機能不全夫婦|夫婦の問題が子どもの生きづらさにつながる
アダルトチルドレンには、世代間連鎖という深刻な問題が潜んでいます。
アダルトチルドレンである親に育てられた子どもは、同じくアダルトチルドレンとして成長する可能性が高いという現実です。
その背景には、親の子育てが子どもの心に与える大きな影響があります。
これまでの記事で、親の子育てや子どもへの態度とアダルトチルドレンの問題について詳しく触れてきました。
今回は視点を変え、夫婦関係がアダルトチルドレンにどのような影響を及ぼすのかについて掘り下げていきたいと思います。
それでは、夫婦関係とアダルトチルドレンには、一体どのような関係があるのでしょうか。まず、夫婦関係を「機能夫婦」と「機能不全夫婦」に分けて考えてみましょう。

機能不全夫婦とは何か
健全な機能夫婦とは、文字通り夫婦としての機能、すなわち二人の人間関係が円滑に機能している状態を指します。
そこには、温かい関係性、円滑な意思疎通、活発なコミュニケーション、そしてお互いへの情緒的なサポートが存在します。
では、機能不全夫婦とは何でしょうか。
それは、二人の人間関係が十分に機能していない夫婦のことです。
冷え切った関係や、お互いへの敵対心が満ちている場合もあります。
結果として、意思疎通やコミュニケーションが失われ、絶え間ない喧嘩が日常となっているかもしれません。お互いの情緒的なサポートもなく、それぞれが孤独や強いストレスを感じている状態です。
このような機能不全夫婦の問題は、子どもにどのような影響を与えるのでしょうか。

機能不全夫婦が子どもの心に与える影響
機能不全夫婦の関係性は、子どもの健全な心の成長に多大な影響を及ぼします。具体的に見ていきましょう。
Index
1.絶え間ない夫婦喧嘩が奪う子どもの心の平穏
2.冷たい仮面夫婦がもたらす子どもの混乱と自己否定
3.夫からの情緒的サポート不足が引き起こす母子関係の歪み

1.絶え間ない夫婦喧嘩が奪う子どもの心の平穏
親が常に声を荒げて喧嘩している環境は、それだけで子どもにとって計り知れないストレスとなります。
日々恐怖を感じ、心が安らぐ瞬間がありません。
時には、食事中に茶碗や箸が飛び交うような状況に遭遇することもあります。「茶碗や箸が頭の上を飛び交う」ような家庭に、一家団欒の楽しい時間など当然ありません。
子どもにとって、一刻も早く食事を切り上げて自分の部屋に逃げ込むことが、唯一の安全地帯となるのです。
さらに、激しい夫婦喧嘩の結果、警察沙汰になるような事態は、子どもにとって計り知れない恥辱となり、近所の視線を常に意識するようになるかもしれません。
絶え間ない夫婦喧嘩は、子どもから家庭の安らぎを奪い、常に喧嘩への恐怖でびくつきながら生活させることになります。

それは、大人になっても、些細な物音に過敏に反応するような恐怖感を植え付けてしまう可能性も否定できません。
また、近所の視線を常に気にして過ごすことは、対人不安や視線恐怖へと発展する可能性も孕んでいます。
夫婦喧嘩が子どもに与える影響は、計り知れないほど大きいのです。
子どもの安心感を奪い、恐怖を与え続けるという点において、これは親と子の適切な境界が確立されていない状態とも言えるでしょう。

2.冷たい仮面夫婦がもたらす子どもの混乱と自己否定
子どもは親の感情に非常に敏感です。
父親と母親の仲が悪いこと、家庭内の険悪な雰囲気は、敏感に感じ取ります。冷たい夫婦関係では、当然ながら二人の間にコミュニケーションも意思疎通もありません。
子どもは常にピリピリとした空気を感じ続け、これも絶え間ない夫婦喧嘩と同様、心が安らぐ時がないのです。
また、冷たい仮面夫婦は、お互いへの憎しみから共同行動を避ける傾向があります。
そのため、家族旅行やレジャーといった家族の楽しみがない可能性もあり、子どもは自分の家庭と他の家庭を比較し、悲しみを抱くかもしれません。

