アダルトチルドレンが抱える「自己批判」と「思い込み」の問題
アダルトチルドレンと呼ばれる方々は、自分自身に対しても、他者に対しても、非常に批判的な傾向が強いと言われます。
その批判は、時に容赦なく、厳しいものです。では、なぜアダルトチルドレンはこれほどまでに批判的になってしまうのでしょうか。その原因と心理について、詳しく見ていきたいと思います。

A.アダルトチルドレンの「自己批判」が形成される背景
1.親の養育態度が自己批判を生み出す
アダルトチルドレンが強い批判的な傾向を持つ最大の理由は、養育者から批判され続けて育ったことにあります。
本来、親が子どもと接する上で最も大切なことは、その子どもを無条件に認め、受け入れることです。なぜなら、子どもは常に親の愛情や承認を求めているからです。
しかし、親が子どもと接する際に、親の高い要求や基準を満たした時にだけ子どもを認める、あるいは、その高い要求や基準を満たしても褒めない(「できて当たり前」という態度を取る)といった状況が続くと、問題が生じます。

親が子どもに対して高い基準を要求する例としては、以下のようなものが挙げられます。
- 幼い子どもに、「部屋は常に埃一つなく綺麗に保つこと」を要求する。
- 習い事のそろばんで「クラスで1位を取ること」を強いる。
- 「姉(兄)のように賢く振る舞うこと」を求める。
- 「弟や妹の面倒をきちんと思いやりを持って見ること」を義務付ける。
そして、子どもが成長するに従って、
- 「テストでは全科目必ず80点以上を取ること」
- 「有名中学校に進学すること」
- 「習い事の絵で賞を取ること」
など、際限なく高い基準を満たすことを要求し続けるのです。
しかし、親が子どもを認めるための要求や基準が高すぎると、どれだけ努力しても、ほとんどの子どもはその基準を満たすことができません。
そして、このような無謀で高い要求を突きつけ、厳しい基準を設定する親は、大概の場合、その要求や基準を満たせなかった子どもに対して、批判的な態度を取ります。

「なぜ、できないの?」、「本当にダメな子ね」、「あなたは必要ない」、「お姉さん(お兄さん)を見習いなさい」。
親からこのような言葉を浴びせられた子どもは、本当に自分のことを「できない、ダメな、必要ない子」だと思い込んでしまうのです。
そして、できない自分を責めるようになります。
また、親の要求や基準を満たそうと頑張り、それに応えて基準を満たしたにもかかわらず、褒められないと、「自分が嫌われているから褒めてもらえない、認めてもらえないんだ」などと、やはりその原因を自分に求め、自分を責めます。これが自己批判の原型なのです。
親から褒められない、認められないのは「自分が悪いからだ」、「自分が良い子ではないからだ」と、自分にその原因があると思い込んでしまう。すべてを自分に関連づけて考えてしまうのです。
なぜ、このようなことが起こるのでしょうか。

2.アダルトチルドレンの自己批判と「思い込み」の関係
私たちが物事を客観的に捉えて考えられるようになるには、一般的に少なくとも6歳以上の年齢が必要だと言われています。
それまでの子どもの思考は自己中心的です。
つまり、「マルかバツか」「100か0か」といった、中間がない極端な思考に陥りがちです。
したがって、何をしても親が自分に対して批判的であり、褒めないのは「自分が悪いからだ」と、自己中心的に勝手に思い込んでしまうのです。
この観点から考えると、親の批判的な態度が子どもに与える影響は、子どもの年齢が幼ければ幼いほど大きくなります。
それは、自己中心的な思い込みの影響を、成長してからも大きく受ける可能性があるということです。

大人の私たちは、誰かが自分を批判してきたとしても、客観的に物事を考えることができ、相手の主張の矛盾を指摘することもできます。すべてに対して自分が悪いと結論を出すことはないでしょう。
しかし、成長したアダルトチルドレンは、子ども時代と同じように、自分に対して好ましくない他者からの評価を感じたり、周囲に対して悪い事態が起こると、「その原因は自分にあるのではないか」「自分が悪いからではないか」と、すべてを自分の責任だと推測し、自分を批判して責め続ける傾向があるのです。
また、どれだけ頑張って成果を上げたとしても、それを認めず、できていなかった点だけをクローズアップし、「できない自分」というレッテルを貼り、自分を責め続けます。
成長した大人が、なぜこのような根拠のない判断を行い、自己批判をし続けなければならないのでしょうか。
これは、すべて「思い込み」が原因です。
それも、子どもの頃から延々と続いている思い込みなのです。

