自己主張と他者理解:バランスの重要性
2020年から始まった教育改革「アクティブ・ラーニング」では、生徒の主体性や自己主張が重視されています。
心理カウンセラーとして、自己肯定や自己承認を育むうえで、こうした姿勢はとても大切だと考えています。
しかし、行き過ぎた自己主張が日常化することには、懸念も感じています。

行き過ぎた自己主張は他者理解の欠落をもたらす
Index
1.「空気を読む文化」と「自己主張」のジレンマ
2.自己主張の土台となる「論理性と思考力」
3.自己主張は「他者理解」の場である
4.自己主張と他者理解:バランスの重要性のまとめ
1.「空気を読む文化」と「自己主張」のジレンマ
私たち日本人は、古くから「空気を読む」ことを美徳としてきました。
言われなくても察し、周囲に合わせる同調性が、集団の和を保つうえで重要だとされてきたのです。
そうした文化の中で、急に「自己主張をせよ」と求められても、簡単には馴染めないかもしれません。なぜなら、同調性を重んじるあまり、行き過ぎた自己主張は「協調性がない」と見なされ、周囲から浮いてしまう可能性があるからです。
だからこそ、私たちは「自己主張」の本質を深く考える必要があります。
単にリーダーシップのある人間を育てるだけでなく、私たちの文化に根ざした「自己主張」のあり方を模索することが大切ではないでしょうか。

2.自己主張の土台となる「論理性と思考力」
自己主張とは、単に自分の意見を述べることではありません。その背後には、考え抜かれた思考と、確固たる論理が必要です。
思いつきや短絡的な主張を繰り返してしまうと、周囲からの信頼を失いかねません。何かを主張する前に、一度立ち止まって「本当にこれでいいのか?」「極端な意見になっていないか?」と自問自答することが大切です。
これは、私たちが日頃から発信している文章でも同じです。
私も、この記事を投稿する前に何度も読み返し、客観的に矛盾がないか、一方的になりすぎていないかを確認しています。こうした「自己チェック」が、より建設的な自己主張に繋がるのです。
3. 自己主張は「他者理解」の場である
自己主張で最も大切なことは、自分の意見を主張するだけでなく、他者の意見にも耳を傾けることです。
自分の意見に固執し、他者の意見を聞き入れようとしない姿勢は、相手を軽んじていると受け取られかねません。
政治家の討論会のように、相手の話を遮って自分の意見ばかりを主張する姿は、残念ながら良い手本とは言えません。
他者から異なる意見が出たとき、それは自分の主張が否定されたわけではありません。

「違い」は「間違い」ではないのです。
他者の意見にも冷静に耳を傾け、受け入れるべき部分は受け入れる。
そうすることで、自分の主張がさらに深まり、再構築されていきます。
つまり、自己主張とは、他者との対話を通じて自己を成長させる場でもあるのです。
相手を傷つける言葉を使わず、相手の意見を尊重しながら自分の考えを伝える姿勢は、「アサーション」というコミュニケーション能力を育むことにも繋がります。

4.自己主張と他者理解:バランスの重要性のまとめ
自己主張の本質は、自分の意見を通すことだけではありません。
- 主体的な思考と論理力を培い、自問自答を繰り返すこと
- 他者の意見にも耳を傾け、受容する心を持つこと
この二つが揃って初めて、建設的で意味のある自己主張となります。
完璧な意見や論理は存在しません。
他者の考えを100%理解することも難しいでしょう。
しかし、自己主張という場を通して、他者を理解し、受け入れる心を育むことは、社会生活を送る上で何よりも大切なことなのです。