さらに、冷たい仮面夫婦の問題は、子育てに直接的な悪影響を及ぼすことがあります。
例えば、夫婦間で子育ての方針について話し合うことがなく、子どもの将来像を夫婦それぞれがバラバラに考え、結果として、父と母が矛盾した期待をそれぞれ子どもに伝えてしまうことがあります。
すると、子どもは混乱し、どちらの言うことを聞けば良いのか分からなくなり、自分を抑圧してしまうかもしれません。
また、冷たくギスギスした家庭を築いた夫婦は、それぞれが心に余裕がなく、荒んでいます。
そのような状態で、子どもに対して余裕と温かさを持って接することができないのは容易に想像できます。
冷たい家庭では、子どもは自分の居場所を感じられず、親に甘えたり、相談できるような土壌が育ちません。
加えて、子どもは何事も自分に関連付けて考えてしまうため、「お父さんやお母さんの機嫌が悪いのは自分が悪いからだ」と勝手に思い込んでしまう可能性もあります。
これは、子どもの自己価値の低下に直結する深刻な問題です。

3.夫からの情緒的サポート不足が引き起こす母子関係の歪み
以前読んだ本に、「妻に対する夫の精神的サポートの重要性」が書かれていました。
子どもが小さい時期、妻は子育てによる大変さから、かなりのストレスを抱えています。
子育ての相談や大変さを妻が夫に話した際に、夫がきちんと受け止めてあげられないと、妻の子育てに対するストレスは上昇し、最終的にはストレスの根源である子どもに対し、何らかの負の行動を取る可能性が出てくるのです。
幼い子どもがいるために家から自由に外出することが難しく、社会からの疎外感を感じ、さらに夫からのサポートがないため、ますます孤独を感じ、ストレスを溜め込みます。
その反動から、子どもに対してすぐに感情的に怒鳴りつけたり、暴力的になったり、無視したり、最悪の場合、虐待へと発展する可能性も否定できません。
子育ては夫婦で行うものです。
夫がお金を稼ぐだけで良いというものではなく、たとえ短い時間でも妻とコミュニケーションを取り、精神的なケアをしてあげる時間も必要不可欠なのです。
ここまで、機能不全夫婦が子どもに与える影響について述べてきました。

機能不全夫婦と母子密着の問題
家庭の根幹は、やはり夫婦です。
夫婦が夫婦として機能していないと、二人の家庭はギスギスし、冷たく、険悪なものになります。
その家庭に子どもが生まれた場合、子どもは当然その影響を受け、心に様々な傷を抱えて成長していくことになります。
さらに、機能不全夫婦は母子密着という問題にも発展することがあります。
夫と妻の間に情緒的な繋がりが欠如していることが、母と子の関係の過度な深さに繋がるのです。
関係が深いこと自体は良いことですが、夫に期待できない分、子どもに過剰な期待をしたり、夫の悪口を子どもに話したり、子どもを自分の相談相手にしたりするなど、子どもが子どもとして自然に生きることができない環境へと追い立ててしまう場合があります。
子どもは優しく、我慢強いため、母親に付き合ってくれることが多いです。
しかし、その影響が成長するにつれて、生きづらさの原因となっていくのです。

「子どもは親を見て育つ」と言われています。
夫婦が温かい関係であれば、子どもはその温かさを間近で感じて育ちます。
すると、人としての温かさを自然と身につけ、バランスの取れた大人へと成長していくのではないでしょうか。
アダルトチルドレンには世代間連鎖が原因の一つとして挙げられますが、成長したアダルトチルドレンが良好な夫婦関係を築き、常に自分自身を意識し、自分の問題を子育てに影響させないよう努めれば、この世代間連鎖を断ち切ることは可能です。
子どもと接する際に常に自分を意識するには、それだけの心の余裕が必要です。
その心の余裕のためにも、良好な夫婦関係は非常に大切なのです。
機能不全家族の種は機能不全夫婦であり、健全な機能家族の種は、健全な機能夫婦にあると言えるでしょう。
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