子どもの頃の自己中心的な「自分が悪いから親に愛されない」という思いが、「自分は悪い」「自分はできない人間」といった「中核的な信念」を形成してしまい、何事においても「自分が悪いのでは」、「自分の責任では」「できない自分はもっと努力しなければならない」と勝手に思い込み続けてしまうのです。
これらはすべて、子ども時代の「自分が悪いから親に愛されない」という、誤った思い込みを継続していることに他なりません。これでは、成長の過程においても自分に対する自信や自己信頼感が獲得されず、自己肯定感も低いまま、当然「生きづらさ」を抱えてしまうことになります。

B.アダルトチルドレンの他者批判について
1.親からの批判と他者批判の同一性
私たちは親が行っていることを見て学び育ちます。
したがって、親が他者に対して批判的であれば、当然私たちも他者に対して批判的な傾向になるでしょう。
また、親から批判され続けて成長した大人は、人に対して批判をすることが当たり前となり、批判すること自体に何の疑問も持たなくなってしまうことがあります。
人との接し方において、その方法しか知らないという状況に陥るのです。

2.自分の基準を他者に当てはめ、他者を批判する傾向
私たちは何をするにしても、自分の中に「自己基準」を持っています。
例えば、「電車の中ではマナーを守るべき」、「仕事は余裕を持って取り組むべき」、「勤務開始の20分前には席に着いているべき」ね「食事は家族皆でとるべき」……。
人は多くの自己基準、つまり「こうあるべき」という内的基準を持って日々生活を行い、その基準に照らして自分を律しているはずです。
さて、この基準が自分に向かっているうちは、自分だけの問題として処理できますが、人に向かうと「他者批判」が起こるのです。

なぜなら、人はとかく自分の基準を他者の行動にも当てはめがちだからです。
そして、自分の基準に反する行動を他者が行うと受け入れ難く、反感や批判的な感情を抱いてしまうのです。
これが他者批判へと結びつきます。
また、アダルトチルドレンは「100か0か」の中間のない白黒思考の傾向が強く、自己基準についても「他者は守るべきだ」と、自己基準からくる「べき論」を振りかざす傾向があります。
しかし、他者批判の基準はそもそも、自分に対する基準なのです。
果たして、自己基準で他者を評価・判断することは妥当なことでしょうか。
また、その自己基準が厳しければ厳しいほど、あなたの厳しい自己基準を満たす人はどれだけいるでしょうか。

3.自己批判と他者批判、そして自己基準を根拠にした他者批判
他者批判をするということは、「自分はOK、他者はNO」というサインを出しているのと同じです。
もし、他者批判をしている人が自己肯定感が低いとすると、その自己肯定感を高めるために、無意識的に他者批判を行い、優越への欲求を満たしていることが考えられます。
そもそもアダルトチルドレンは自己肯定感が低い傾向があり、その反動から優越への欲求が高いのかもしれません。
このように、様々な理由、あるいは複合的な要因から、アダルトチルドレンは厳しい他者批判の態度を取る傾向がありますが、ここに共通していることは、自己中心性と思いやりの欠如です。
すべてを自分の基準で物事を見るのは自己中心的であり、客観的な根拠に欠けます。また、自分が子ども時代に親から優しく接してもらった経験が少ないため、人に対する思いやりや優しさが育まれにくい、という側面もあるのです。

C.「生きづらさ」を乗り越えるために
ここまで見てきたように、自己批判の傾向が強い人、そして他者批判の傾向が強い人。
これらは、親の厳しい養育の問題から生じており、根本には「自分はダメだ」、「自分はできない」という思い込みがあります。これが自己批判の心です。
そして、この自己批判心を持ったまま成長すると、他者に対して寛容になれず、強い他者批判心を抱いてしまいます。
また、人は誰もが何らかの自己基準を持ち、日々生活しています。
自己基準が、それを抱いている人の中だけで完結すれば問題はないのですが、アダルトチルドレンは自分に対する自己批判の強さゆえに、他者批判も強く、かつ、自分に厳しい自己基準を持っている傾向があります。
アダルトチルドレンの強い自己基準は、それに反する人に対して、強い他者批判心と絡み合い、さらに他者批判心を強化していくのです。
アダルトチルドレンが抱える、「自分はダメだ」、「自分には価値がない」という思い込み。
ダメな自分に対する強い自己批判。
そして、それに伴う他者批判。

これらの「生きづらさ」は、カウンセリングを通して自身の過去を振り返ることで、より生きやすい人生に変えていけるのではないでしょうか。
- 自分に価値がないという思い込みが生じた原因を理解する。
- 自分には価値があるという認識を得る。
- 自己基準に対する寛容性の問題に向き合う。
もし、これらのテーマにご興味をお持ちになったり、ご自身の心の問題について考えてみたいと思われたりしたら、どうぞお気軽にご相談ください。