世代間連鎖:親になる前に自身の親子関係を振り返る
子どもに生きづらさを受け継がせないために
Index
1.「世代間連鎖」は負の遺産だけではない
2.世代間連鎖を振り返る要点と注意点
3.「理想の両親像」と「健全な家庭」を共に築くために
1.「世代間連鎖」は負の遺産だけではない
「世代間連鎖」と聞いて、まず思い浮かぶのは、アダルトチルドレンや機能不全家族といった言葉ではないでしょうか。
親から子へと受け継がれる「生きづらさ」や、負の側面ばかりに焦点が当たりがちです。
たとえば、親が支配的であればその子どももまた親になった時に支配的になる、といったように、家族特有のパターンが無意識のうちに連鎖し、さまざまな心理的問題を引き起こす。
そんなイメージが強いかもしれません。

しかし、世代間連鎖とは、単にネガティブな影響ばかりを指すものではありません。
実は、家族が築き上げてきた「楽しかった思い出」や「明るい家庭環境」といったポジティブな側面も、れっきとした世代間連鎖なのです。
心理学の世界では、往々にして負の世代間連鎖がクローズアップされがちですが、実際には、子どもの成長を助け、幸せな家庭を築いてきた「良い連鎖」も数多く存在します。
だからこそ、世代間連鎖について考える際は、マイナス面だけでなく、プラス面にも目を向けることが大切です。
自身の親子関係から何を「得た」のか、そして何を「得られなかった」のか、両方の視点から見つめ直すことで、受け継ぎたい良い点は積極的に取り入れ、生きづらさに繋がる要因は断ち切る道筋が見えてくるはずです。

2.世代間連鎖を振り返る要点と注意点
親から受けた、特に負の行動を思い出すことは、時に親への怒りや、辛く悲しい気持ちを引き起こすかもしれません。焦らず、ご自身のペースで取り組みましょう。
振り返るべき主な項目は以下の通りです。
a)親からされて嫌だったこと
b)親にしてほしかったけれど、してもらえなかったこと
c)親の嫌いなところ
d)親からしてもらって嬉しかったこと
e)親の好きなところ、良いところ
これらの項目に加え、祖父母との関係性についても振り返ることは、より深く世代間連鎖を理解する上で有効です。ご自身で必要だと思う項目があれば、自由に追加してみてください。

3.「理想の両親像」と「健全な家庭」を共に築くために
世代間連鎖の振り返りは、まず夫婦それぞれが個別に行い、その後、お互いの振り返りをもとに話し合うことを強くお勧めします。
この話し合いを通じて、親から受けた負の行為については「自分たちの夫婦が親になった時には繰り返さない」と明確に意識し、親からしてもらって嬉しかったことなどは、プラスの連鎖として積極的に受け継いでいくことが、健全な家庭を築く上で非常に重要となります。
この世代間連鎖を振り返る作業は、親になる前、できれば結婚する前に、どのような家庭を築きたいかについて話し合うことで、よりその有効性が高まります。
もちろん、話し合いの結果、お互いの家庭環境への理解が難しく、関係性がこじれてしまう可能性もゼロではありません。

しかし、機能不全な夫婦関係や機能不全家族を作らないことは、お互いのため、そしてこれから生まれてくる子どもたちのためにも、何よりも大切なことだと私たちは考えています。
あなたの家族の未来をより良いものにするために、この「振り返り」を始めてみませんか?