子どもの親に対する怒り、消えない理由。優しさを踏みにじられ…
親子関係は、他の人間関係と同様に、非常に複雑で多様な感情が入り混じっています。
特に「親子」という関係は、子どもが生まれたその瞬間から始まり、幼少期の様々な経験や親の養育の仕方が、その後の親子の関係性を大きく左右することが多々あります。
この関係性は、子どもと母親、子どもと父親の関係だけでなく、両親の関係、さらには兄弟との関係など、家族を構成する様々な要素が複雑に影響し合い、子どもの親に対する思いや、子ども自身の性格形成に深く関わってきます。
子どもの優しさが、親への怒りに変わる時
Index
1.子どもの優しさを「踏みにじられた」と感じる親への深い怒り
2.子どもの「我慢」と「優しさ」が、やがて親への怒りとなる時
3.自分を抑圧し続けた子どもが、大人になって怒りを爆発させる時

1.子どもが優しさを「踏みにじられた」と感じる親への深い怒り
この「怒り」とは、一時的な感情ではなく、長期にわたる、子どもから親に対する持続的な怒りを指します。
幼少期の子どもが親に対して永続的な怒りを持つことは稀です(一時的な癇癪や反抗はあります)。
しかし、思春期から青年期にかけて、様々な親子間の経験や出来事の積み重ねが、親に対する深い、永続的な怒りへと変化していくことがあります。
では、親子関係において、このような持続的な怒りはなぜ生じるのでしょうか?
そこには、親の言葉や態度によって直接的に傷つけられた悲しみと怒りの蓄積があります。
加えて、親子関係(親の養育方法)の影響で、社会人になってから人間関係を築くのが難しい、日々の生活に「生きづらさ」を感じている、といった問題が深く関わっています。
この「生きづらさ」の原因が、親との関係や生育歴にあると本人が認識した時、「なぜ自分だけがこのような偏った育てられ方をされ、性格が歪められたのか」、「親の養育態度が原因で、なぜ自分だけが人生の苦しみを味わわなければならないのか」といった問いが心に湧き上がってきます。
そして、自己の人生に生涯の苦しみを与えたと感じる親に対して、持続的な怒りがこみ上げてくるのです。

2.子どもの「我慢」と「優しさ」が、やがて親への怒りとなる時
本来、子どもは親に対して、とても優しいものです。
その子どもの純粋な優しさを、もし親が「踏みにじった」と感じさせるような行為があったなら、その代償として、親への永続的な怒りが生じることになります。
では、子どもは親に対して、どのようなことについて持続的に怒りを抱くのでしょうか?
- 何をしても褒めてもらえなかった
- 常に罵倒され、貶され続けられた
- 一生懸命話したのに、全く理解してもらえなかった
- 兄弟間や友人との比較を常にされた
- 今まで親のためにと思ってしてきたことが、裏切られたと感じた
- 親の言うことが常に変わり、振り回され続けた
など枚挙にいとまがありません。

そして、子どもは長い間、怒りを表に出さずに、ずっと我慢し続けてきたのです。
それを「親孝行」だと思い込んだり、それが子どもの親への優しさであったりすることもあります。
もちろん、子どもですから、親に逆らえば家から放り出されるかもしれないという不安や、親に対する恐怖心もあったでしょう。
しかし、「自分さえ我慢していれば、家庭生活は問題ない」という計算ではなく、子どもの純粋な優しさから我慢していたケースも少なくありません。
幼い子どもは、「我慢すること」と「優しさ」の違いを明確に認識するレベルには達していなかったのです。
しかし、親による問題のある子育ては、子どもの成長と共に心の傷となり、親に対する不信感へとつながり、やがて親に対する絶対的な怒りへと転じることがあります。なぜなら、これらの親の養育態度は、子どもを萎縮させ、自信や自己肯定感を削ぐものであり、その結果が社会での「生きづらさ」の原因となっていることもあるからです。
もちろん、ここには子どもの個性も影響します。
親が何を言おうと気にせず、自由奔放に育った子は、親に対して怒りを持つことはないかもしれません。また、ことあるごとに親と正面からぶつかってきた子どもは、怒りこそあれ、「それはそれで良い。自分は自分の人生を生きるのだ」と思えるかもしれません。

3.自分を抑圧し続けた子どもが、大人になって怒りを爆発させる時
特に注意が必要なのは、親の言うことを素直に聞き入れ、自分を抑圧しがちなタイプの子どもです。
彼らは自分の怒りを心の奥に隠し、親との共生を選びます。
幼い時は、親に抱く怒りにすら気づいていないかもしれません。
しかし、成長するにつれて、親に対する怒りを意識し始めることがあります。
また、社会に適応できない問題や「生きづらさ」の原因が親の子育てにあると認識した時、成長後、親に対する怒りが頂点に達することもあるのです。
そして、いずれは、今まで積もり積もった怒りを爆発させたり、社会に出てからの不適応や「生きづらさ」の責任を親に求めたりして、親に対して永続的な恨みや怒りを持ち続ける可能性もあります。
たぶん、私がそうだったのかもしれません…。

子どもは親のために存在しているのではありません。
子どもには子どもの人生があり、多くの選択肢があります。
親子関係において、親は力関係の上で優位に立ち、養育者としての責任も伴いますが、対等な一人の人間として、常にコミュニケーションを大切にし、親子双方が互いを理解するよう努めることが何よりも重要です。
子どもを深く理解することは、良い親子関係を築くための鍵となります。
そして、どうか、子どもは幼い頃、親に対する優しさに満ち溢れている存在であることを忘れないでください。