしてほしい」と叫んでいるかもしれません。

b) 親への過剰な執着

過去に親から十分に愛されなかったことへの反動からか、大人になっても親に認められたいという気持ちが人一倍強く、親からの些細な否定的な言葉を過剰に受け止めてしまいます。

c) 親に対する罪悪感

子供の頃から常に親の意向に合わせて生きてきたため、親の期待や意思に反する行動を取ることに強い罪悪感を感じてしまいます。
これは、親から植え付けられた感覚である可能性が高いです。

d) 親に対する強い怒り

子供の頃に親から受けた言動によって深く傷つけられ、そのことに対して強い怒りの感情を抱えています。しかし、過剰な怒りは自分自身や周囲の人々を傷つける可能性もあるため、注意が必要です。

ここまで見てきたように、アダルトチルドレンが抱える問題は、自分自身、人間関係、人生、そして親との関係という、人生のあらゆる側面に及んでいます。

満たされない心:アダルトチルドレンが依存に傾倒する時

大人になっても拭えない心の寂しさや空虚感。
自分自身を持っていない、自己喪失の病。

アダルトチルドレンと呼ばれる、子供時代のつらい経験を抱える人々の中には、その心の隙間を何かで埋めようと、依存的な傾向を示す方がいます。

もちろん、アダルトチルドレン全てが依存の問題を抱えるわけではありません。
しかし、幼少期に孤独を感じ、親からの愛情を十分に受けられなかったと感じる方ほど、大人になっても心の奥底に満たされない思いを抱えやすく、それが依存という形で現れやすいと言えるでしょう。

孤独や寂しさ、そして強い自己否定感、自己喪失感に苛まれ、そこからくる虚無感を何かで満たしたい、あるいは麻痺させたいという強い衝動に駆られるのです。

では、依存傾向のあるアダルトチルドレンは、一体何に心の拠り所を求めるのでしょうか?
その対象と方法を見ていきましょう。

Index
1.心の空白を埋めるための渇望:恋愛依存
2.心の隙間を埋める他の手段:物質、行為、地位への依存

1.心の空白を埋めるための渇望:恋愛依存

恋愛依存とは、自分の心の空虚感を、特定の異性との関係を通して満たそうとする状態です。
自分の中に安心できる居場所がないため、相手の中に自分の存在意義を見出し、そこに心の安定を求めようとします。

しかし、この傾向が強すぎると、依存する側、される側双方にとって苦しい関係性へと発展してしまいます。人に依存するという行為は、相手を無意識のうちに縛り付け、自分から逃れられないようにしてしまうからです。

それは、心の奥底にある「見捨てられたくない」という強い恐れの表れでもあります。

恋愛依存に陥りやすい方は、子供時代に親に見捨てられたと感じた経験や感覚が深く根付いています。「もう二度と、あの孤独で寂しい思いを味わいたくない」という切実な願いが、依存という形をとらせるのです。

では、具体的にどのような形で相手に依存するのでしょうか?

a)支配(過剰な要求)

親に見捨てられた思いが強いアダルトチルドレンは、常にパートナーと繋がっていることを確認したい衝動に駆られます。

・LINEの返信は数分以内
・パートナーの予定はすべて把握しないと不安
・パートナーが予定通りの行動を取らないと裏切られた思いと不安の喚起

見捨てられないため、常にパートナーに執着してしまい、パートナーの自由を奪い、パートナーを束縛、支配する傾向があります。

しかし、これは、パートナーとの繋がりを確認するため、見捨てられていないことを確認するための行為なのです。

b)過剰に尽くす

パートナーに見捨てられないため、自分から離れられなくする為、過剰なまでパートナーに尽くします。

尽くすことは問題ないのですが、過剰に尽くすことは、「これだけ尽くしているのだから見捨てないでね」とのメッセージの発信でもあり、尽くすことを自己犠牲として、パートナーの裏切りは許さないという、パートナーを束縛する行為でもあります。

c)暴言・暴力

文字通り。
パートナーを暴言、暴力で傷つけ、自分の側から離れることを力づくで阻止します。

d)罪悪感の植え付け

「あなたがいなくなったら生きていけない」「私にはあなたしかいない」などと、自分の無力さを強調することで、相手に罪悪感を抱かせ、自分から離れられないようにします。

e)パートナーを試すような言動をする

「こんな自分でも受け入れてくれるのか」という不安から、わざとパートナーを困らせるような言動をとってしまうことがあります。
これにより、パートナーから見捨てられないことを確認しているのです。

恋愛依存からの回復には、相手への依存を断ち切るだけでなく、なぜ自分が依存してしまうのかという根本的な原因、つまり自分自身の内面と深く向き合うことが不可欠です。

そして、特定の人だけとつながるのではなく、多くの人とつながることによって、多くの人に自己の存在を認めてもらうことも、恋愛依存からの脱却を図る為の1つの方法です。

関連ページ:恋愛依存がパートナーを支配しようとするのはなぜ?

2.心の隙間を埋める他の手段:物質、行為、地位への依存

恋愛以外にも、アダルトチルドレンは様々なものに依存することで、心の空虚感を紛らわせようとすることがあります。

a) アルコール、薬物、過食への依存

抱えている寂しさや虚しさといった辛い感情を、アルコールや薬物の摂取、あるいは過食といった行為によって一時的に麻痺させようとします。
しかし、これらの手段で得られる安堵感は一時的なものであり、依存が進むほど心身への悪影響は深刻化します。

b) 何かへの過度な熱中

ギャンブル、スポーツ、ゲームなど、何かに没頭することで、慢性的な虚しさの感情から意識をそらそうとします。
適切な趣味への熱中は生活に潤いを与えますが、過度な熱中は日常生活に支障をきたし、依存症へと発展する可能性があります。

c) 物質への執着(買い物依存)

物を買うという行為や、手に入れた物によって、空虚な心が一時的に満たされると感じます。
しかし、物質を持つことから得た充足感は長続きせず、依存が進むと借金などの経済的な問題を引き起こすことがあります。

d) 社会的地位への固執

学歴や社会的地位に過剰に価値を見出し、それを得ることで自己肯定感を得ようとします。しかし、地位は外的要因によって左右される不安定なものであり、失った時の喪失感は計り知れません。

アルコールや何かに熱中することは、適度であれば楽しむことができます。
また、買い物や地位を求める向上心は、必ずしも悪いものではありません。
しかし、それらに自分の存在価値の全てを委ねてしまうと、アダルトチルドレンが抱える根本的な自己喪失感からの回復には繋がらないのです。

依存の根底にあるのは、満たされない心、癒されない過去の傷です。依存の対象を(外側)に求めるのではなく、(内側)に目を向け、自分自身を理解し、受け入れる(過程)こそが、依存から抜け出し、自分らしい生き方を取り戻すための第一歩となるでしょう。

次のページ:アダルトチルドレンのカウンセリング回復へのステップ