初回無料の心理カウンセリングが減少している背景と理由
「初回無料」という言葉は、多くのサービスで顧客獲得のための魅力的なフックとして用いられます。
しかし、近年、開業心理カウンセラーによる初回無料カウンセリングの提供が減少している傾向にあることをご存知でしょうか?
かつては約10年ほど前まで、公的機関やNPO、ボランティア団体を除いても、開業カウンセラーが初回のみ無料で相談に応じ、継続を希望する場合に有料とするケースは少なくありませんでした。
では、なぜ、このような変化が起きているのでしょうか。
その背景には、心理カウンセリング業界の構造変化と、相談者・カウンセラー双方の期待値のギャップが大きく影響しています。

初回無料カウンセリングの減少と社会構造の変化
Index
1.開業カウンセラーにとっての「初回無料」の意義の変化
2.相談者とカウンセラーの間に生じる期待値のギャップ
3.あなたにとって最適なカウンセラーを選ぶことが重要
1.開業カウンセラーにとっての「初回無料」の意義の変化
ここ数年で、独立開業する心理カウンセラーの数は飛躍的に増加しました。
これは、心理支援のニーズの高まりを反映している一方で、カウンセラー間の競争激化を意味します。
かつて、初回無料カウンセリングの目的は、相談者との接点を作り、その後の有料セッションへの継続を促すことにありました。
自営業であるカウンセラーにとって、これはごく自然な集客戦略です。
しかし、カウンセラーの数が増えるにつれて、相談者の選択肢は格段に広がりました。
その結果、特定のカウンセラーが初回無料を提供しても、実際に継続して選ばれる確率は相対的に低下してしまったのです。
集客効果が見込めないだけでなく、無料で提供する労力に見合う成果が得られないとなれば、多くのカウンセラーにとって初回無料カウンセリングを実施する意味が薄れてしまうのは当然の帰結と言えるでしょう。

2.相談者とカウンセラーの間に生じる期待値のギャップ
相談者が初回無料カウンセリングを希望する主な理由としては、以下のような点が挙げられます。
a)経済的負担の軽減: まずは費用をかけずに話を聞いてもらいたい。
b)相性の確認: 継続を前提に、カウンセラーとの相性や雰囲気を確認したい。
これらは、相談者にとって非常に合理的な理由です。
特に「カウンセリングは継続して受けなければ効果がない」という認識から、初回で費用を抑えたいと考える方も少なくありません。
もちろん、抱えている悩みの深刻度によっては、継続的なカウンセリングが不可欠な場合もあります。

しかし、ここに開業カウンセラーとの間で期待値のギャップが生じることがあります。
カウンセラー側の狙いが「継続的な有料セッションへの誘導」にあるため、初回無料カウンセリングでは、具体的な問題解決に向けたアドバイスや深い掘り下げが行われにくい傾向があるのです。
相談者としては、「せっかく話したのに、結局何も解決策が見えないまま終わってしまった」、「具体的なアドバイスは次回有料になる」と感じ、時間の無駄やもどかしさを感じることがあります。
たとえ問題が完全に解決しなくても、初回である程度の方向性やヒントを得たいという期待は、多くの方が抱くものです。
しかし、無料枠ではその期待に応えきれないことが少なくありません。
私たち同業者から見ても、初回無料カウンセリングで傾聴に重きを置き、問題解決へのアドバイスを次回の有料セッションに持ち越す手法は、ある種のビジネス戦略として理解できます。
しかし、近年は先に述べた社会構造(市場)の変化により、この戦略が必ずしも有効ではなくなってきているのが現状です。

3.あなたにとって最適なカウンセラーを選ぶことが重要
初回無料カウンセリングが減少している背景には、このように業界の健全な発展(カウンセラー側の供給過剰)と、相談者・カウンセラー双方にとってより良い関係性を築こうとする動きがあると言えます。
重要なのは、「初回無料」の有無だけでカウンセリングを選ぶのではなく、カウンセラーの専門性、提供されるサービス内容、そして何よりもご自身との相性をじっくりと見極めることなのです。
「初回無料」のカウンセリングを受けて、もやもやした気持ちで帰るのであれば、最初から有料のカウンセリングを選び、その際、カウンセラーのHP等をじっくりと読み、自分にとって最適なカウンセラーを探す方が賢明であると思います。
